勢いあるZ世代の登場、これからは「普通の10代」が少なくなる?
10代の頃、何を考えどんな生活を送っていただろうか。ほとんどのひとは、中学・高校での勉強や部活、そして大学受験で忙しい毎日を過ごしていたはずだ。しかし、そんな「普通の10代」はこれからどんどん少なくなっていくかもしれない。
「ジェネレーション Z(Z世代)」という起業家精神旺盛でパワフルな世代が時代を変えようとしているからだ。特にいまこの傾向は米国で顕著になりつつあるという。
Z世代とは、1990年代半ばから2008年頃までに生まれた現在12〜19歳にあたる世代だ。ミレニアル世代(1980~90年代に生まれた層)より若く、独自の特徴をもっているといわれている。
どんな特徴があるのかというと、前述した起業家精神が旺盛であることに加え、デジタルネイティブで、社会課題への意識が高く、倫理的な消費観を持つ、などが挙げられる。
ミレニアル世代もデジタルネイティブと呼ばれることもあるが、その度合いはZ世代の方がはるかに高いことは想像に難くない。生まれてすぐにスマートフォンやタブレットに触れている世代なのだから、真のデジタルネイティブと呼べる。
Z世代は、ソーシャルメディアを通じて若いうちからさまざまな価値観に触れている。そのため、古い世代が持っているような固定観念はなく、独自の視点で世界を見て、人生を考える傾向がある。
今回は、そんなZ世代を代表する10代起業家たち4名を紹介しながら、その特徴について詳しく見ていきたい。
10歳でTシャツブランド立ち上げ、人種差別反対メッセージ
2006年生まれのケリス・ロジャースさんは、この春わずか10歳にして自分のファッションTシャツブランド「Flexin’ In My Complexion」を起業した。肌の色(人種)差別に反対するメッセージを太字であしらったビビッドな色のTシャツを販売している。
人種差別という社会問題に果敢に挑戦するロジャースさんのメッセージは力強く、彼女のツイートには3万リツイート、Facebookには8万いいねがつくなど、多くの共感を集めている。
今夏から「フルタイム勤務」の予定で、Tシャツだけでなくタンクトップなどラインナップを拡充する計画だ。また、殿堂入りした元プロフットボーラー、ジェイソン・テイラーさんとパートナーシップを組みファッションショーを開催する計画など、忙しい毎日を送っている。
彼女がこのTシャツブランドを立ち上げたのは、学校での肌の色を理由にいじめられたことがきっかけだった。この経験から、自分と同じように肌の色や人種差別に悩むひとびとをファッションを通して勇気づけようと考え、それがTシャツブランドの立ち上げにつながった。社会課題への高い意識だけでなく、旺盛な起業家精神を持ち合わせる注目のZ世代起業家だ。
12歳が立ち上げた自然の生態系を守るレモネードブランド「Me & the Bees Lemonade」
自然食品を多数扱う米国有名スーパー「ホールフーズ」で、女の子が立ち上げたブランド「Me & the Bees Lemonade」のレモネードが人気を呼んでいる。砂糖ではなく、天然のはちみつを使ったレモネードは、健康意識の高い層の人気を集めている。
このブランドのCEOはミカイラ・アルマーさん(12歳)。蜂に刺されたことで、蜂に興味を持ち、自然生態系のなかでのミツバチの重要性に気づいたことがレモネードビジネスを始めるきかっけになった。ブランドミッションは「蜂を守ること」。顧客がレモネードを買うと、収益の一部がミツバチ保護に従事する団体に寄付される。
彼女は自身を社会起業家と位置づけており、ビジネスを通して自然を守ることを信条としている。自ら養蜂するほど、蜂への情熱を傾ける注目の次世代起業家だ。
12歳が立ち上げた砂糖不使用&グルテンフリーのキャンディーブランド
次に紹介するのも12歳の起業家だ。アリーナ・モースさんは、9歳のときに健康キャンディーブランド「Zollipops」を立ち上げた。
このキャンディーは、砂糖不使用、グルテンフリー、GMOフリーと健康を意識したもので、近年の健康意識の高まりとともに人気を呼んでいるキャンディーだ。アマゾン、トイザらス、ホールフーズ、そして生鮮食品店Krogerなどで販売されている。モースさんがキャンディーの作り方を覚えたのはYouTubeの動画と、Z世代らしいエピソードを持つ。
Zollipopsは、米国内の子供の間で深刻な問題となっている虫歯を減らすというミッションを掲げ、「250,000スマイル」というキャンペーンを実施している。
世界最大級の消費市場といわれる米国。さまざまなお菓子が溢れているが、そのほとんどが砂糖を大量に使った健康に悪影響を及ぼすもの。そのような状況を改善したいという彼女の思いは多くのひとびとを動かす力となっている。
NBAとの提携も、15歳CEOが運営する蝶ネクタイブランド
現在15歳のモジア・ブリッジスさんが手作り蝶ネクタイブランド「Mo’s Bows」を立ち上げたのは、若干9歳のとき。自分に合う蝶ネクタイがなかったため、自宅のキッチンテーブルで祖母に教えてもらいながら蝶ネクタイをつくったのがきっかけとなった。
彼のデザインセンスは周囲のひとびとの注目となり、ウェブサイトで蝶ネクタイを販売することになった。
蝶ネクタイはたちまち人気となり、これまでに手作りながら30万ドル(約3000万円)以上を売り上げている。最近では、米プロバスケットボールリーグNBAとコラボしたネクタイも製作している。
ブリッジスさんは、アパレルやファッションに強い興味を持っており、将来はニューヨークのデザインスクールに入学し、20歳までに蝶ネクタイだけでない自身のファッションブランドを確立することが目標だ。
ちなみに、ブリッジスさんのビジネスメンターはヒップホップファッションブランド「FUBU」のデイモンド・ジョンCEO。ジョンCEOとは『Shark Tank』というテレビ番組で出会っている。この番組は、起業家が投資家に対してプレゼンを行い、資金調達をするというものだが、そのオリジナルフォーマットはその昔日本で人気だった番組『マネーの虎』という。国や世代を超えて親近感が湧いてくるひともいるはずだ。
ここまでZ世代を代表する4人の10代起業家を紹介してきたが、いかがだっただろうか。これまでの10代のイメージは通用しないことがお分かりいただけたかと思う。
Z世代には彼女・彼らのほかにも数多くの活躍する起業家がいる。Z世代の起業家たちがミレニアル世代やその上の世代とどのような化学反応を起こし、経済をけん引していくのか今後が非常に楽しみだ。