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飛行機の実現には100万年かかるだろうと予測されていた100年前。その予想を覆すかのように、1903年、ライト兄弟は人類で初めて空を飛んだ。それから100年経った現在、飛行機は私たちにとって重要な交通手段となっている。
それは、ロボットにも言えることだ。フィクションの中で想像するロボットの多くは空を飛ぶことができた。「ドローン」の発達が進む昨今、想像していた未来は遅かれ早かれ、現実のものとなるかもしれない。
しかし、飛行禁止区域の存在や、配送可能重量2kg前後など、空を飛ぶドローンには、何かと制限が多い。“地に足の着いた”ロボットが、一足早く実用化される可能性がある。
Skypeの共同創業者ヤヌス・フリス氏とAhti Heinla氏が創業したイギリスのスタートアップStarship Technologies(スターシップテクノロジーズ)は、デリバリーロボット「Starship」を開発した。2016年7月に行われたロンドンでのテスト走行を皮切りに、実用化に向けた準備を着々と進めている。
地面を走るロボットの開発はオーストラリアでも行われている。ドミノ・ピザと軍事ロボット技術を手がける企業「Marathon Robotics(マラソンロボティクス)」が共同で開発した、ピザ専用のデリバリーロボットも2016年3月から運用を開始している。
Amazonの隆盛を筆頭に、市場規模を拡大し続けているインターネット通販――その影で深刻な問題となっている、エンドユーザーとの商品受け渡しに必要なドライバーの人出不足だ。Starshipをはじめとしたデリバリーロボットは、この問題に――ドローンよりも早く堅実に――光を差し込ませる存在となり得る。
「ラストワンマイル」に目をつけたStarship Technologies
物流における上流工程である荷物の仕分けやトラックへの積み込みは、自動化が進み、大幅に人員が削減されている。実際、ここ日本でも、アマゾンジャパンの物流倉庫「Amazon 川崎 FC」で在庫管理ロボット「Amazon Robotics」が初導入され、出荷までの自動化が図られている。
しかしエンドユーザーへの配送については、自動化が難しい状況にあった。カスタマーの住んでいる場所は千差万別であり、経路が複雑化するためだ。この課題に目をつけたのが、Starship Technologiesだ。
彼らは工場から家までを結ぶすべての配送工程を、ロボットに任せようとしているわけではない。ドライバーとエンドユーザーを結ぶ、1人が担う負担の大きい配送区間を、デリバリーロボットStarshipに代換することで、人的コスト並びに、CO2による環境への影響を削減しようと試みている。
配達行程をスマートフォンで確認できる
Starshipの配送可能重量は18kg。上部の蓋を開けると、そこが収納スペースとなっている。外見は、写真を見ても分かる通り、6つの車輪がついたシンプルなデザインだ。カメラ、センサーが搭載されており、指定された目的地まで自動走行する。
さらに荷物を受け取る人は、配送工程をスマートフォンで追跡可能だ。いつ頃届きそうか、いま荷物はどの地点かがリアルタイム把握できる。
自動運転と人間の遠隔操作のコラボ。センサーカメラで安全面も確保される
ロボットでは困難な道程も、人間が遠隔からサポートする。完全な自動化とは言えないが、人が直接宅配する労力と比較したら、配送におけるコストは充分削減できるだろう。また、搭載のカメラ、センサーを使って人や障害物を自動で避ける仕様。そのため、ロボットと人間が衝突する可能性も避けられそうだ。
「コストゼロ、待ち時間ゼロ、環境への影響ゼロ」と3つのゼロをビジョンとして掲げるStarship Technologies。ドライバー不足の解消はもちろん、配送トラックの移動が減ることによるCO2削減の影響も計り知れない。実際、配送トラックは、再配達など消費者の細かいニーズを満たす一方、鉄道や船舶での配送と比べるとCO2の排出量が増加するといったデータもある。
日本では、2017年4月17日に実証実験を開始したロボネコヤマトのように配送エリアまでの配達も自動運転化しようとする動きがある。Starshipのようなデリバリーロボットを積んだ自動運転車が対象エリアまで移動し、エリアでの配達を効率的にロボットが行う。配送工程のほとんどをロボットが担う日も遠くはない。
空飛ぶロボットのような派手さや、かっこよさはないが、ドラえもんのようにわたしたちの日常を真に助けてくれるのは、一足先に実用化されそうな”地に足の着いた”ロボットかもしれない。