グローバル化という言葉が叫ばれるようになってからどれくらいの時間が経っただろうか。

海外との行き来が盛んになり、ビジネスでもグローバル化はもはや普通のことだ。そこで必要になってくるのが語学力であり、それを補完するのが翻訳システムだ。

しかしながら、インターネットの無料翻訳サービスでは、利便性や専門用語の翻訳能力の点で不足するなど、企業における翻訳ニーズを満たすことは難しい状況にある。

そんな状態を背景に、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は、企業向けに、AI(人工知能)による超高精度の自動翻訳を実現する「AI翻訳プラットフォームソリューション」(「AI翻訳PF」)の提供を、2018年3月1日より開始する。

ビジネス文書などを超高精度で翻訳

AI翻訳PFは、最新のニューラルマシントランスレーション(NMT)技術と、NTTグループの強みである日本語解析技術を投入した翻訳エンジンを利用する。簡単な操作で、ビジネス文書などを超高精度で翻訳することが可能だ。

NMTとは、脳の神経回路を模したニューラルネットワークを用いた機械翻訳技術。膨大な対訳データを機械学習することで、高精度な翻訳を実現する。

また、Microsoft Office形式のファイルをそのまま翻訳して他言語に変換できる機能を実装しているほか、インターネットの無料翻訳サービスなどでは正しく訳せない社内用語や専門用語についても辞書登録やチューニングによって対応できるため、ビジネスにおける高い実用性を有している。

日本語から英語、および英語から日本語への翻訳に対応。後、中国語など他言語への対応を予定している。提供価格は月額8,000円/1IDから(最低ID数は10)。

5段階評価の精度評価実験で平均4.0を達成

AI翻訳PFに採用されている「COTOHA Translator」は、NTTグループ企業である株式会社みらい翻訳が国立研究開発法人情報通信研究機構と共同開発した翻訳エンジン。最新のNMT技術と、膨大な文例の学習によって、超高精度の翻訳が可能だ。

事前に実施した精度評価実験では、5段階評価で平均4.0を達成し、汎用的なインターネット翻訳(平均3.7)を約14%上回る結果となった。また、人間による翻訳との比較でも、TOEIC900点レベルの被験者と同等の平均点に達したばかりでなく、人間が平均7時間を要した一方、エンジンは約2分以内で訳出しており、精度とスピードを両立した圧倒的パフォーマンスを実現したという。

また、Microsoft Office(Word、Excel、PowerPoint)やPDF形式のドキュメントファイルを、そのままのレイアウトで瞬時に翻訳し、同じファイル形式で出力することができる。ブラウザ上にドラッグ&ドロップするだけで、翻訳が可能である。

ネットの無料翻訳サービスを利用する場合には、手動でファイルを開き、内容を翻訳サービスにコピー&ペーストし、翻訳結果をコピー&ペーストして資料を作る手間がかかる。「AI翻訳PF」ではこの作業が不要となり、グローバルなビジネスにおけるコミュニケーションが格段に迅速になるという。

主流は音声リアルタイム翻訳。画像によるリアルタイム翻訳も

現在AIによる超高精度の自動翻訳といえば、マイクロソフトのクラウドベースの翻訳サービス「Microsoft Translator」のように“音声を翻訳する”ものが主流だ。

また、ソフトウェア開発・ジョイズのAI英会話アプリ「テラトーク(TerraTalk)」もある。これらは、従来のように、音声を翻訳してテキストとして出力するのではなく、音声を音声で翻訳するのが特徴だ。

このような動きに対応し、AIによる翻訳が広がるのに合わせ、リアルタイム翻訳を身近にする「AIイヤホン」というツールも続々と登場している。

さらに、Google翻訳の画像翻訳も話題となった。これは、スマホで文字画像を撮影すると、その文字がリアルタイムで翻訳されスマホ画面に映し出されるというものである。

まだ性能としては完璧とはいえないものの、音声の翻訳と画像の翻訳をAIが完璧にこなせるようになった場合、言語の壁はなくなり、ビジネスチャンスから居住地の選択肢の増加など、今までに起こりづらかったグローバルな動きが一気に加速する可能性が高い。

身近になるAI自動翻訳サービス

このように、AIによる自動翻訳は音声から今回の文書作成など、どんどん拡大してきている。

今後もビジネスやプライベートでも世の中はどんどんグルーバル化が進み、これらAIによる自動翻訳システムはますます我々の生活に身近になっていくことだろう。

特にEC、観光分野でのビジネスの活発化は容易に予想される。自動翻訳システムを利用することへのコストを考えなければいけないが、言葉の壁がなくなった場合の未来を考えたビジネスを考えていくチャンスの時なのかもしれない。