1990年代半ばから2010年の間に生まれた層「Z世代」。2020年時点では10〜25歳がその範疇に入る。

5〜10年後に消費・経済活動の要となる世代といえるが、企業が同世代を魅了するには、これまでにないブランディングや取り組みを実施することが求められそうだ。

特にZ世代は気候変動やプラスチックごみなど環境問題に対する意識が高く、「サスティナブル」というキーワード/コンセプトがブランディングやイメージ戦略の必須要素になることが考えられる。

実際、ユニリーバ、P&G、ネスレ、コカ・コーラなどのグローバル企業はZ世代への訴求力を高めるために、プラスチック利用の削減やリサイクルの促進を本格化させることを表明しており、この動きは今後他の企業にも波及する可能性がある。

グローバル企業が無視できないZ世代の意識や消費行動とはどのようなものなのだろうか。


気候変動問題に対する学生デモ(カナダ・ケベック、2019年9月)

英語圏の大学生、環境問題を重要視

UNiDAYSが米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドの大学生1万6,000人以上を対象に実施した意識調査(2019年4月)では、英語圏のZ世代大学生の環境問題に対する意識の高さが浮き彫りになっている。

同調査で「最も重要と感じる問題」に関する質問では、環境問題は1位のヘルスケア(75%)、2位の教育コスト(71%)に次ぐ3番目にランクイン。実に70%の大学生が環境問題を最も重要な問題として捉えていることが明らかになった。

環境問題の中でも特にどの問題に対して懸念を持っているのかという質問では、「温暖化・気候変動」が87%で最大。次いで「汚染問題」85%、「リサイクル」73%、「動物福祉」65%、「自然災害」50%という結果となった。

気候変動、プラスチック汚染、リサイクル問題に対する意識の高さを示す数字であるが、これは同時にZ世代の消費行動のあり方を示唆するものとも見て取ることができる。実際、何かを購入するとき「エコフレンドリーな商品」を選ぶと回答した大学生は82%に上ることが判明している。

Z世代がけん引する「消費アクティビズム」

消費者調査大手ニールセンが2019年11月に公表したレポートでは「Z世代の消費アクティビズム」のインパクトに焦点が当てられている。

物心ついたときからスマホやソーシャルメディアに触れることが多く「テックサビー」や「デジタルネイティブ」と称されるZ世代は、これらのテクノロジーを駆使して価値観を広く共有することに長けている。ニールセンによると、この傾向は特に環境問題意識が高いZ世代に強く見られるという。

環境問題意識が高いZ世代(18〜24歳)は、スマホやソーシャルメディアで環境問題などに関するニュースを見る時間が他の同世代に比べ10%多いことが判明。ニュースの展開を追い、そのことについて意見や価値観をソーシャルメディアでシェアする傾向が強いというのだ。

また同調査は、情報・価値観共有だけでなく実際の行動がともなうことがZ世代の特徴だと指摘。世界中で数百万人の学生が参加した「スクールストライキ」や米国のZ世代人気Youtuberによる2,000万本植樹運動「Team Tree Project」はまさにその特徴をあらわす現象といえるだろう。


オーストラリアで実施された「スクールストライキ」(2019年3月)

スマホやソーシャルメディアによって状況共有のスピードと規模がこれまでにないほどの高まりを見せるなか、消費トレンドが拡散するスピードと規模も同様に高まっていることが考えられる。こうした状況下、グローバル企業にとって、ボイコットリスクは極力下げておきたいところだ。

GreenMatchの調査によると、Z世代の40%が環境問題への対応不足などを理由に特定ブランドの商品購入をやめたと回答。また49%がボイコットを検討していると回答している。

Z世代への訴求強化へ、グローバル企業各社の「サスティナブル」取り組み

実際に行動を起こすZ世代。スマホやソーシャルメディアを駆使して言語や国の壁を超えたグローバルトレンドを形成するその影響力は無視できない。

グローバル企業は、Z世代に対するブランドイメージや訴求力を強化する取り組みに本腰を入れはじめている。

BBCによると、年間70万トンのプラスチックを生み出すユニリーバは、Z世代を意識した取り組みの一環で、今後5年間でプラスチック量を半減させる計画を発表。リサイクルしたプラスチックの利用やプラスチック以外の材料の利用を進めていくという。

ユニリーバのアラン・ヨーペCEOはBBCの取材で、持続可能性と収益性は相反するものではないと指摘した上で、むしろ持続可能性がビジネスを成長させるだろうとの考えを強調。

また、ヨーペCEOはプラスチック問題は個別企業や個別産業による削減取り組みだけでなく、政府が関与し、リサイクル政策をより協調されたものにしていくことが重要だと主張。

消費者がプラスチックごみをより簡単に分別できるようなプラスチックラベルの標準化や制度が必要だと英国議会に働きかけている。


ユニリーバのパッケージコミットメント動画(YouTubeユニリーバチャンネルより)

一方、P&Gは2030年までにパッケージに使用するプラスチック量を50%削減する計画を発表。パッケージあたりのプラスチック量の削減やリサイクルプラスチックの利用を増やすことで、この目標を達成する考えだ。うまくいけばプラスチック利用を30万トン減らすことが可能になるという。

飲料大手ネスレもプラスチック削減のコミットメントを発表。同社は2025年までにパッケージに使用するプラスチックを100%リサイクル/リユース材料で代替する計画だ。また、2019年9月にスイス・ローザンヌに「パッケージ科学研究所」を開設。次世代パッケージ材料の研究を促進する構えだ。

かつてないほどにつながった世界。Z世代の価値観・行動原理の共有はどこまで広がるのか、また企業や政府に及ぼす影響はどれほど強まるのか。Z世代が生み出すグローバルトレンドとインパクト、その一挙一動から目が離せない。

文:細谷元(Livit