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「投資は力仕事ではない。人一倍、読み、考えなくてはいけない。」とウォーレン・バフェット氏は語った。かつて、投資とは、知識を有し、市場を読みながらじっくりと考えられる人の特権だった。
しかし、時代が進むにつれて、投資は一部の人に与えられた権利ではなくなっていった。デジタル化の波に合わせ、投資の一般化の波はさらに加速しようとしている。
投資を日常に浸透させる「おつり投資」
投資を日常に浸透させるべくまず動いたのは、アメリカのスタートアップ・Acorns(エイコーンズ)だ。少額投資の未来を予見していたウォーター氏と、彼の息子ジェフ氏が立ち上げた同社は「おつり投資」サービスを開始した。
おつり投資とは、あらかじめ決められた額を下回る支払いをしたとき、その差額を投資に回すサービスだ。Acornsのこれまでの総調達資金額は38億円にのぼり、だれもが手軽に投資できるサービスを広めるべく、邁進している。
Acornsがおつり投資サービスを構想したきっかけは、2000年代に起きたリーマンショックを目の当たりにした保守的な世代と呼ばれる層の存在だ。彼らは、初期費用が高額、お金に余裕がないと始められない、そもそも投資の仕組みがわかりにくいなどの理由から、投資を敬遠する傾向にあった。そこでAcornsは、前述した理由から投資を敬遠する層をターゲットに、おつり投資のサービスをスタートさせた。
サービスをリリースしたところ、実際にターゲットの世代がサービスを利用しており運用を開始してから8ヶ月の利用者は、4分の3が18歳から34歳だったようだ。
日本にも上陸してきた「おつり投資」の波
アメリカ発のサービス・Acornsと同様の事例はヨーロッパでも起きており、イギリス発のサービス「Moneybox(マネーボックス)」も、海外におけるおつり投資の波を加速させている。そして、その波は、ここ日本にも上陸しようとしている。
「次世代の金融インフラをつくる」という理念のもと、日本でいち早く提供が開始された、アルゴリズムで資産運用をサポートする「ロボアドバイザー」を提供するウェルスナビは、5月17日、おつり投資のサービス「マメタス」を5月末から始めると発表した。まずはiOS版のアプリリリースし、Android版のリリースも予定している。
マメタスの仕組みは、海外で広まりつつあるおつり投資サービスと同様、クレジットカードでの支払い額が、あらかじめ決められた額を下回った場合、その差額を投資に回すというもの。差額が発生した分は積み立てられ、翌月末に登録した銀行口座から引き落とされる。
差額のうち投資に回す額は、100円、500円、1,000円から選択可能。貯まった差額は、毎月1回、指定した銀行口座から引き落とされる。例えば、基準額を1,000円に設定し、クレジットカードで500円の支払いを行った場合、その差額の500円が投資に回される。
日本人の心理的ハードルを取り除き、投資が当たり前になる未来
日本人の総資産における現金・貯金の割合は52.3%と、半分以上の有資産を貯金に回している。それに対し、アメリカとヨーロッパはそれぞれ13.9%と34.8%。貯金の割合が多い状況は、そのまま日本人の性格に関わっている。
おつり投資のサービスは、働いてお金を増やすのではなく、お金に働いてもらうという価値観へと、多くの日本人を変える可能性がある。仕組みは一言で説明できるほどシンプル、買い物をする度に投資することになるので、意識せずとも投資という行為を当たり前に行うことになるからだ。
投資は、一部のお金に余裕のある人に与えられた権利だった。しかし「おつり投資」サービスがスタートすることにより、投資知識がない人にとっての身近な運用手段が1つ増え、投資が日常に浸透する未来は十分予想できる。