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個人としての自分にはどれくらいの価値があるのだろうか。企業から得る賃金、フリーランスとして受け取る報酬。働き方改革が進み、様々な働き方が登場する中、その決まり方に疑問を持つ人も多いだろう。
その疑問に一つの答えを出すのが、「評価経済」の考え方かもしれない。ユーザーがサービスや店舗、個人に対して与える評価が、そのまま価値となる。WebやSNSが発達し、ユーザーの評価を個人の価値として直接反映させることが可能になったのだ。その価値は、金銭に変換することもできる。
ユーザーからの評価が自分の価値に直接変換されることは、労働者側のモチベーションを上げる。結果的にサービスの向上も達成するという、新しい働き方のスタイルを確立した塾がある。
塾のUber、「評価アプリケーション」を導入した個別指導塾が登場
株式会社ひらく が運営する個別指導塾「Pletz」では、「評価アプリケーション」を導入している。Webアプリケーション上で、生徒の保護者が担当の講師を評価する仕組みだ。
授業レポートや生徒の反応をもとに、保護者は、担当講師を5段階で評価する。保護者の安心感を高め、サービスの向上につながる。
最も注目したいのは、アルバイト講師の「報酬設定制度」だ。Pletzでは、保護者からの評価をもとに、自らの「授業単価」を自分で設定することができる。今までの塾では、決まった時給で働いていた。Pletzでは給料を評価によって自由に伸ばすことができるのだ。
自らの単価を設定できる仕組みは、講師のモチベーションアップに繋がる。働き手不足にも関わらず、開校時から多数の講師応募があったという。評価経済が、働き手のモチベーションを上げ、人材不足を解消する例といえるだろう。
「Pletz」の運営会社の代表をつとめるのは、上智大の大学生でもある栗山拓巳氏だ。個別指導塾に勤務していた時に、個別指導塾の構造的な問題を目の当たりにし、解決に取り組もうと決意したという。現状の個別指導塾業界では、杜撰な生徒対応、講師への待遇の悪さ、離職率の高さ、それに伴う授業の質の低下が、解決すべき問題として存在する。
ITを駆使して評価経済社会を実現し、社会の問題を解決しようというビジネスモデルは、他にも多く登場している。
評価経済社会の新たなビジネスモデル
ITを駆使して評価経済社会を実現したサービスに、「VALU」がある。VALUは、2017年5月31日にβ版がリリースされた。株式会社VALUと、株式会社パーティーが運営する。
VALUではユーザーの審査を行い、個人の市場価値を「オンライン上の影響力」から換算する。ユーザーは仮想通貨を通して模擬株式「VA」を発行し、他のユーザーに購入してもらうことで資金の調達ができる。
近年、フリーランスの人材が増加しているが、信頼度を判断する評価軸が不足している。家を借りるとき、銀行から融資をうけるとき、フリーランスはその困難に直面する。VALUのような、スキルを正しく評価し信頼に変換する仕組みは、今の時代に必要な役割といえるかもしれない。
VALUは、ビットコインという世界共通の通貨を用いて、インターネットというフラットな場で運用される。個人が世界中から金銭的な支援を受けることが可能だ。いかに独自の価値を提供していくかを考える個人が、力を最大化するためのプラットフォームの1つといえるだろう。現状ではアイドルやYouTuberへの投げ銭的役割や、経営者が支援を受ける代わりに、経営の相談に乗るなどの事例が生まれている。
また「ファン」をキーワードとした、ビジネスの展開もある。ファンとは、「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を信じている人」だ。コアなファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく。そういった、マーケティング戦略は「ファンベース」と呼ばれる。
ファンを重視するサービスとして、オリジナル新作マンガを配信するアプリ「GANMA!(ガンマ)」がある。このアプリのユーザーレビューは非常に高い点数(5点満点中、Apple・Googleともに平均4.7点)を維持している。運用担当者が、アプリに寄せられたユーザーレビューに対し、一つひとつに返信をし、対応を行っていることがその秘訣だ。ファンを大切にする姿勢により、一度は厳しいコメントをしたユーザーたちも、「評価を上げる」という行動でお返しをする。
2015年にスイスで誕生した「guruu(グルー)」では、企業が顧客サービスと販売サポートを「ファン」に外部委託することができる。審査を受けたユーザーが、新規顧客からの問い合わせチャットに対応を行う。ファンの熱量や知見を活用するビジネスモデルだ。
2017年6月に日本でリリースされた「Saleshub」では、企業が自社の「営業担当」を外部委託する。ユーザーは好きな企業の「営業担当」となって、販売促進を支援することができるのだ。「好きな企業」を知り尽くしたファンであれば、その課題やニーズを十分に満たした商品・サービスを提案することができると期待される。
「評価経済」が社会の諸問題を解決
Pletzの評価システムでは、ユーザーの評価とアルバイト講師の給料をつなぎ、モチベーションを上げる。そのことで、人材不足の解消を実現した。
働き方改革が進み、フリーランスが増加している現在。フリーランスが直面する信用や資金調達の問題を、VALUのような個人への評価を価値へと変換するサービスで解決しようとする試みもある。
自社を高く評価するファンを重視する戦略により、人口減少・情報過多の時代に中長期的な成長を目指す企業も増えてきた。
これからは「評価経済」が、社会の様々な問題を解決するキーワードとなっていくのかもしれない。