インターネットでは欲しい情報や画像、動画などがすぐに手に入ってしまうため、そのコンテンツの権利が誰に所属しているものなのか、その意識は希薄になりがちだ。

それを象徴するように、昨今のWELQ問題がきっかけとなって発覚したのが、Webにおける著作権問題だ。これまでの画像の不正使用など、Webにおける著作権への理解やその認識にメスを入れる結果となった。

こうした問題を2度と引き起こさないためにも、業界はAIによる365日体制の自動監視システムの導入へと動き出した。

広がりはじめたAIによる画像認識システム

時代の波を受けて、AIを活用して画像の不正利用を検知しようとする企業が出てきた。

Web掲示板や投稿の監視を実施するイー・ガーディアン株式会社(以下・イー・ガーディアン)では、画像内物体検知システム「Kiducco AI(キヅコウ エーアイ)」を提供している。

画像内のロゴやキャラクターが不正利用されていないかを、物体検知アルゴリズムとAI技術を融合することで確認するシステムだ。

今後、このような動きは広がっていくと考えられ、先駆けて著作権管理システムの導入を発表した企業がある。

AI自動監視システムLisah(リサ)は著作物不正利用撲滅の先駆けになれるか?

2017年11月29日、ネクストライブラリ株式会社(以下・ネクストライブラリ)は、同社が提供する“ユーザー参加型”検索サービス「NAVERまとめ」において、新たに著作権管理システム「Lisah(リサ)」のテスト導入を開始すると発表した。

これまでにNAVERまとめでは、権利侵害などの問題があるまとめに対して、プロバイダ責任制限法の各種ガイドラインに則して対応するとともに、365日体制の全件モニタリングを実施してきた。しかし、著作権者が著作物の不正利用確認をしたり、その証明に向けた負担は課題として残されたままだった。

こうした著作権者の負担を少しでも軽減するために生まれたのがAIによる自動監視システムを持つLisahだ。Lisahの大きな特徴は以下の2つである。

  • 高速 / 高精度に不正利用を自動検知
  • 不正利用への対応がその場で可能

Lisahでは、著作物の画像を登録するだけで、AIが自動監視を開始し、不正利用の検知を行う。もちろんリサイズや切り抜きなど加工された画像にも対応している。現段階で不正利用画像の検知率は96%だ。

また不正利用を発見した場合には、ワンクリックで即時に掲載を停止することが可能だ。停止にあたって書類提出などが不要なため、被害の拡大を最小限に抑えることはもちろん、権利者の負担も軽減された。

なお現在、Lisahが運用されているメディアはNAVERまとめのみで、今後順次対象メディアは拡大されて行く予定だ。

AIシステムの精度アップが今後のカギ

Webにおける写真やイラストをはじめとする画像の不正利用は、問題として世間に認知されたものの、依然としてなくならないのが現状だ。

そのためには、各企業が利用者の著作物に対するリテラシーを向上させるための啓発を引き続き実施していく必要がある。併せてLisahのようなAIシステムによる著作物の監視、という二段構えで対応することが望ましい。

利用者のリテラシーと監視システムの精度がともに向上していくことで、不正利用の問題は徐々に改善されていくのではないだろうか。

しかし、ネットの海は広く、監視と抜け道のいたちごっこはこれまでも続いてきた。AIによる監視システムをすり抜けることなく検知するためにも、より100%に近い精度になることを期待したい。それによってまた、ユーザーの著作権問題への意識が高まれば、コンテンツの価値を守ることにもつながっていくだろう。

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