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最近、企業のサイトを訪問すると、「何か質問はありますか?」「何をお探しですか?」など、チャット画面が表示されることが多くなってきた。質問に答えていくと、求めていた情報や探していた商品にたどり着くことができる。
このとき私たちがチャットをしてる相手は、AIを備えた「チャットボット」だ。
日本で、AIを搭載したチャットボットを有名にしたのは、マイクロソフトが2015年からLINE上で展開している女子高生チャットボット「りんな」だろう。チャットで話しかけると「りんな」が、女子高生らしい口調や内容でスムーズに反応してくれるというもので、試してみたことがある人も多いはずだ。
そこからチャットボットは進化を続け、さまざまな生活シーンで出会うようになった。今回は利用が広がるチャットボットについて見ていきたい。
「チャットボット」でAIとコミュニケーションする
「チャットボット(chatbot)」は、ネット上で短いテキストによって会話する「チャット」と、人間に代わってさまざまなタスクを実行する「ロボット」を組み合わせてできた言葉だ。
通常のチャットが人間と人間とで行われるのに対し、「チャットボット」では人間とAIがチャット上で会話することになる。
IBM社の「Watson(ワトソン)」などのAIや、自然言語処理技術などが進化することにより、「LINE」、「Facebook」といったSNSや、ショッピングサイト、チケット予約サイトなどに導入されるようになった。
そうすることで、AI搭載の「チャットボット」とチャット上でコミュニケーションし、サービスを利用するというスタイルが生まれてきており、今、この「チャットボット」が広い範囲で活用され始めている。
ベストセラー著者をボット化した「AI著者ボット」β版リリース
2017年12月26日の発表によると、「LINE」や「Facebook」向けのボット制作を手掛けてきた、株式会社REACT(リアクト)が、ビジネス書出版などを手掛ける、株式会社クロスメディア・パブリッシングに「Engagebot(エンゲージボット)」を提供し、著者をボット化した「AI著者ボット」を共同制作した。
「AI著者ボット」は、「LINE」と「Facebook」で展開され、QRコードからスマホにインストールできる。本の著者をボット化したもので、その第一弾が、「自分を変える習慣力」などの習慣力シリーズがヒットした三浦将(みうら・しょうま)氏の「三浦 将ボット」β版だ。
「三浦 将ボット」は生活習慣を変えるためのカウンセリングを行う機能を持ち、ユーザーからの相談に本人が回答する場合もある。カウンセリング機能以外にも、著者本人のメルマガへの登録やオンラインサロンへの参加、書籍の購入などが可能だ。
こうした機能により、著者と読者を繋げ、双方の価値を最大化することを目的とする。
「チャットボット」の活用例
株式会社ZEALS(ジールス)の、Messengerメディア会員システム「fanp (ファンプ)」は、メディアがファンに記事を届けたり、コミュニケーションを行うチャネルとして「Facebook Messenger」を活用することが可能だ。
企業は、Messenger上で企業アカウントを立ち上げ、チャットボット用のCRM(顧客関係管理)機能を通じて、チャットボットを会員登録の窓口にする。このMessengerを通じて記事を届けるチャットメディアは、メルマガに比べ開封率15倍・クリック率 13倍・離脱率8%以下という成果を出しているようだ。
今、メディアの指標は、「PV(ページビュー)」から「エンゲージメント(愛着心)」へと変化している。メルマガ、スマホアプリ、SNSの次となる、「エンゲージメントを築くための最適なチャネル」として、チャットボットが注目されているのだ。
LINEでは、企業の顧客や商品データベースなどとメッセージ内容を紐づける「LINE ビジネスコネクト」を展開し、メッセンジャー上でさまざまな企業がサービスを提供している。対話形式でプランが作れるライフネット生命の「ほけん診断」や楽しく会話できるフロム・エー ナビの「パン田一郎」、商品情報が届くZOZOTOWNのLINEアカウント、スタンプを押すだけで残高照会できるみずほ銀行のLINEアカウントなどがある。
その他にもエクスウェア株式会社は、AIチャットボット「TalkQA」と、スマートスピーカー「Google Home」を連携し、さまざまな質問に回答する企業向けソリューションを発表している。
家庭での普及が進んでいたスマートスピーカーであるが、業務用としての利用も本格化していくことだろう。店舗、展示会、ショールームなどで、顧客との音声会話による説明や案内を担当することが予想されている。
「チャットボット」が、ユーザーとのコミュニケーションを深化し「エンゲージメント」を高める
AI技術と自然言語処理技術の進化により、AIと人間が会話する「チャットボット」が登場し、メッセンジャーとの連携によってチャットボットを利用したユーザーとの対話に乗り出す企業が増えている。
ユーザーとの繋がりの指標が、「PV(ページビュー)」から「エンゲージメント(愛着心)」へと変化する中、メルマガ、スマホアプリ、SNSの次となるコミュニケーションツールとして、「チャットボット」の利用はさらなる広まりを見せることだろう。
また先にも述べたように、スマートスピーカーの登場はチャットボットの意義をもう一段広げてくれる可能性を秘めている。これからは困ったことはスマートスピーカーに尋ね、チャットボットが回答してくれるという未来が待っているのかもしれない。
img: PR TIMES