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近年、若者の酒離れという言葉をよく聞くようになった。しかし、その一方で「日本酒ブーム」という言葉も聞かれるようになってきている。
安倍晋三首相がオバマ前大統領にプレゼントした地元の日本酒「獺祭」のブームを皮切りに、高級日本酒の活性化、日本酒イベントの拡大など、その話題は事欠かない。
このブームに追い風となるかもしれないツールが開発された。それは日本酒に関するビックデータを解析し、都道府県別の味の傾向を見える化したのだ。日本酒に詳しい人はもちろん、日本酒に馴染みがない人も楽しむきっかけになるのではないだろうか。
都道府県別の日本酒の特徴がビックデータ解析から明らかに
日本酒アプリ「さけのわ」が、アプリに投稿された日本酒に関する感想を解析することで、都道府県ごとの味わいの特徴をみることができる機能をリリースした。
これらは、“華やか”、“芳醇”、“重厚”、“穏やか”、“ドライ”、“軽快”の6つの特徴で分類されチャート化されているため、都道府県ごとの日本酒の味の特徴がどんなものかが一目瞭然にできるというもの。
このチャートは「さけのわ」が学習した各都道府県産日本酒の味わいを統計処理して算出している。もちろん、個別の日本酒にはこのチャートと相似にならない様々な味わいが存在しているが、都道府県全体として、日本酒の味わいがどういった傾向にあるのかというものがわかる。
そのため日本酒の銘柄が分からなくても、地域の傾向で好みの味を選ぶことが可能となっている。
日本人が求める日本酒は量から質へ変化している
では、今の日本酒はどのような状況にあるのだろうか。
農林水産省が出している“日本酒をめぐる状況”によると、日本酒の出荷量は平成に入ってから減少傾向にある。近年では60万klを割り込むぐらいの出荷量となっており、これはピーク時の約1/3だ。
その一方で消費者の“質が保証された日本酒”を飲みたいという傾向が高まっていることから、吟醸酒や純米酒などの原料・製造方法が一定の基準で定められている特定名称酒の出荷量が増加している。
これは、消費者の価値観が“量”から“質”へ移っている表れとも考えられる。
海外に目を向けてみると、この数年は日本食ブームを背景に、世界にも日本酒が多く輸出されるようになった。平成28年の日本酒輸出量は約19.7klと報告されており、なんとこの10年間で約2倍までその量を増やした。
なお輸出上位5カ国・地域はアメリカ、韓国、台湾、中国、香港だ。これら5ヶ所で約7割の日本酒が消費されている。
日本酒が人をつなげる架け橋になる
今回の「さけのわ」のように、ビックデータ解析やSNS発信を通して新しい形で情報を共有することは、日本酒好きなユーザーはもちろん、情報感度が高いミレニアル世代や海外観光客にも歓迎されるのではないだろうか。
さけのわは英語版ページも用意されていることから、日本はもちろん、世界を舞台に日本酒普及に寄与するプラットフォームになれるかもしれない。日本酒が新しい技術と融合することで国内はもちろん、世界の人ともつながる架け橋になる可能性があるのだ。
既存の価値を他のイノベーティブな技術と掛け合わせることでその価値をリプレイスする。日本酒だけではなく、日本の伝統文化や農業といった部分でもこういった動きは活性化し始めている。
今の技術進化のスピードは、落ち目だと思っている分野にこそ光を照らし、その分野をリプレイスすることで今までになかった新しいビジネスの形を作り上げられるのかもしれない。