企業は顧客が存在することで成り立つ。企業にとって、新規の顧客を獲得し、新たな商談の機会を創出することは、もっとも重要な活動の1つだ。こまでは、「飛び込み営業」や「テレアポ」と呼ばれる、ランダムな営業電話や訪問が、その手段となっていた。多くの労力を要し、効率が低いと考えられている。

今、Webやメール、CRM(顧客関係管理)など、テクノロジーの進化により、「飛び込み営業」や「テレアポ」は、「インサイドセールス」と呼ばれる手法へと、リプレイスされている。リード(見込み客)の獲得、アポイントメントの獲得、提案までを、オンラインで行い、最終的なクロージングと、受注のみをフィールドセールスの外勤が行う。

「インサイドセールス」を、そのプロセスに人工知能を導入するなどして、さらに効率化しようとする動きがある。

「テレアポしない営業」で働き方改革。インサイドセールスをAIで半自動化するサービスを提供開始

2018年2月13日、株式会社ジーエルシーは、同社が開発した「“セールスアシスタント”ロボ」優先利用企業の募集を開始を発表した。ジーエルシーは、AIなどの先端技術で、コンタクトセンター業界へデジタル化ソリューションを提供する企業。「“セールスアシスタント”ロボ」は、見込み顧客の分析から、アポイントの日程調整までのインサイドセールス業務をAIで半自動化するクラウドサービスだ。

ジーエルシーはコンタクトセンター改革を行う中で、テレアポ型営業の課題のヒアリングを行った。

そのなかであがった問題点としては、

  • アポイント獲得率が数%しかない
  • 顧客のポテンシャルが不明確で受注につながらない
  • テレアポ担当者の離職率が高い
  • 営業代理店への委託はコストが高い

などが多かったようだ。

また、オンライン化による「インサイドセールス」を導入したとしても、アポイント獲得難易度の高さや、獲得率の低さが変わらない場合もあるのが実情だった。

「“セールスアシスタント”ロボ」は、ターゲットリストを自動作成し、DMを自動送信する。問合せを受領し、セールス担当の空き時間を自動判定。アポイント候補日時を顧客へ自動送信して、アポイント日時確定までを自動で行う。

将来的に提供する機能として、

  • SFAシステム(営業支援システム)・CRMシステムとの連携
  • アポイント設定率や受注率の高い見込み顧客のAIによる分析
  • Googleカレンダーなどカレンダーシステムとの連携

が挙げられている。

これにより、「インサイドセールス」が標準化され、属人化を排除し、成果の最大化が期待できる。

企業はセールス担当の数を減らし、コスト削減が可能だ。セールス担当者は、無駄なコンタクト数が減り、アポイント設定も自動化され、訪問も効率化し、労力が減る。スタートアップや少人数企業で営業担当者がいない場合などにも能力を発揮しそうだ。

そして今、オンラインのマッチングサービスは、企業と顧客の出会いの場として広く利用されている。

マッチングサービスによる新しいビジネス機会の創出

株式会社リンクアンドシェアは、「スマート商談会」というサービスをリリースしている。これは、買い手企業(スーパー・百貨店・通販・外食)のバイヤーと、地方の食品製造工場を「商談」でつなぐWebマッチングサービスだ。

食品業界の大きな特徴として、買い手企業と製造工場の「物理的な距離」の問題が存在する。買い手企業は、人口の多い都市圏に集中する一方で、全国に50,000社存在する食品製造工場は、地方に分散している。そこに起こる、「情報のミスマッチ」を解決しようというわけだ。

リンクアンドシェアは、2015年に「クラウドフード」というサービスをスタートしている。食品製造工場が「クラウドフード」のデータベースに商品を登録すると、買い手企業のバイヤーが検索できるようになる。気に入った商品が見つかれば、バイヤーは「スマート商談会」を通して、工場に対して商談会のオファーを一斉に送ることが可能だ。工場サイドが承認すれば、連絡先を開示し、商談へ移る。

地方の製造工場・生産者は、都市部の小売店・外食店舗への営業が、容易になる。都市部の店舗も、地方の多彩な仕入先を開拓し、売り場や取扱商品の差別化を図ることができる。

また、株式会社EventHub(イベントハブ)は、2018年1月に、イベント特化型ネットワーキングサービス「EventHub」をスタートしている。

EventHubは「イベントでの繋がりを増やす」をコンセプトにつくられたサービス。カンファレンスや展示会の参加者間のビジネスマッチング(ネットワーキング)や商談の機会を増やし、インバウンドでの商談機会の獲得を目的としている。

カンファレンスや展示会等のイベントでは、参加者・出展社が新規ビジネスの創出を目的として参加する。これまで、参加者同士のマッチングは、出展ブースでの活動や、主催者側のスタッフが手作業でおこなうなど、テクノロジーを介さない施策がほとんどだった。

「EventHub」を導入すると、参加者はスマホを使って、イベント会場でまわりにどのような参加者や出展社がいるのかを検索することができるようになる。「会いたい」申請を送り、申請が成立したら、ソフトウェアがお互いのスケジュールを自動的に照らし合わせ、面談時間を提案。面談室予約やダブルブッキング防止も自動的に行う。

企業の営業活動は、オンライン空間での出会いが活発になっているようだ。

インサイドセールスの導入は、「企業利益」と「働き方改革」を同時に狙う

「新規の顧客開拓」は、企業にとって最重要課題である一方、営業担当者にとっては、労力がかかる割に成果が出にくい業務であった。テレアポ担当者や外勤営業担当者は、離職率も高いといわれている。

労力がかかり成果が出にくいのは、地理的なミスマッチや情報のミスマッチが存在するためだ。どこにどんな顧客が存在するのかわからない。顧客に会いに行くのに時間がかかる。これを解決するのが、「インサイドセールス」や「マッチングサービス」だ。

新規顧客の開拓が容易になれば、企業の利益は増大し、営業担当者の「働き方改革」にもなる。これからの「新規の顧客開拓」業務は、オンライン空間がメインの戦場になっていくことだろう。

img: PR TIMES