オフグリッド


オフグリッドとは、送電網による電力供給を必要としない独立した電力システムである。


今日の都市生活において電力は必要不可欠なエネルギーである。発電所で生み出された電力は各地に張り巡らされた電線を通じ、最終消費地である家庭や企業に送られる。オフグリッドは発電所から供給される電力を必要とせず、家庭や企業で独自に発電を行って電力の自給自足をめざすシステムである。


マクロから見るオフグリッドのメリットはインフラコストの削減である。電力インフラは都市を支える最重要基板のひとつであるが、都市の全てに電力を供給するインフラを整備するには莫大なコストがかかる。都市の電力需要を満たす大規模な電力を発電できる巨大発電所、末端まで張り巡らされた送電網、変電所など電力の安定供給を実現する各種設備、安全と安定を確保する人的資源など、電力を安定的に供給するのにかかるコストは大規模な都市になると数千億円以上の費用がかかる。


オフグリッドは大規模な送電網を必要としないため、インフラコストは大幅に低下する。発電設備も数百万戸を対象にした巨大発電所が不要となるため、各世帯や地区ごとに小型の発電設備を設置したとしてもコストが増大することはない。送電網がなければ変電設備なども不要になり、必要なのは点検などにかかる人的コストがメインとなる。実際には技術的な制約などもあり、必ずしもコストが大幅に低下するとは限らないが、インフラを大規模に削減できるのは都市計画にとって大きなプラスとなる。


ミクロから見るオフグリッドのメリットは各種リスクの低減である。巨大災害が発生し送電網や発電設備に被害が出ると大規模停電が発生するが、オフグリッドシステムがあればインフラ破壊による停電は回避できる。もちろん各世帯の発電設備に被害が出て停電が起きる可能性はあるが、被害の程度は世帯ごとにバラバラのため特定エリアが一斉停電する心配はない。非常用電源システムを設置しておけば、オフグリッドシステムに被害が出ても一定期間電力がキープできる。


資源リスクにもオフグリッドは強みを発揮する。現在最も普及しているオフグリッドは太陽光発電システムを用いたものであるが、太陽光という自然エネルギーは無料で使えるため原油価格の変動による電力料金値上げの影響を受けない。仮に石油資源の枯渇が深刻化したとしても、太陽光オフグリッドであればリスクを回避できるというメリットがある。


オフグリッドは新たな都市インフラのあり方として注目を集めている。これまで電力は大量生産大量消費が当たり前だったが、個別に発電ができるとなると都市計画は根本から変わる可能性を秘めている。社会やライフスタイルにも大きな影響を与えるシステムである。


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