iPhone 8/8 Plus、iPhone Xに搭載され話題となっているワイヤレス充電機能。毎日ケーブルにつなげ充電するわずらわしさから開放されるのは非常によろこばしいことだ。
一方、ワイヤレス充電を待望しているのはスマホユーザーだけではない。
ドローン向けワイヤレス充電、米スタートアップが開発
ドローンを飛ばすオペレーターたちは、スマホユーザー以上にワイヤレス充電を待っているといえるかもしれない。
現在ドローンにはリチウムポリマー(LiPo)バッテリーが使用されており、飛行時間は最大で20分ほどにとどまっている。20分を超えるフライトが必要な場合、重いバッテリーを何本も持ち歩かなくてはならない。
建設や農業などさまざまな産業分野でドローン活用が進んでいるが、以前お伝えしたように、飛行時間がドローン普及のボトルネックの1つになっている。産業分野では広大な土地でのオペレーションとなるため、複数のバッテリーを準備する必要がある。さらに、バッテリー交換時に人手が必要となってしまうため、人員コストがかかってしまうこともドローン活用の優位性を損ねてしまう。
米ワシントン大学からスピンオフしたロボティクススタートアップ WiBoticがこのほどローンチしたドローン用ワイヤレス充電システム「PowerPad」は、そんなドローンオペレーターたちの悩みを取り除いてくれるソリューションとして注目を集めている。
巨大インフラ点検で真価を発揮するドローン・ワイヤレス充電
WiBotic社が開発したドローン向けワイヤレス充電システム「PowerPad」
PowerPadは、主にインフラ点検、警備、農業など大規模な土地、または長時間のフライトを必要とするオペレーション向けにデザインされたワイヤレス充電システム。ドローンがこのPowerPadに着陸すると自動で充電することが可能だ。もしドローンが自律飛行であれば、フライトと充電の全プロセスが自動化できることになり、効率化・コスト削減の観点から非常に大きな期待が寄せられている。
たとえば米国の重要エネルギーインフラであるガス・石油パイプラインの点検を考えてみると、このPowerPadの持つポテンシャルがイメージしやすくなるかもしれない。
米国のパイプラインは、天然ガスと石油を含めると総延長200万キロメートルを超える超巨大インフラである。地球1周が約4万キロと言われているので、米国のパイプラインは地球を50周できるほどの長さとなる。
米国中に張り巡らされているパイプライン
この超巨大インフラの点検にドローンを導入すると考えた場合、バッテリー交換の度にドローンが基地に戻り人手でバッテリーを交換するとなると、かなりの時間的損失を被ることになるのは想像に難くない。
一方、PowerPadをパイプライン沿いに配置した場合、ドローンは基地に戻る必要がなくなり、作業効率を大幅に改善することが可能となる。
パイプラインだけを見ても、ロシアが総延長25万キロメートル、カナダ10万キロメートル、中国8万5000キロメートルと、ワイヤレス充電とドローンの組み合わせがもたらすインパクトは非常に大きなものになることが分かる。日本も米国に及ばないものの、4000キロメートルを超えるパイプラインが敷設されている。
もちろんパイプラインだけでなく、送電網や鉄道、道路など、国中に張り巡らされているインフラへの応用も考えられるだろう。
ワイヤレス充電は長らく研究が行われてきたテクノロジーだが、スマートフォンが普及したことで一気に実用化が進んだような印象だ。現在は主にEV向けのワイヤレス充電システムの実用化に注目が集まっている。
高速道路にワイヤレスチャージャーを設置することで、走行しながら充電できる画期的な仕組みの実証実験が行われていることは非常に興味深いところである。
そのなかでPowerPadというドローンに特化したワイヤレス充電システムが登場したことは、これからワイヤレス充電がさまざまなシーンに応用されていくシグナルとして読み取ることができるだろう。実際、 WiBoticのワイヤレス充電はドローンだけでなく、水中でも利用でき、水中ドローンの応用可能性も広げてくれるテクノロジーだ。
ワイヤレス充電テクノロジーの進化とともにドローンがそのポテンシャルをどこまで高めていくのか注目したいところだ。
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