「あ、不在票」……そんな時あなたはどう思うだろう?

Amazonの当日配送からのヤマト運輸撤退や、再配達時間帯の改訂など、配送業の人材問題に関するニュースが多い昨今だが、アメリカの大手スーパーチェーン「ウォルマート」が再配達を無くす斬新なサービスを開始した。

再配達の依頼を面倒くさいと思うあなたには朗報かもしれないが、そのサービス、きっと複雑な気持ちを抱くはずだ。

ドアを開け、自宅に入ってくる宅配業者

ウォルマートが9月22日に始めたのは“不在宅の冷蔵庫に直接配達する”というサービス。

スマートロック機器を販売しているAugust Homeとの提携にて実現したこのサービスは、August Homeのデバイスを導入しているユーザーが対象。Walmart.comでの注文時にワインタイムパスコードを設定すると、ユーザー不在時に配達員がそのパスコードを入力して解錠、冷蔵庫まで配達するというもの。

自宅に知らない人間が入ってくるということで、どうしても心配してしまう。だが、配達員が解錠するとユーザーのスマホにはプッシュ通知が飛び、自宅の監視カメラから配達員の動きを確認ならびに記録もできることで、安全性は確保されているようだ。

システムが人間の動きを作り、監視することで生まれる“安全・安心”

通販を頻繁に利用するユーザーならば顔なじみの配達員がいることも珍しくないだろうが、それでも不在時の自宅に入って来られるのには抵抗があるのが自然ではないだろうか?

しかし、ワンタイムパスコードとプッシュ通知、そして監視カメラによる確認と記録によりこうした不安を解消して始まったこのサービスは、まさしくスマホやIoTデバイスによりはじめて可能となったサービスといえるだろう。

Airbnbなどのシェアリングサービスにおいては、サービス提供者を多くのユーザーがレビューすることで信頼性を確保しているが、このウォルマートの取り組みにはそうした感覚的なものは介在しない。システムによる冷徹なルート確保と監視である。

現時点ではシリコンバレーにて試験的に開始された段階ではあるが、国土が広く自動車での移動が前提であるアメリカにおいては、コンビニが徒歩圏内にあって当たり前の日本よりも、こうした生鮮食品の配送に需要があるはずだ。

とはいえ、極めてプライベートなスペースである自宅に他人が入ることへの抵抗感を覚える人は少なくないだろう。コストに糸目をつけなければ、金庫やシェルターのように頑丈な宅配冷蔵ボックスを自宅に設置するという選択肢も今後生まれてくるかもしれない。

また、以前にAMPでも紹介したように、荷主側からの働きかけも生まれている。Amazonは2017年7月より、無料で宅配ボックスを設置するサービス「Hub」をリリース(現在は米国のみ)。他にも「Amazon Locker」や楽天の「楽天BOX」など、業界をあげて確実な宅配環境をつくろうと試みている。

不在票がなくなる日も、近い?

img: August