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デジタルコマースをビジネスとしている人にとって、“グローバル化”という課題はつきものだろう。日本だけでは限られてしまうマーケットも、世界に目を向ければその可能性は無限大だ。
しかし、グローバル化はそうそう簡単なものではないのは想像に難くない。まず、そこには言語の問題が大きなハードルとして立ちはだかるからだ。
この問題を解決すべく、AI技術をベースにしたデジタルマーケティングサービスの開発・提供を行うシルバーエッグ・テクノロジー株式会社と、WEBサイト多言語化開発ツール「WOVN.io(ウォーブンドットアイオー)」を運営する株式会社ミニマル・テクノロジーズは業務提携した。
両社は、越境EC・インバウンドサービス向けに多言語レコメンドを実現するソリューションの提供を開始する。
海外ユーザーの傾向分析やニーズ把握には多くの難問が
現在、ECを中心に国内の多くのデジタルビジネス領域で、国際的な取引が加速している。
経済産業省の調査では、外国人旅行客が国内で購入した商品のリピート購入が越境ECの需要につながるという関係性が指摘されており、越境ECの世界市場規模は2020年までに対前年20%以上の成長が見込まれている『経済産業省:平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)』。
物販以外でも、海外からの不動産投資や滞在型賃貸物件の増加、グローバル人材の雇用の増加など、日本国外のユーザーに対応したデジタルビジネスの構築が求められている。
一方、海外ユーザーの傾向分析やニーズ把握には多くの工数と投資が求められ、商品のプロモーションやクロスセル・アップセル施策の実施は容易ではない。
このような課題を解決し、国内事業者によるデジタルビジネスの国際対応を支援するため、両社はAIによるリアルタイム・レコメンドサービス「アイジェント・レコメンダー」と、多言語化サービス「WOVN.io」を組み合わせた多言語レコメンドソリューションを展開する。
大規模システム開発が不要。イニシャルコストも抑えられる
このソリューションは、既存のECサイトを「WOVN.io」によって海外ユーザーの使う言語に変換し、その中で「アイジェント・レコメンダー」のAIがユーザーの購買・サイト閲覧などの行動をリアルタイムで分析し、高精度のレコメンドを表示させるもの。
越境ECを構築する際に必要な現地の市場調査やコンテンツ翻訳の工数とコストを極小化し、海外ユーザー一人ひとりに対して、興味に沿ってパーソナライズされたレコメンドをリアルタイムに提示できるようになる。
両社のサービスは、いずれも対象となるWEBサイトにJavaScriptなどのコードを挿入するだけで導入できるため、大規模なシステム開発が不要で、イニシャルコストを抑えてサービスを開始できるというメリットもある。
両社のサービスを組み合わせた多言語レコメンド機能は、すでに株式会社SHIBUYA109エンタテイメントに導入され、評価されているという。
複数のレコメンデーション・アルゴリズムを搭載したリアルタイムAIマーケティング・プラットフォーム。
独自開発のAIをベースにしたアルゴリズムにより、サイトのアクセスや購買状況、各ユーザーの動線を「リアルタイム」に把握・分析し、一人一人の嗜好に合ったおすすめの商品を、瞬時に表示することができる。
【WOVN.io】
最短5分でWEBサイトを30カ国語に対応できるサービス。
既存のWEBサイトに後付けする形で、多言語ページの公開が可能です。従来発生していた数百万単位の開発コストや、数カ月にわたる開発期間が不要になる。
リアルタイム音声翻訳や超高精度の自動翻訳システムも
このような、多言語対応サービスは、既にいくつか登場している。たとえば、Microsoftはリアルタイムでプレゼンテーションに字幕翻訳できる「Presentation Translator」を発表している。
これはパワーポイントから同社の提供する音声翻訳アプリ「Microsoft Translator」にアクセスし、リアルタイムで字幕を表示させることができる。
英語や日本語を含む10の言語に対応している。すでにウェブサイトからPresentation Translatorの利用を登録することが可能だ。
また、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は、企業向けに、AIによる超高精度の自動翻訳を実現する「AI翻訳プラットフォームソリューション」(「AI翻訳PF」)の提供を、2018年3月1日より開始する。
これは、簡単な操作で、ビジネス文書などを超高精度で翻訳することが可能だ。
日本語から英語、および英語から日本語への翻訳に対応。後、中国語など他言語への対応を予定しているという。
「必要とされる情報」を「必要としている人の言語で」届けるテクノロジー
このように、AIやインターネットなどのテクノロジーの進化によって、言語の壁は取り払われ、まずます越境ECによる市場の拡大は続いていくだろう。
両社は今後、協業の取り組みを加速させ、「必要とされる情報」を「必要としている人の言語で」届けるため、セミナーなどを通じた技術およびサービスの普及に努めていく方針だという。
img: @Press