2月初旬、恵方巻きの大量廃棄が日本で話題になった。「恵方巻きなんて、小さい頃は聞いたことなかったし、策略に踊らされているようで嫌だなぁ」という感覚があり食べたことがない。

筆者は横浜生まれ、横浜育ち。かつ、ミレニアル世代では比較的上の年齢だからというのもある。だが、大量廃棄のニュースを知って、もう絶対食べない……と心に誓った。

日本では食品ロスが年間600万トン以上発生している。これは、日本国民全員が、毎日お茶碗1杯分を捨てている計算になる。国連食糧農業機関によれば、世界では年間13億トン近くもの食品が廃棄されている。これは世界の飢餓人口10億人を十分に養えるほどの量に当たる。

世界で深刻化するフードロスの問題に対し、フードデリバリーサービスのスタートアップDoorDashが新たな取り組みを始めた。

フードロスと貧困問題の解消に挑む、フードデリバリーサービスDoorDash

社会課題の解決に挑むDoorDashは、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くスタートアップ。提携レストランから注文したい食事を選ぶと、レストランの場所と届け先の情報から、適切な提携している宅配ドライバーをマッチングするサービスだ。

アメリカの主要な都市ではGrubHubに次いで、2番目にユーザーが多いのがDoorDashだ。ちなみに、UberEatsは市場シェア第3位となっている。

DoorDashは日本でサービス展開をしていないため、国内での知名度は高くない。だが、2017年12月にソフトバンクグループが約3億ドルを投資する計画を明らかにしたことで、日本でも徐々に注目度が上がっている。

DoorDashが、2018年1月にスタートさせた「Project DASH (DoorDash Acts for Sustainability and Hunger)」は、食糧支援に取り組むFeeding Americaが提供するサービス MealConnect と連携することで、自社が構築した流通網を活かしながら、レストランの余剰食料を近隣のフードバンクやNPOに届けるプログラムだ。

レストランの余剰食品をフードバンクやNPOに届けるProject DASHの仕組み

DoorDashが始めたProject DASHはどのような仕組みなのだろうか。

DoorDashが今回提携したMealConnect はレストランに限らず、食品を扱う企業が登録でき、余剰食品と近隣のフードバンクやNPOをマッチングするサービスだ。DoorDashはこのマッチングに基づき、宅配ドライバーをマッチングさせる。

これまでは、食品を寄付するために届ける人や時間を捻出できないことが、フードロス問題に取り組みたいレストランの障壁になっていた。それは余剰食品を受け取りたい支援団体側も同様だ。レストランにフードロスがあることがわかっていても、それを運搬することがハードルになっていた。いわゆるラストワンマイルの問題だ。だが、既存のDoorDashの流通網を活用することで、フードロス問題と貧困問題の二つを同時に解決しようともくろむ。

ただ、通常のデリバリーでは、ランチセット程度の食事を運ぶことが想定されており、自転車やバイクのドライバーが宅配をしている。そのため、何十キロにもなるような大量の余剰食料を運ぶことはできない。

数十キロの食料を運ぶケースでは、DoorDashが直接レストランからユーザーに車を使って大人数ケータリングなどをデリバリーする際に使うDoorDash Driveが輸送を担当する。

既存の仕組みを活用し、レバレッジの効いた社会貢献活動

DoorDashは、2018年1月に新しいミッションとして “Delivering good by connecting people and possibility.” を掲げた。フードロスの解決に向けて、単発ではなく、継続してさまざまなプログラムを実践していくことがウェブサイトにも明記されている。

ローカルビジネスをつなげるだけでなく、サステナブルな社会を目指す姿勢が伺える。今回のProject DASHは同サービスのミッションを端的に表すものとしてわかりやすい。

Project DASHでは、既存のサービスの仕組みをそのまま活用し、フードロス問題と貧困問題に取り組む。最小の労力で、二つの問題を解決するレバレッジの効いた社会貢献だ。

DoorDashはこの取り組みにより、単なるデリバリーサービスのスタートアップという枠を超えて、地域社会の問題解決に取り組む企業というリブランディングを行った。同じサービスであれば、より社会貢献度の高いものを選ぶ傾向のあるミレニアル世代からも大きな支持を集めそうだ。

img:Toa Heftiba, DoorDash, Feeding America