テスラの人気No.1の国、新車の半数近くは電気自動車

「モデル3」の登場で価格が手頃になったと話題のテスラの電気自動車。このテスラの電気自動車が最も売れている国を知っているだろうか。

2019年3月単体で新車販売に占める電気自動車の割合が60%近くに達した北欧ノルウェーだ。

同国の道路交通情報委員会(OFV)のデータによると、2019年通年の新車販売に占める電気自動車の割合は42%(前年は31%)。3月単月では58%、9月は54%などと、単月で見ると50〜60%近くになる場合もある。

これは電気自動車のみの割合で、ハイブリッド車を含めるとその割合は70〜80%に上ることもあるようだ。


ノルウェー・オスロ

絶対数ではガソリン車を含めた2019年の総合販売台数は約14万台、そのうち6万台が電気自動車だった。ノルウェーの自動車業界団体は、2020年の新車販売に占める電気自動車の割合は55〜60%になると見込んでいる。

これは世界各国と比較すると群を抜く数字だ。Statistaのまとめ(2018年)によると、新車販売に占める電気自動車の割合でノルウェーに次ぐのがアイスランドだが、その割合は19%で、ノルウェーの半分に満たない。

またスウェーデンで8%、オランダで6.7%、フィンランドで4.7%、中国で4.4%、ポルトガル3.4%など。米国や英国では2%台にとどまっている。

そのノルウェーで一番人気がテスラの電気自動車なのだ。OFVが発表した2019年新車販売台数ランキングによると、テスラ「モデル3」が1万5683台でトップ。次いで、2位には1万25台でフォルクスワーゲンの「Golf」がランクインした。

このほか、日産「LEAF(電気自動車)」(6127台)、アウディ「e-tron(電気自動車)」(5377台)、三菱「アウトランダー」(5048台)、トヨタ「RAV4」(4977台)、BMW「i3(電気自動車)」(4851台)などが人気だった。

日本では販売が伸び悩んでいるといわれる電気自動車だが、ノルウェーでは2025年までに新車販売における電気/ハイブリッド自動車の割合を100%にするという目標のもと、インフラ整備や免税措置などの優遇策が拡充され、さらに近年の環境意識の高まりも手伝い、電気自動車が急速に普及している。


ノルウェー・オスロ市内の電気自動車充電ステーション

フェリーも電動化、2026年には世界初「海のゼロ排出ゾーン」誕生か

ノルウェーは自動車だけでなく「交通・移動全般の電動化」を目指しており、さまざまな交通機関での電動化が進められている。

海に面した同国ではフェリーも主要な移動手段の1つ。ノルウェー南東部の湾オスロ・フィヨルドでは、5隻の電動フェリーが投入されることになっている。2022年の本格運航が計画されているが、2021年に一部で運航が開始されるとのこと。


オスロ・フィヨルド

また同国南西部の村フロムとグドヴァンゲンでは、2018年からすでに電動フェリー「Future of the Fjords号」が運航されており、年間700回に上るクルーズサービスを提供している。

さらに、ノルウェー西部にあるユネスコの世界遺産「ガイランゲルフィヨルド」では、2026年から既存燃料を使うフェリーの航行がいっさい禁止され、電動のフェリー/クルーズ船のみが航行を許可される。

ガイランゲルフィヨルドを訪れるクルーズ船観光客は年間30万人以上。クルーズ船の航行によって現地では大気汚染が深刻化しており、長らく対策が求められてきた。世界初の「海のゼロ排出ゾーン」が誕生するとして関心を集めている。


クルーズ船が行き交うガイランゲルフィヨルド

飛行機も電動化、サスティナブルな空港都市建設も

空の交通に関しても電動化が進められている。

ノルウェーの空港運営国有会社Avinorは、国内で運航される短距離フライトについて、2040年までに100%電動化すべきとの姿勢を見せ、取り組みを開始。

対象となるのは、フライト時間が1時間30分未満の路線。オスロ、ベルゲン、トロンヘイム、スタバンゲルなど同国の主要都市を結ぶ路線と他の北欧諸国・首都への路線が含まれる。

英ガーディアン紙などによると、Avinorは2025年に電動小型機を使ったフライトサービスを試験するための入札を計画。また2030年までに電動飛行機によるフライトサービスの本格始動を目指しているという。

一方、スカンジナビア航空は2019年5月に、エアバスと共同でハイブリッド/電動飛行機の研究を実施することを発表。

充電インフラをどう整備すべきか、その時間はどれくらいかかり、どのようなオペレーションが必要になるのか、など地上インフラへの影響に重点を置いた分析を行う。共同研究は2020年末まで実施される。

飛行機の電動化とともに進められているのが「持続可能な空港都市」の建設だ。

オスロ北東部にある街ウランサケル。オスロ空港が位置する街であるが、ここで新たな空港都市プロジェクトが進められている。

都市内で再生可能エネルギーによる発電を行い、市内の電力をまかなうだけでなく、余剰分は他の都市に配分。市内の移動はすべて電気自動車が使われることになるという。


オスロ空港

同プロジェクトウェブサイトによると、このオスロ空港都市はオスロ空港からシャトルバスで5分のところに位置し、200万人のノルウェー在住者が電車で2時間以内にリーチでき、さらに欧州各国からはフライトで2億人がリーチできるとのこと。

現在、オスロ空港は拡張工事中。ノルウェーは同都市プロジェクトによって、欧州におけるハブ競争で優位に立ちたい考えなのだろう。


オスロ空港都市のイメージ図(オスロ空港都市プロジェクトウェブサイトより)

ノルウェーの電動化取り組みとそのターゲットは、同国運輸通信省が2017年に発表した白書「国家交通計画2018〜2029」の中で示されている。自動車に関しては、2025年までに新車の100%を「ゼロ排出(電動化)」に、またバスも同年までにゼロ排出かバイオガス車にシフト。

物流に関しては、2030年までに大都市圏においてゼロ排出を目指す。公共機関で利用される乗り物も順次ゼロ排出かバイオ燃料にシフトし、2050年までにはすべての移動手段をゼロ排出にする計画だ。

これまで「環境先進国」と呼ばれてきたノルウェー。今後も電動化の動きで、そのイメージを強めていくことになるのだろう。

[文] 細谷元(Livit