理経は3月19日に、産学官連携によるVR(バーチャルリアリティ)システムの共同研究開発についての契約を締結したと発表した。同研究開発は、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター・東京理科大学・横浜市消防局と連携して行われる。
全国の消防本部の傾向として、知識や経験を積んだベテラン消防隊員が減少し、経験の浅い若年層の消防隊員の割合が急速に増加している。
一方で、火災件数は毎年6%から8%程度の減少傾向にあり、消防隊員が火災現場で経験を積むことが難しくなってきているという。
今回開発するVR消防教育訓練システムを活用し、限りなく実際の現場に近い環境下で経験値を積み、殉職や受傷事故を防止し、消防活動の質の向上を図る。
同システムでは、建物室内を実際に燃焼させて火災を再現し、温度を基軸とした熱の分布、煙の移動、火炎の挙動などを測定していく。
これにより、時間経過とともに推移していく火災現象を正確に捉えながら、消火活動との相互作用も含めて再現していくという。
また、実災害で消防隊はチームで行動するため、それぞれの隊員の視点を維持しながらチーム単位で活動できるようシステムを構築する。
これにより、VR空間内で複数人の活動したデータを記録しておくことで訓練実施後に反省点を確認することや経験値の高いベテラン隊員の行動を追体験することが可能になるという。
加えて、火災現場における消防隊の活動では、実際にどのような感覚情報を基に判断し行動しているのかなど、感覚再現デバイス(実際と同様な感覚を得ることができる装置)を用いてシミュレーション行っていくという。
感覚情報を通して得られる状況判断のコツや非言語的なノウハウを抽出していき、心理的および医学的観点からの影響についても研究するとのこと。
今回の開発成果をもとに、多様な現場環境を再現し、またハプティクスなど最先端の要素も取り込みながら、産学官のさらなる連携により受傷事故や殉職者の減少につながる技術開発・社会実装を行っていくとしている。