⼈とAIで成果を最⼤化する時代へ。採⽤⽀援500社超のuloqoが語る、AI時代の採用・組織戦略
INDEX

経済成⻑を⽀えてきた多くの企業は、これまで「⼈を採⽤し、組織を拡⼤すること」で事業成⻑を実現してきた。
しかし現在、⽇本では少⼦⾼齢化による労働⼈⼝減少に加え、⼈材流動化の加速により、必要な⼈材を採⽤し続けること⾃体が難しくなっている。さらにAIの急速な普及は、企業に新たな経営課題をもたらした。⼈員を増やすだけではなく「⼈とAIが協働し、⽣産性を高める組織づくり」が求められている。
求職者の間では、企業研究やエントリーシートの作成、面接対策などにAIを活用することは珍しくない。一方で、企業側ではAI活用が採用業務や組織運営まで十分に浸透しているとは、必ずしも言い切れない。AI時代の採用競争では、求職者だけでなく企業側もAIを使いこなすことが、新たな競争力になりつつある。
500社を超える採⽤⽀援を⾏ってきた株式会社uloqoは、こうした変化の最前線を⾒続けてきた企業の⼀つだ。採⽤代行にとどまらず、AIの活⽤や採⽤の内製化⽀援にも取り組む同社は、これからの企業に必要なのは「AIを前提とした組織設計力」だと語る。AI時代における採⽤と組織戦略について、同社代表取締役の関川 懸介⽒に話を聞いた。
- <企業概要>
- 株式会社uloqo
- 採用代行(RPO)、採用コンサルティング、AI採用課題診断、AI×採用内製化支援など、企業の採用活動を戦略策定から実行改善まで一気通貫で支援。
- 企業公式サイト: https://uloqo.net/
「選ばれる企業」になるために必要な視点
採用市場の変化について尋ねると、関川氏は「最も大きな変化は、人が採用できない状況がより深刻になっていること」と切り出した。
転職が当たり前になり、人材の流動性が高まったこと自体は数年前からの傾向だ。しかし現在は人材不足が進み、企業間の採用競争はかつてないほど激しくなっているという。
「応募がないことも課題ですが、それに加えて、一人の候補者を複数の企業が取り合う競合性が高まっています。せっかく応募してもらえて採用したいと思っても、辞退され入社へと至らない。候補者が複数の選択肢を持ち、その中から企業を選ぶ時代となっています」

かつては企業が応募者を選考する立場だった。しかし今は立場が逆転したといえるだろう。関川氏は「企業が選ぶ側だったのは昔の話」と振り返る。
「この事業を始めて8年ほどになりますが、その間、採用市場は求職者が企業を選ぶものでした。だからこそ“選ばれる企業”にならなければいけません。しかし、そのために何を変えるべきかを正しく理解できていない企業が多いと思います」
採用活動に苦戦する背景には、単純な人材不足だけではなく、採用活動そのものが複雑になっている点も大きい。求められる職種は年々多様化しており、現在ではデジタル領域のマーケティングやPR、AIアーキテクトやAIエンジニアなど、高い専門性を持つ人材を採用する機会が増えている。採用チャネルやツールも増え続けており、自社だけの経験やノウハウで最適な採用戦略を描くのは難しい状況だ。
「採用活動がうまくいかないのは、市場そのものが高度化しているからです。競合企業がさまざまな方法で人材にアプローチするなか、自社だけの視点で活動しても勝ち筋は見出せません。多くの企業に共通しているのは、採用活動に関する知見や、自社分析・他社分析が不足していることです」
AIが変える、採用活動の現場と企業競争力
こうした状況を踏まえ、uloqoでは採用支援の現場にいち早くAIを活用している。これまで500社以上を支援してきた知見をAIに学習させ、企業ごとの採用状況や各種データを分析。「なぜ採用できないのか」というボトルネックを可視化し、その改善策まで含めて伴走支援しているという。AIに対して「業務効率化のためのツール」というイメージを持つ人も多いが、関川氏はそれだけではないと話す。
「採用活動はとても労働集約的な業務です。そのため日程調整やスカウトなどの定型業務はAIに任せ、人はより本質的な業務に注力すべきだと考えています。
また、他社の採用活動や動向、年収水準などは把握しづらく、企業ごとに閉じた活動になり、自社のポジショニングも推測に頼っていた部分がありました。しかし、AIが情報を収集・分析することで、ある程度正しいデータを導き出すことができます。そのうえで自社に合った採用戦略を立てることができるため、より効率的かつ効果的な採用活動につながります。採用活動においてAIを活用することは、もう当たり前の時代です」

実際に、現在のAIでは、スカウトメールの作成や候補者の分析、採用市場のリサーチ、面接日程の調整など、多くの採用業務をカバーできるようになっている。
「日程調整はすべて自動化できますし、書類選考もある程度自動化できます。どのような人材に、どのような内容でスカウトを送るかもAIが判断できます。人事担当者が時間をかけてきた業務の多くは、すでにAIで代替できる環境が整っているのです」
一方で、企業によってAI活用の状況には大きな差があるという。
「AIを活用することで、以前の3~4倍ほどの生産性で業務をこなす人もいます。しかし企業によっては、AIのガイドラインが整備されていない、制約が多くて十分に活用できていないなどの課題があります」
こうした差は、今後の採用力にも直結する可能性がある。特にデジタルネイティブな若い世代にとって、AIを使うことは特別なことではないからだ。
uloqoが行った「AI活用と転職に関する意識調査」では、既存の業務フローやツールの中にAIを組み込んで自動化している人材の約2人に1人(48.6%)が、転職先選びで「企業のAI環境」を重視していることが明らかになっている。
さらに、複数の異なるAIや外部データを連携させ、高度に運用している人材の6割以上(63.6%)が、企業のAI活用の遅れを理由に「実際に応募・選考を見送った経験あり」と回答。AIを積極的に活用している企業ほど、優秀な求職者に選ばれやすくなることがうかがえる。
AI時代に正しく理解される企業へ。GEOという新戦略
AIの進化によって変わるのは、企業側の採用活動だけではない。求職者側の情報収集の方法も変わり始めている。
これまではコーポレートサイトや採用サイト、口コミサイトなどを見比べながら情報収集をしていた。しかし現在は、AIに企業名を入力し、事業内容や特徴、職場環境などを要約してもらう求職者が増えている。AIが企業情報を整理し、求職者へ届ける“フィルター”の役割を担っているのだ。
こうした変化のなかで、これからは企業が求職者に見つけてもらうだけでなく、AIに正しく理解してもらう対策が不可欠だ。
「AIはインターネット上に存在するさまざまな情報をもとに推論します。つまり、企業に関する情報が十分に存在していなければ、AIはその企業について適切な回答ができません。例えば、求人票に仕事内容だけが簡潔に書かれている企業と、社員インタビューや顧客事例、事業の強みまで丁寧に発信している企業では、AIが読み取れる情報量に差がつきます」
こうした背景から注目されているのが、GEO(Generative Engine Optimization/生成エンジン最適化)だ。検索エンジン向けに情報を最適化するSEOに対し、GEOはAIに自社の情報を適切に参照してもらう対策である。AIが参照するのは求人票だけではない。コーポレートサイトや採用サイト、プレスリリース、メディア上で公開されている記事、社員によるSNS発信、さらには第三者による評価など、AIはさまざまな情報をもとに企業を理解・評価する。
「“良い企業である”というブランドが生まれる背景を分析すると、活動履歴への信頼性や権威性があることが重要だとわかります。それは主にその企業の発信やそれをみた生活者の反応といったネット上の情報から判断されていると思います。自社が何を提供できる会社なのか、どのような価値を持ち、どのような存在なのかを世の中に適切に発信していくことが大切です」
AIを活用することと、企業情報をAIに正しく伝えること。その両方が、これからの採用ブランディングや企業価値を左右する新たな競争力になろうとしている。
AI時代に求められる組織と人材
では、企業はAI時代の採用活動や組織づくりにどのように向き合うべきなのか。関川氏が繰り返し強調したのは、AIを導入することではなく「AIを前提に仕事や組織を設計し、推進すること」の重要性だ。
「AIを前提に仕事を変えていくためには、まず自分の業務に対して正しい問いを立てられることが重要です。プロンプトの精度も、結局はその人の問いを立てる力や問題解決力に依存します。実装しやすい業務の効率化から進めていくのは自然な流れですが、個人が持つべきマインドは、AIで自分の仕事の品質や価値をどう高めていくかを考えることです」

AIを使いこなせる人材を育成するには、単にツールの使い方を教えるだけでは足りない。自ら課題を発見し、AIと役割分担しながら業務を再設計する力が求められる。一方で、組織としてAI活用を進めるには、現場任せでは限界があるという。
「成功している企業は、経営トップが『AIを前提に会社を変える』という意思決定をしています。そのうえでミドルマネジメントが中心となり、現場へ落とし込んでいる傾向があります」
担当者に一任してしまう企業では、部門間の調整に多くの時間を費やし、AI活用が進まなくなるケースも少なくないという。そのうえで、現場の社員にも求められる姿勢がある。
「定型化された業務ほど疑問を持たずに進めてしまっていることが多いですが、会社からの指示やレールが引かれるのを待つのではなく、まずは可能な範囲で自らAIを触ってみること。その積み重ねにより会社全体のAI活用の浸透率が変わってくるはずです」
採用市場は、企業が人材を選ぶ時代から、人材に選ばれる時代へと変わった。そして今、その変化は一歩進み、AIに理解され、AIを使いこなす企業が選ばれる時代へと移り変わりつつある。
AIを前提に業務を見直すこと。AIに企業価値を正しく伝えること。そしてAIと協働できる組織と人材を育てること——。AI時代の採用競争では、この三つを備えた企業が「選ばれる企業」になっていくだろう。
取材・文:安海 まりこ
写真:小笠原 大介