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世界の航空会社を評価する、オーストラリアのウェブサイト、AirlineRatings.comが、世界の旅客航空会社の中のトップを選ぶ、「エアライン・エクセレンス・アワード」の審査を行い、2019年11月、その頂点、「エアライン・オブ・ザ・イヤー2020」を発表した。
今回受賞したのは、ニュージーランド航空。ニュージーランド航空が同賞を受賞したのは今回で6度目だ。「エアライン・エクセレンス・アワード」が設けられた2013年以来、1回を除き、毎年トップとして表彰されたことになる。
同社はこの審査カテゴリーのすべてで首位を獲得している。カテゴリーの1つ、「環境面でのリーダーシップ」を正に証明するような取り組みも12月に発表になった。「食べられる」コーヒーカップの試験導入だ。
環境面において意欲的な目標を常に掲げ、それに向かって積極的に活動する姿勢は高い評価を受け、「エアライン・エクセレンス・アワード」以外にもさまざまな賞を受賞している。航空機を利用しての旅に批判の声が上がる昨今、環境に配慮する旅行者も一目置く、人気の航空会社だ。
写真左から、AirlineRatings.comのスティーブ・クリーディ氏、 ニュージーランド航空会長、デーム・テレーズ・ウォルシュ、最高経営責任者代行、ジェフ・マクドゥエル氏
© Air New Zealand Ltd.
目立つ、「環境面でのリーダーシップ」
AirlineRatings.comの「エアライン・エクセレンス・アワード」で、審査にあたり設けられた12カテゴリーには、「環境面でのリーダーシップ」や、「乗客のレビュー」「機内設備」「安全性」「保有機材の機齢」「収益性」などが含まれている。
審査員は7人で、米国、フランス、英国、豪州からの航空業界専門家だ。全員の業界歴を合わせると200年分にも及ぶそうで、審査の厳しさは想像に難くない。
今回同時に、航空会社トップ20も発表された。
うちトップ10を挙げると、1. ニュージーランド航空、2. シンガポール航空、3. 全日空、4. カンタス航空、5. キャセイパシフィック航空、6. エミレーツ航空、7. ヴァージンアトランティック航空、8. エバー航空、9. カタール航空、10. ヴァージンオーストラリアとなっている。
ニュージーランド航空が環境に配慮する企業としての地位を確立してきた背景を、AirlineRatings.comの編集長を務めるジェフリー・トーマス氏はCNNに説明する。保有機材の機齢については、退役機齢を引き下げ、過去10年間にわたり消費燃料を削減している。
削減率は業界平均より高く、約22%の削減に成功している。また、同社はバイオ燃料や、効率がより良い飛行ルートの開発、空港内の地上交通に電気自動車を採用するなど、業界の先導役を果たしていると評価する。
2020年3月からの機内安全ビデオには、ニュージーランドの自然を大切に考えるニュージーランド航空の思いが詰まっている
© Air New Zealand Ltd.
各賞受賞に値するサステナビリティへの努力
ニュージーランド航空の環境への配慮を高く評価しているのは、AirlineRatings.comだけではない。
2019年初めには、航空業界誌、『エア・トランスポート・ワールド(ATW)』 の「エアライン・インダストリー・アワード」で「エコ・エアライン・オブ・ザ・イヤー」にも輝いている。これは、「航空業界の『オスカー』」ともいわれる、権威あるアワードだ。
ニュージーランド航空の2019年10月までの1年間にわたるサステナビリティへの取り組みを振り返ると、ATWの「エコ・エアライン・オブ・ザ・イヤー」の受賞もうなづける。
まず気候変動への直接的影響を軽減する取り組み。ゲートで機体を地上電力に接続し、燃料2,500トン以上、二酸化炭素排出量8,000トン以上を削減するに至っている。
これを含め、全社的な二酸化炭素排出削減量は計1万5,000トンに上った。保有機材の機齢は約7年。最先端技術を取り入れる新型機材に頻繁に買い替えることで、二酸化炭素の排出をより抑えることができる。
また顧客の貢献も見逃せない。カーボンオフセットプログラム、「フライニュートラル」を通じ、約18万人以上の利用者が自主的にカーボンオフセットしている。
利用者数は2018年に比べ、40%も増加。1,000万NZドル(約7憶2,000万円)相当のカーボンオフセットを行ったことを意味する。「フライニュートラル」は、ニュージーランド全国に散らばる原生林保護を支援している。
同社社員の出張時に、同プログラムを利用したオフセットが義務付けられているのは言うまでもない。
廃棄物削減への取り組み、「プロジェクト・グリーン」においては、オークランド国際空港に到着する国際線の便からのアイテム、1,130万個、計120トンを再利用・リサイクルしている。同様にプラスチックごみの削減にも意欲的だ。
水のボトル、アイマスクや食品個包装などに使われる使い捨てプラスチックはすでに全面除去されている。
プラスチックカップ2,900万個はリサイクルへ、コーヒーカップとふた1,550万個、マドラー710万本、プラスチック製の袋150万枚、チーズトレイ55万個を環境負荷が少ない代替品に切り替えている。
同社のサステナビリティへの努力は、顧客に触発されている面もある。機内にマイボトルを持ち込んだり、1つのプラスチックカップを何度も利用したりする乗客がいるのだ。
「食べられる」カップは、コーヒーカップにも、デザートボウルにも利用可能だ
© Air New Zealand Ltd.
遊び心ある、「食べられる」カップの試験導入
2019年12月には、環境負荷が少ない代替品の1つとして、「食べられる」コーヒーカップの使用を実験的に開始し、国内外の話題をさらった。
コーヒーがもれることはなく、デザートボウルにも使われ、機能性はプラスチック製のカップに勝るとも劣らない。使用後食べずに捨てたとしても、生分解は容易に可能だ。
このカップを創り出したのは、国内のスタートアップ企業、トゥワイスだ。原料はまるでケーキかクッキーのようで、小麦粉、砂糖、卵だ。今のところはバニラ味に限定されており、ニュージーランド航空が使うものも同様だ。使用後食べた人の感想は「おいしい」とのこと。
子どもが喜んで食べているとの乗客からの報告もSNSに掲載されている。トゥワイスは今後、チョコレート味やグルテンフリーのカップの製造に取り組むそうだ。
ニュージーランド航空は、1年間に800万杯以上のコーヒーを乗客に提供しており、先ごろ、カップを紙とトウモロコシを原料とするものに切り替えている。
ごみとして廃棄されるカップを1つも出さないという同社の大きな目標達成に、植物由来のカップ同様、「食べられる」カップも一役買うことになりそうだ。
ニュージーランド航空の機内安全ビデオは、オールブラックスを採用したり、映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズとコラボしたりし、新しいものが発表される度に注目の的だ。
同社にとり、機内安全ビデオは、乗客が安全な空の旅を楽しむためなのはもちろん、ニュージーランドの魅力、さらには航空会社のアイデンティティーを伝える役割もある。
2020年3月に登場が予定されている新ビデオは、少女が自然美あふれるニュージーランド各地を旅する物語仕立て。これは、サステナビリティに対するニュージーランド航空の義務・責任・そして献身の表れであり、ニュージーランドを訪れる人へのメッセージなのだ。
文:クローディアー真理
編集:岡徳之(Livit)