ゲーム実況の歴史は古い。古くはニコニコ動画やPeerCastで、最近ではYouTuberの登場で、プラットフォームが広がりつつも、ユーザーに人気のコンテンツとして君臨してきた。

自身がプレイせずとも、動画を見ているだけでゲームを楽しめることや、実況主のトークの面白さが、その人気の秘訣だろう。

日本法人設立が発表されたライブ配信プラットフォーム「Twitch」

ゲーム実況における世界最大のプラットフォームが「Twitch」だ。

Twitchはサンフランシスコを拠点とし、2011年にライブ配信サイトのJustin.tvからゲームカテゴリーを切り出し、リブランドされたサービス。

日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、毎日1500万人のアクティブユーザーがいて、月間220万人のユニークコンテンツクリエイターが配信している世界最大級の動画配信プラットフォームだ。

2014年に9.6億ドル(約1080億円)でAmazonに買収されたが、現在もTwitchという独立したブランドでサービスを継続している。

2015年にTwitchは配信対象をゲームから、アーティストやシェフによるライブ配信にまで拡大した。ゲーム以外の領域でも、ライブ配信のデファクトスタンダードを狙う。

Twitchは先日幕張で開催された「東京ゲームショウ 2017」において巨大ブースを出展。日本法人を正式に設立したことを発表している。今後、日本市場への本格的な参入が行われるようだ。

Twitchでストリーマー向けアソシエイトプログラムがスタート

最近、AmazonはTwitchのストリーマーに対して、お気に入りの商品を紹介することで自身が収益を得ることができるアフィリエイト機能「Amazonギア」の提供を始めた。

Twitchのストリーマーは、お気に入りの商品を「ウィジェット」として紹介。ユーザーはそのウィジェットをクリックすると、Amazonの該当商品ページに飛ばされ、商品を購入することができる。

これまでのAmazonアソシエイト・プログラムと同様に、ストリーマーは商品の売上の一部を収益として得ることができる。その額は、商品の販売価格の最大10%程度になるという。

Amazonはライブコマース領域を狙っていたが…

ライブ配信プラットフォーム「Twitch」を活用したクリエイターやアーティストのマネタイズを進めつつ、Amazon自体もライブ配信領域における新しい取り組みを進めてきた。

2016年3月に、Amazonは初の生放送テレビショッピング番組「Style Code Live」をスタート。ほぼ毎日放送され、スタイリストによるファッションや美容のコツとアドバイスなどがライブで配信された。

視聴者はライブチャット機能を使って、質問やコメントをリアルタイムに行うことができる…というものだったが、2017年7月に突然終了してしまった。開始から1年半、特に話題になることもなく終了したことから、うまくいっていなかったことがうかがえる。

それでもAmazonは、ライブ配信プラットフォームの領域において依然有利なポジションを保持していると言える。だって、「Twitch」を3年前に手にしているのだから。

巨大なライブ配信プラットフォームを持つAmazonの次の一手は?

現在Twitchが提供しているマネタイズ手段は、Amazonがブロガーやサイト運営者向けに提供している「アソシエイト・プログラム」に近い。だが、そこには発展性があるように思える。

Twitchのプラットフォーム上でゲーム以外のクリエイターによる配信、たとえばモデルによるアクセサリーの紹介やシェフによる料理番組などが増え、Twitch上のアソシエイト・プログラムが活用されれば、Amazonでその分野の商品の販売が増える可能性がある。もちろん、今のままでもゲームの売上額は増えるだろう。

ライブコマースの場合は、リアルタイムでその配信を視聴しているユーザーが商品を購入する。だが、ライブ配信映像はストック型のコンテンツにもなる。リアルタイムで視聴しなくても、後から映像を楽しんだユーザーが商品を購入してくれる可能性もある。もしかすると、ライブコマースサービスでの配信者よりも、Twitchのストリーマーのほうが収益を上げやすくなるかもしれない。

AmazonがTwitchというライブ配信プラットフォームを活用する余地はまだ残されている。マネタイズ手段が用意され、様々な分野のクリエイターがそれを活用すれば、Amazonがライブ配信やライブコマースの領域においても優位性を築くことができるだろう。

img : Farzad Nazifi, Twitch, rawpixel.com, Amazon.com