2020年開催予定、空飛ぶ自動車レース

エアバス、Ehang、Uber、Lilliumなど大企業からスタートアップまで、さまざま企業が参入し、開発にしのぎを削る「空飛ぶ自動車」。2020年以降を目処に実用化を目指すプレーヤーが多い。これらのほとんどが都市交通インフラの一部として、タクシーのように利用される見込みだ。

一方、空飛ぶ自動車をレースだけのために開発しているユニークな企業が存在する。オーストラリアのスタートアップ「Alauda Racing」だ。

同社が開発しているのは1人乗りのレース用空飛ぶ自動車「Airspeeder MarkⅠ」。クアッドコプターの原理を応用したマシンで、想定される最高速度は200キロメートル。操縦には飛行機と同様のジョイスティック、そしてペダルを利用するという。


Alauda Racingチームが開発する「Airspeeder MarkⅠ」(Alauda Racingウェブサイトより)

同社創業者のマッド・ピアソン氏は、これまでにないまったく新しいスポーツを創り出すことを目標に掲げ、2020年までにF1グランプリスタイルの空飛ぶ自動車レースイベントを開催する考えを明らかにしている。

レースイベントまでに、以下のスケジュールでマシン開発が行われるという。2018年半ばにオーストラリアの砂漠地帯で第1回目のテストレースを実施予定。2機の無人Airspeederを使い、レースの様子をライブストリーミングするという。その後2018年後半から2019年にかけて、さらなる試験を行う計画だ。

まだ十分な情報が公開されていないため、どのようなレースになるのかは分からないが、万が一空中でクラッシュした場合の対策など、人命に関わる安全策が徹底されるのは間違いないはずである。

テクノロジーとの融合、進化するスポーツ/レースの世界

一方、ロシアでも同様にスポーツ/レースを意識した、空飛ぶバイクが開発されている。Hoversurf社の「Scorpion3」だ。バイク型の空飛ぶ乗り物であるが、Airspeederと同じくクアッドコプターの原理を応用したマシンである。

同社のウェブサイトには、Scorpion3をエクストリームスポーツ・マシンとして開発したことが明記されている。最高速度は70キロメートル、飛行時間は20分ほど。価格は5万9900ドル(約600万円)とすでに購入はできるようだが、納車まで6〜18カ月待たなくてはならない。


「Scorpion3」(Hoversurf社ウェブサイトより)

未来のモータースポーツを考える際、プレーヤーは人間だけとは限らない。ロボットとのレースもあり得るかもしれない。囲碁の世界で人工知能アルファゴが人間の棋士と対戦したことを考えると、モータースポーツでも十分起こり得ることだろう。

ヤマハ発動機のMOTOBOTプロジェクトはそんな未来を予感させてくれる。このプロジェクトでは、バイクに乗り時速200キロでレースコースを自律走行するロボットが開発された。プロジェクト内では、二輪ロードレース「MotoGP」のトップライダー、バレンティーノ・ロッシ選手とも対戦し、1周3マイルのコースで約30秒差にまで迫ったという。


ヤマハ発動機のMOTOBOTプロジェクト

MOTOBOTプロジェクトで特筆すべきは、バイク自体の改造はなされず、ロボットが自律的にコースを読み、ステアリング、アクセル、ブレーキ、ペダルシフトを操作した点であろう。レース環境において人間のように振る舞うロボットが登場したということだ。バイク操縦が可能なのであれば、自動車やドローンの操縦も時間を要しないはずである。

今後はロボットと対戦するだけでなく、ロボットとチームを組むといったことも考えられるのではないだろうか。もしかすると、上記で紹介した空飛ぶ自動車レースが開催される頃までには、このようなことが実現しているかもしれない。

img; Alauda Racing , Hoversurf