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アフリカのテクノロジー・スタートアップの資金調達額が急速に増加している。Disrupt Africaのレポートによると、2016年の資金調達額は総額1億2,900万ドル(約135億円)で前年比16.8%増だったが、2017年には1億9,500万ドルと前年比51%増に拡大した。資金調達を実施したスタートアップの数も2016年の146社から2017年には159社に増加。国別の調達額は南アフリカ、ナイジェリア、ケニアがトップ3を占めているという。
アフリカは長年紛争や貧困に悩まされてきた地域だが、近年ジム・ロジャーズ氏やジャック・マー氏など著名な投資家・起業家が注目する次の成長フロンティアとして発展し始めている。
そのなかでも、通信インフラの整備やモバイルユーザーの増加を背景に、デジタル産業への人材・資金流入が顕著といわれており、人工知能やブロックチェーンなど先端テクノロジーを活用したプロダクト/サービスを開発するスタートアップが増えているという。今回は前編・後編の2回にわたり、アフリカで注目されているハイテクスタートアップを紹介していきたい。前編では資金調達の割合がもっとも多いといわれる南アフリカにフォーカスする。
競合を超える予測成功率、ショッピング・アシスタントAIのXineoh
2017年6月に米国とカナダの投資家らから200万ドルを調達したXineohは、オンラインユーザーが何を購入したいのか予測し、レコメンドするAIを開発するスタートアップ(2014年設立)だ。
Xineohが開発するレコメンドAIの予測成功率は14.5%と競合らの3〜8%を上回るとして注目を集めている。このほど動画購入サービスVideoLlamaのレコメンドエンジンとして採用された。
VideoLlamaは、ユーザーが観たい映画やテレビ番組をNetflixやHuluなど複数の動画配信サイトから最安値のオファーを探し、レコメンドしてくれるサービスだ。
Xineohはこのほかにも不動産分野でレコメンドAIを提供していく計画もあるという。不動産のポータルサイトには数多くの不動産情報が掲載されているが、ユーザーがすべてをチェックするのは難しい。ここに予測成功率の高いレコメンドAIの需要があると睨んでいる。
コーディングなしでもAIアシスタントを作成、Clevva
2011年に設立されたClevvaは、企業向けのAIアドバイザー開発プラットフォームを提供するスタートアップ。これまでにマイクロソフト、IBM、ガートナーなどが主催するアワードで表彰されているほか、すでにアクセンチュアなど大手企業がサービスを導入しており、注目度は非常に高いAIスタートアップだ。
Clevvaのプラットフォームでは、ユーザー企業はAIを使った目的別のバーチャルアドバイザーを構築することが可能だ。たとえばコールセンター向けでは、顧客からの質問に適切に回答できるバーチャルアドバイザーをつくることで、カスタマーサポート担当はそのアドバイザーの助けを得て、適切かつすばやく応答することができる。バーチャルアドバイザーは、コーディングなしで機能ごとのロジックを組み込み作成できる点が評価を受けているようだ。
スマート製造を促進するDataProphet
2014年に設立されたDataProphetも南アフリカの注目AI企業の1社だ。このほどベンチャーキャピタルKnife Capitalから数百万ドルを調達したとして地元メディアが報じている。
メルセデス・ベンツ社が主催した「イノベーション・チャンレンジ」での優勝経験を持つ同社は、マシンビジョンと機械学習を応用した製造業向けソリューションを開発している。製造の効率化と不良品発生率の最小化を実現するAIソリューションとして国内外で注目を集めている。特に南アフリカ国内では1980年代、GDPの25%相当を製造業が担っていたが、現在13%まで落ち込み、国内の雇用に影響を与えていることから、AI活用による製造業のスマート化への注目度は高く、同社への期待も大きいようだ。
このほかにも南アフリカでは、グーグルのLaucnhpad アクセラレーターに選出されたフィンテックスタートアップJUMOや、世界中で利用されているモバイルセキュリティーソリューションを開発するEntersektなど、投資家らの注目を集めるスタートアップが続々生まれている。また南アフリカだけでなく、ナイジェリア、ケニア、エジプトなどでも有望なアフリカンスタートアップが誕生しているが、それらは後編で紹介したい。