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個人の「走る楽しさ」を次世代の「社会インフラ」へ Runtripが描く持続可能なウェルビーイング

新型コロナウイルスの流行を経てテレワークが定着した現代、運動不足に伴う生活習慣病は深刻な社会問題となっている。

筑波大学大学院の調査によると、テレワークへ切り替えた社員は、1日の平均歩数が29%減少しており、中には歩数が70%近く減ったケースも確認されているという。

人生100年時代を見据えた「長寿社会」への移行に伴い、将来の健康リスクに不安も感じている人も少なくない。

こうした中、従来の「病気になってからの対処」ではなく、心身ともに満たされた状態を自律的に目指す「ウェルビーイングの向上」という新たなアプローチが注目されている。

その実装例の1つとして、月額330円というコーヒー1杯にも満たない金額で、人の行動と健康状態、さらには社会の構造すら変えようとするサブスクリプションサービス「Runtrip PREMIUM Plus」が2026年1月15日に始動した。

ランニングアプリ「Runtrip」を展開するRuntripと住友生命が共創したこのサービスは、“走る習慣”を起点にウェルビーイングの向上を目指すものだ。

なぜ、人は走り出すのか。そして小さな行動変容が、社会をどこまで変えられるのか。本記事では、Runtrip代表取締役・大森 英一郎氏に、ウェルビーイング向上を阻む壁と、その先に見据える社会の姿を聞いた。

「健康のために頑張る」は、なぜ続かないのか

このサービスは提供開始以来、静かに、しかし確実に広がりを見せている。その理由は、「楽しんでいたら、いつの間にか健康になっていた」という思想を、独自の「リワード」と「コミュニティ」で実装した点にある。

本サービスは、住友生命の健康増進型保険「Vitality」のプログラムの一部を保険契約と切り離して単独利用できる「Vitality スマート」と、ランニング体験を拡張する「Runtrip PREMIUM」を統合したものだ。

本来は複数サービスを組み合わせた内容だが、本サービスでは、より多くの人が健康行動へアクセスできるよう、継続しやすい価格帯を採用したという。導入ハードルを下げる設計は、ユーザーからも一定の支持を集めている。

しかし、大森氏が目指しているのは、単なるフィットネスアプリの低価格化ではない。日々の行動を、経済的・社会的価値に変換するプラットフォームだと次のように語る。

「健康が目的になった瞬間、人は続かなくなります。健康のために頑張ったり、何かを我慢するのではなく、楽しいから走る。その状態こそが、その人らしい“Being”であり、ウェルビーイングの本質だと思っています」

「運動しなければならない」という健康への義務感を、「やりたくなる行動」へと再設計する。

大森氏によれば、以前は「走ることで幸せになれる」と伝えても懐疑的に受け取られることが少なくなかったという。しかし近年、ウェルビーイングという概念が社会に浸透したことで、Runtripが掲げてきた「走る楽しさ」や「幸福との結びつき」が、ようやく受け入れられ始めていると感じている。

一方で、ウェルビーイングという言葉や価値観は社会に浸透しつつあるものの、それが日々の行動変容にまで結びついているとは言い難い。運動習慣は続かず、生活習慣も簡単には変わらない。その理由はシンプルだ。

大森氏は、その理由を「人は“我慢”では動き続けられないから」だと捉えている。だからこそRuntripが掲げる思想は明確だ。健康は目指すものではない。楽しんだ結果として、後からついてくるもの。それが大森氏の示すウェルビーイングの形である。

行動を変えるのは「意志」ではなく「報酬設計」である

従来の保険は、病気になった後に給付される“事後対応型”が主流だった。対して、「Runtrip PREMIUM Plus」が目指すのは、病気を未然に防ぐ「健康行動」そのものに価値を与えることだ。

その根底には、行動経済学の考え方がある。人は「将来の健康」という遠い利益のためには継続しづらいが、「走れば(歩けば)ポイントが貯まる」「目標達成でカフェのドリンクチケットがもらえる」といった直近の “報酬設計”があれば、日々の行動を習慣化しやすくなる。

実際、住友生命の「Vitality」会員データでは、最高ランクの「ゴールド」会員は、初期ランク「ブルー」会員と比較して、入院率や死亡率が低い傾向が見られている(※1)。これは個人の健康意識の差を超え、行動を変える適切な「設計」が、未来のリスクを低減させている可能性を示唆している。

リワード・寄付・コミュニティ──「3つの価値」が、ランニングを「社会のインフラ」に変える

「Runtrip PREMIUM Plus」の特長は、ユーザーが健康行動を“続けたくなる”複数の価値を組み合わせている点にある。具体的には、以下の3つの価値設計が軸になっている。

(1)経済的価値(リワード):歩数や走行距離に応じ、ドリンクチケット等の特典を付与。

(2)社会的価値(ドネーション):獲得したリワードを寄付にも活用可能。なお、累計寄付額は約10億円にのぼるという(※2)

(3)情緒的価値(コミュニティ):ユーザー同士が「Nice Run!」を送り合えるコミュニティ機能を実装。孤独な努力を共有体験に変える。

なぜ3つの仕組みをここまで重視するのか。その背景には、「健康は正論だけでは続かない」という、大森氏自身の実感がある。

大森氏によれば、数万件のデータ分析から、行動変容には「リワード(始める理由)」と「コミュニティ(続ける理由)」の双方が不可欠であることが分かったという。

「たとえば、寒い朝に頑張って走った投稿に『Nice Run!』が届くだけでも、“ちゃんと誰かが見てくれている”と感じられる。それが次も走ろうという気持ちにつながっていきます」

この仕組みが社会全体に波及した時、何が起きるのか。大森氏はランニングという行為そのものが社会を支える“インフラ”になり得ると期待を寄せ、次のように語る。

「運動習慣が広がれば、将来的な医療費や社会保障費の抑制につながります。また、コミュニティがあることで、人との接点や地域とのつながりも生まれる。ランニングは単なる趣味ではなく、社会を支えるインフラの1つになり得ると思っています。

私自身、子どもを育てる一人の父親として、医療費や社会保障の負担を次世代へそのまま残したくないという思いがあります。

自分たちの世代が、楽しみながら健康でいることが、結果的に子どもたちの明るい未来にもつながっていく。その仕組みを、このサービスを通じて形にしていきたいと思っています」

「意志」に頼らない設計が、ウェルビーイングを“社会のOS”に変える

ウェルビーイングな個人、そして社会を実現する鍵は、個人の意志ではなく行動の“設計”にある。大森氏が描く未来は、走ることが特別な努力ではなく、自分を好きになるための「日常の贅沢」として定着した社会だ。

楽しさを起点に個人の「Being」が充実し、その積み重ねが医療費削減やコミュニティの再生という形で社会をより良く変えていく。大森氏は、そんな“ウェルビーイングの循環”と表現する。

月額330円から始まるこの「一歩」は、個人の健康を超え、社会全体の幸福度を底上げするインフラを作るという挑戦でもある。ウェルビーイングを社会に実装していくうえで、大きな示唆となるだろう。

■関連施設「Runtrip BASE YOYOGI PARK 」概要

代々木公園のRuntripの「ランステ」:ランナーのための“クラブハウス”

ランナーが自然と集うクラブハウス型のランニングステーション。シャワーやロッカーを完備し、“ウェルネス“をテーマにしたカフェスタンドを併設。コーヒーやオリジナルカレーを楽しめるほか、バーカウンターではクラフトビールも提供している。

営業時間
平日/土祝前日7:00~22:00(最終受付21:00) 
日・祝日7:00~20:00(最終受付19:00)

店舗住所
東京都渋谷区神南1丁目1番1号 3F

■Runtrip BASE YOYOGI PARK内併設ストア概要

「Runtrip BASE YOYOGI PARK」内に併設された、Runtrip Storeのリアル店舗。ランニングシューズやサングラス、店舗限定Runtripオリジナルアイテムなどラインアップ。

営業時間
土/日7:00〜17:00

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