小さい頃、レゴ ブロックとプラモデルでずいぶんと遊んだ。ブロックでオリジナルの乗り物や建造物をつくり、プラモデルを登場人物にしたストーリーを自分で作っていた。異なるプラモデルの部品を組み替えて、オリジナルのプラモデルを作ったりもしていた。

異なる部品を組み合わせて、新しい何かを生み出すことが楽しかったのだろう。それは今仕事にしている編集や文章を書くことにも似ているように思う。

組み合わせるだけで何でもつくることができる。レゴ ブロックで遊ぶ時は、その可能性にワクワクしていた。

問われるレゴの企業精神

レゴ ブロックと言えば、今や子どもの遊び道具であると同時に、大人も使えるクリエイティビティの象徴でもある。ワークショップの現場では「レゴ シリアスプレイ」というメソッドが開発されており、大人の創造性を引き出すツールとしても活用されている。大人になってもレゴに触れたことがある人は一定数いるだろう。

デンマークの企業レゴが提供するレゴ ブロックはクリエイティブな玩具として支持される一方、その製品は石油由来のABS樹脂で作られており、環境問題の観点で批判されることもあった。

とくに原材料確保のために長年提携を結んでいた大手石油会社ロイヤル・ダッチ・シェルの企業としてのスタンスは度々批判を受けていた

北極海では激しい石油開発競争が行われており、厳しい自然環境下によるパイプラインのメンテナンス不備などで、原油流出が頻繁に起こっている。これは北極海の生態系に大きな被害をもたらす。

シェルが2012年から始めたアラスカ沖での資源探査のための掘削に異を唱えようとして、国際環境NGOグリーンピースは、シェルによる北極圏開発を批判する動画を、レゴ ブロックを使用して2014年に作成。視聴回数は800万回を超えた。

動画の影響もあり、レゴとシェルの提携解消を訴える署名は100万人分以上集まった。両社の販売促進提携は50年に及ぶものであったが、強まる批判を背景にレゴのJørgen Vig Knudstorp(ヨアン・ヴィー・クヌッドストープ)最高経営責任者(CEO)は、グリーンピースの戦術を支持しないが、シェルとの契約を更新しない旨をブログに掲載した。

2030年までに「プラスチックを使わない」目標を掲げる

100万人の署名を契機に、レゴ社は環境問題に積極的に取り組む姿勢を見せている。

レゴは、全世界の拠点で消費する電力を、再生可能エネルギーでまかなえる見通しであることを発表した。2020年までに自社で消費する以上の電力を、自社で開発した再生可能エネルギーで発電するという目標を立てていたが、20017年5月に3年前倒しでその目標を達成した。

2015年にレゴは、2030年までにレゴ ブロックの素材にプラスチックを使うのをやめて「持続可能な新素材」にすると発表し、プラスチックに変わる素材の研究開発のサステナブルマテリアルセンターに1億5500万ドル(約167億円)を投資した。

サステナブルマテリアルセンターは、化石燃料以外からプラスチックを製造する方法を研究している。同センターで研究されているバイオプラスチックは、植物や生分解性の物質から作られている。

現在存在するプラスチックの約1%がバイオプラスチックであり、そのマーケットはこの1年間で20%以上拡大している。通常のプラスチックと比べるコストと耐久性に課題はあるが、徐々にその差は埋まりつつある。

レゴブロックの場合は、プラスチックで作るものと同様に頑丈で、1958年から製造してきた既存のプラスチック製のブロックと完璧に組み合わさるものでなければいけないため、同センターへの投資を行い、バイオプラスチックの更なる技術革新を目指している。

レゴにて環境責任部門のトップを務めるTim Brooks(ティム・ブルックス)氏は次のように語る。

「私の父が遊び、それにならって私も子どもの頃に遊んでいたレゴを、私の息子にも受け継ぎたいと思っています。これまで世代を超えて受け継がれてきたレゴを次の世代にも届けるためには、サステナブルであることが求められています」

ミレニアル世代は、企業の“社会課題に向き合う“姿勢に共感してモノを買う

レゴを支持しているクリエティブな層はサステナビリティに関心が高いため、それを背景としてレゴは環境問題へ取り組んでいると考えられる。

ひと昔前は、CSRとして片手間で良いというニュアンスもあった企業の環境問題への取り組みだが、今や、ブランドの価値を高める重要な要素の一つとも言える。デロイト トーマツ コンサルティングがミレニアル世代を対象に行った調査では、「ミレニアル世代は多国籍企業が社会の直面する困難の解決にもっと取り組むことを望んでいる」ことがわかっている。

参考記事:「柔軟に働けない企業はNG」−−ミレニアル世代の職業意識の調査結果

いくら製品がかっこよくても、企業精神と行動が私たちの未来を考えたものでなければ、その企業は支持されないだろう。目の前の問題が解決されればそれでよいという時代から、モノの背景や意味も含めてそのモノの価値を買うという感覚にシフトしてきている。

マーケティングの考え方で「ドリルを買う人が欲しいのは “穴” である」と言われる。その穴を開けるために使われた電力は再生可能エネルギーか、穴を開けるために途上国で人権問題が起きていないか、穴を掘って出たゴミは適切に処理されたかが問われるのが現代なのではないか。

レゴに限らず、クリエイティブなイメージを作っていくためには環境問題や人権問題など、社会的な問題に積極的に取り組む企業の姿勢が今問われていると言えるだろう。

img : LEGO, Iker Urteaga, Markus Spiske,LEGO, YouTube

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