北欧&バルト三国の有望スタートアップはここから生まれるーーピッチイベント「Fifty Founders Battle」【連載:電子国家エストニア】

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スカイプだけでなく、海外送金サービス「TransferWise(トランスファーワイズ)」やデリバリーロボット開発の「Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)」など、世界中から注目を集めるテクノロジー企業を多く輩出する「エストニア」。

ITやロボティクスに関わる教育の普及、起業エコシステムの整備、政府支援など、スタートアップが盛り上がるための強固な基盤を構築している。

このエストニアのスタートアップシーンは、隣国であるラトビアや北欧諸国とも相互に影響を与え合い、面での広がりと盛り上がりを見せている。エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国に加え、フィンランドやノルウェーなどの北欧諸国、フランスやドイツなどの西ヨーロッパ諸国、これらのスタートアップコミュニティーが互いに刺激を与え、成長している印象だ。

2018年2月にはラトビア・リガで、これらの地域の注目スタートアップが一堂に会するピッチイベント「Fifty Founders Battle」が開催される。今回はこのイベントに集まってくるスタートアップを紹介しながら、域内のスタートアップトレンドを見ていきたい。

バルト三国、北欧から有望スタートアップが集結するピッチイベント

Fifty Founders Battleを主催するのはラトビア発のスタートアップコミュニティー「TechChill」だ。バルト三国と北欧を中心としたスタートアップコミュニティーの拡大を目指し、2012年に活動を開始した。特に、フィンテック、ブロックチェーン、VR・AR、人工知能(AI)など先端分野に関わる企業・人材・投資家のネットワーク構築に大きな役割を果たしている。

前回のFifty Founders Battleでは、インフォグラム作成プラットフォームを提供するラトビア発の「Infogr.am」やIoTスプレーアートデバイスを開発するエストニア発の「SprayPrinter」などユニークなスタートアップが勝者に選ばれている。

Infogr.amが提供するのは、ウェブ上で簡単にインフォグラムを作成できるプラットフォーム。Linkedin、MSN、Skyscanner、POLITICOなど大手企業を含め、複雑なデータを可視化して分かりやすく伝える必要があるクライアントに重宝されている。オンラインプレゼン・プラットフォーム「Prezi」の子会社でもある。


インフォグラム作成プラットフォーム「Infogr.am」(Infogr.amウェブサイトより)

Sprayprinterは、スマートフォンと連動し、さまざまなデザインをスプレーアートに仕上げることのできるIoTデバイスを提供している。デバイスをスプレー缶に取り付け、スマホでデザインを選ぶと、そのデザインの通りにスプレーを吹き付けてくれるのだ。デザイナーコミュニティーもあり、デザイナーによるスプレーアート用デザインを無料またが数ドルで購入することができる。

今年もユニークなスタートアップがラトビア・リガに続々集結

2018年2月開催のFifty Founders Battleでもこのようなユニークなスタートアップが登場する。

「Autolevi」は、自動車版Airbnbとも呼べるP2Pの自動車レンタルサービスを提供するエストニアのスタートアップだ。本国エストニアだけでなく、ラトビア、フィンランドでも展開している。自動車の所有者はプラットフォームに自動車を登録する。自動車を借りたいユーザーは用途、日時、場所、レンタル価格から最適な自動車を選ぶことができる。現在、1万人以上のユーザーが登録されている。自動車の所有者は、貸し出すことで1カ月あたり平均75ユーロ(約1万円)の収入を得ているという。

レクサスIS250のレンタル料は、1時間16ユーロ、1日65ユーロ、1週間325ユーロ、1カ月975ユーロとなっている。キャンピングカーも登録されており、レンタルすることができる(レンタル料1日130ユーロ)。

Autoleviによると、自動車の所有者が1日あたり運転する時間は約2時間で、残りの22時間は車庫に眠っていることがほとんど。1カ月では27日分に相当する時間車庫に眠っていることになる。限られたリソースをフル活用して利益を生み出そうというエストニアらしいサービスといえる。


自動車版Airbnb「Autolevi」(Autoleviウェブサイトより)

ラトビア発の「AirBoard」は、ドローンセグウェイとも呼べる空飛ぶ移動マシンを開発するスタートアップ。まだコンセプトイメージしか見ることができないが、クアッドコプターの原理を利用した移動マシンのようだ。ウェブサイトによると、最高時速は45キロメートル、高度1.5〜2メートル、飛行距離10キロ、最大積載量110キログラムというスペック。レスキュー、探索などでの利用が想定されている。シリコンバレーで実施されたアクセラレータープログラムに参加し、その際ホットメール、スカイプ、テスラなどへの投資経験を持つティム・ドレイパー氏のメンタリングを受けている。今回のピッチイベントで投資家たちからの注目を集めるのは間違いないだろう。


ドローンセグウェイ「AirBoard」(AirBoardウェブサイトより)

同じくラトビア発のKLEANは掃除マーケットプレイスを提供するスタートアップだ。家の掃除、オフィスの掃除などを1時間先からスマホアプリで予約できる。費用は安く、家の掃除であれば1時間15ユーロ(約2,000円)ほど。掃除をするひとはKLEANが事前に面接し、さらには保険の適用もあることから安心して使えそうなサービスだ。


掃除マーケットプレイス「KLEAN」(KLEANウェブサイトより)

「HACKMOTION」は、スマートスーツやスマートデバイスを活用して、ゴルフやスノーボードなどスポーツのフォームを改善するウェアラブルソリューションを提供するスタートアップ。こちらもラトビア発だ。スマートスーツを着用することで、自身のフォームとお手本となるフォームの違いを比較分析して、改善点を教えてくれる。2016年に設立されたばかりだが、2017年のSlushトップ100スタートアップの1社に選ばれたほか、エストニアやフィンランドのアクセラレータープログラムに参加するなど注目度の高い企業だ。


HACKMOTIONゴルフ用ウェアラブルデバイス(HACKMOTIONウェブサイトより)

Fifty Founders Battleにはこのほかにもさまざまなユニークなスタートアップが集まってくる。バルト三国や北欧だけでなく、欧州ではフランスなどでもスタートアップシーンが盛り上がっている。面で広がる欧州のスタートアップ動向が今後どのように発展していくのか注目したいところだ。

img; Techchill , Infogr.am , Autolevi , AirBoard , KLEAN , HACKMOTION

【連載】電子国家エストニア

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