仕事場でふと集中力が切れたとき、適度な休憩を取るように心がけている人は多いはずだ。とある研究では、たった1分間自然を眺めるだけでも休憩後のパフォーマンスが上がったという。

しかし、闇雲に休憩を取ればいいわけではない。休憩中に取り組んでいる課題について愚痴を言うのは、かえって疲労を増大したという研究結果もある。休憩の質を高めるには、一時的でも仕事上の課題から意識を逸らす必要があるのだ。

目の前の課題から精神的に距離を置く手段の一つに「瞑想」がある。ハーバード・メディカルスクールのElizabeth Hoge医師は、瞑想によって人は不要な悩みや考え事を客観的に捉えられると述べている。

ハンモック型ポッドでオフィス瞑想

ニューヨーク発のスタートアップ『The Kokon』が手がける『Kokon stress reduction pod』は、わずかなスペースでも瞑想するための最適な環境を提供してくれる。

ハンモックのような形状のこのポッドは、『stress reduction(ストレス軽減)』という名にふさわしい工夫が凝らされている。

ポッドは安心感が得られる匂いを発し、付属するヘッドフォンからは人間が心地よく感じる周波数の音が再生される。また、両手に握るデバイスや背骨に沿った8箇所からは程よい振動も伝わってくる。

匂いや音、振動以外に、ハンモック型のポッドは前後の「揺れ」によって、さらなるリラックス効果をもたらす。ジュネーヴ大学の研究では、ゆっくりと前後左右に揺れるベッドで被験者を寝かせると、ノンレム睡眠の際に現れる脳波が計測できたという。電車や車の揺れで眠くなるのも同様の理由だと考えられている。

最適なパフォーマンスのためにストレスや雑念を取り払え

The Kokonの共同設立者Veronika Bartosch氏は、「ただ睡眠を取るのではなく、瞑想によってストレスのサイクルを絶つため」にポッドを開発した述べている。

同社のウェブサイトには「Happy brains make happy work(ハッピーな脳がハッピーな仕事を生む)」とあり、彼らがより良い仕事をするための手段として位置づけていることが伺える。

久賀谷亮氏は著書『世界のエリートがやっている 最高の休息法』のなかで、「意識的な活動をしていないときに働く脳のベースライン活動」があると指摘した。この「脳のアイドリング」状態に費やされるエネルギー量を抑え、目の前の集中すべき物事に脳のエネルギーを集中させるためには瞑想が最適なのだという。

MITメディアラボの『Hacking Arts Event』に出展した際の様子

近年、仕事の効率をアップするために、米国のIT企業は瞑想を積極的に導入してきた。Salesforce CEOのMarc Benioff氏やTwitter CEOのJack Dorsey氏、Google共同設立者のSergey Brin氏は、自身が実践するだけでなく、従業員にも瞑想を推奨している。

昼寝や瞑想の効能が科学的に明らかになっている昨今、その習慣をいち早く取り入れるか否かで、職場全体の生産性に大きな差が生まれるだろう。今後は休息を最大化するためのインフラをオフィスに用意することも、企業にとって重要な取り組みになっていくかもしれない。

img:Kokon