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マッチングサービスは、Webを介して、多くの人と人とのつながりを創り出している。「つながり」にも、様々なファクターがある。仕事や恋愛のパートナーをマッチングしたり、移動手段や宿泊先をマッチングしたりと、活用の場を広げてきた。
その活用の場は、金融つまり「お金」のマッチングにも広がる。ネットを介して「お金を借りたい人や企業」と「お金を貸したい人や企業」をつなぐサービスは、「ソーシャルレンディング」と呼ばれるFinTechの1つだ。
なかでも、お金を投資したい一般投資家と、お金を必要としている人・会社を、インターネット上でマッチングする市場の規模が急成長をとげている。
日本の「ソーシャルレンディング」市場規模が1,300億円を突破
2018年1月31日に公開された、「2017年ソーシャルレンディング業界レポート」によれば、2017年のソーシャルレンディングの市場規模は1,300億円を突破した。成長率は前年比で2.5倍となり、2014年からの調査の中で過去最高の数字である。2014年は143億円、2016年は533億円だった。
「ソーシャルレンディング」は、欧米で、ネットを利用した個人間融資のモデルとして立ち上がった。それは、「貸付型クラウドファンディング」と呼ばれることもある。
日本では、個人投資家からネットを介して、小口で集めたお金を大口化し、借り手企業に融資するという、法人融資のかたちをとる。投資を募集する主体は、金融庁から第二種金融商品取引業の免許を取得した事業者など。貸金業法にもとづき融資して、その利息を収益とするかたちだ。
2017年は、一般への認知が広がり、「ソーシャルレンディング」で資産運用を行う人も増えている。数万円程度の小口から投資でき、利回りが高いというという特徴がある。検討しやすい投資商品である一方、元本き損のリスクがあることには注意が必要だ。
ソーシャルレンディング事業者が取り扱う案件は、多様化している。最初は不動産が多かったが、現在は、再生エネルギーや海外といったテーマへの広がっているようだ。投資家から見れば、選択の幅が広がることになる。
市場規模の拡大にともない、参入事業者も増えている。競争により、「期待利回り」が上昇している。投資家を引きつけるためには、高い利回りが必要だ。企業は利益よりも、「投資家の登録」の獲得を重視し、キャッシュバックキャンペーンを行うところもある。2017年のソーシャルレンディング業界全体の募集時における「期待利回り」は、年率8.40%(税引き前)となり、前年比で上昇している。
欧米では、借り入れが困難な貧困層の問題を解決するツールとして「ソーシャルレンディング」が登場した。
海外のソーシャルレンディングの事例
リーマンショックによる不況の後、米国では、クレジットスコアを取得できずローンなどを組むことができない層の存在が問題となっていた。クレジットスコアは、各個人の信用力を、それぞれのクレジットヒストリーから計算したもの。
クレジットスコアが低いため、数百ドル(数万円)を借り受けることすら難しいという人も存在する。国民の50%弱は銀行口座に預金がなく、クレジット(信用貸付)のニーズが高い。
そういった層を対象に「ソーシャルレンディング」事業を行っているのが、Inskit(インスキット) だ。Inskitはあくまでも金融業者ではない。同社は「Lendify」というオンラインプラットフォームを開発し、顧客のクレジットを管理している。クレジットのスコアリングから、バックオフィス、ファンディングまでが可能だ。
「Lendify」で蓄積したクレジット情報をもとに、他社ブランドで商品やサービスを提供する「ホワイトローン」により、借り入れが難しかった人たちと、ローン事業者をつなぐ。Inskitと3回ほど取引をすれば、メインストリームの銀行にアクセスできるクレジットスコアを貯めることができるという。与信審査を通らない人が信用情報を積み上げていく場として機能する。
Inskit CEO 兼 共同創業者のジェームス・グティエレス氏は、ヒスパニック系の人々に少額融資を行うOportun(オポーチュン)(前・Progreso Financiero)を2005年に創業した人物でもある。
マッチングサービスが新たな金融の場を創り出す
ネットを介したマッチングサービスは、仕事や恋愛、移動や宿泊など広い場面で、人と人とを繋ぐようになってきた。距離や場所の隔たりを越えた出会いを可能にし、ちょっとした隙間の時間や空間の利用ができるようになるなど、新たなつながりを創り出している。
FinTechが可能にした、金融分野のマッチングサービスである「ソーシャルレンディング」や「貸付型クラウドファンディング」は、既存の銀行や株式市場では難しかった場面での、投資や資金調達を可能にするものだ。
今まで「投資する先がない」、「借り入れる相手がいない」という問題を抱えていた企業や人々をマッチングすることで、これからもお金でつながる金融の場を広げていくことになるだろう。