問題は雇用減少ではなくスキルミスマッチ
このように続々とスキルトレーニング支援を明らかにするIT大手。人工知能やロボットによる自動化が雇用を奪うという考えが広がり、その矛先がハイテクIT企業に向けられていることが背景にあるといわれている。
しかし一方で、直近では雇用は増え続けているのが現状で、人工知能やロボットの登場で雇用の絶対数が減っているわけではない。
先に述べたように、米国では600万の求人が埋まっていない状態にある。これは2017年4月に米労働省が発表した数字だが、史上最多の数字として各メディアが報じていた。
つまり、米国においては、これまでにないほど企業が意欲的に求人を募っているということになる。しかし、これらの求人が埋まっていないのは、企業の求めるスキルと労働者のスキルがマッチしていないからというのが最大の理由なのである。
スキルミスマッチが拡大する理由の1つは、市場の変化が非常に速く、同じスピードで新たな知識・スキルを習得することが難しくなっていることが考えられる。また、求められるスキルのレベルも上がっていることも背景にあるだろう。
さらにデジタルスキルの場合、包括的かつ実践的に学習できる環境が整えられていないこともスキルミスマッチを拡大させる要因になっているのかもしれない。デジタルマーケティングやコーディングを学ぶコースはオンライン学習プラットフォームで多く見つけることができるが、それが仇となり、どこから手をつけていいのか分からないという状況につながっていることも多いはずだ。
オンラインコース大手「Udemy」
そんな中で、IT分野の先端をいくグーグルやマイクロソフトなどがイニシアチブを取り、デジタル分野を中心とした人材開発を加速させることはミスマッチ解消になんらかのインパクトをもたらすのではないだろうか。デジタルスキルのなかでも、具体的にどのような分野の人材が求められているのかを把握しているだけでなく、育てた人材が活躍する場を与えることもできるからだ。
この先、汎用人工知能が登場するようなことがあれば状況はガラリと変わるのかもしれないが、それまでは企業側も労働者側もスキルミスマッチを埋める努力をすれば、技術的失業の影響は最小化できるのではないだろうか。