大京「住まいのサステナビリティ白書」が示す、日本人の新しい暮らし方
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価値観の多様化や気候変動を背景に、株式会社大京は、生活者の“住まい観”を調査した「住まいのサステナビリティ白書2025」を公開した。
かつては「仕事中心」だと語られてきた日本人のライフスタイルだが、調査結果を見ると、その姿は大きく変化していることがわかる。また、働き方の変容や在宅時間の増加により、住まいに求められる役割そのものが見直されているようだ。
本記事では、同白書の内容をもとに、日本人の“住まい観”がどのように変わりつつあるのかを読み解いていく。
住まいは“働く環境の一部”へと変化
生活の価値観について、「ワークライフバランス」と「仕事中心の生活」どちらを重視するかを尋ねた質問では、約9割が「ワークライフバランスを重視する」と回答した。
「日本人は仕事人間が多い」とするイメージは、戦後から高度経済成長期にかけて形成された、いわば過去のステレオタイプといえるだろう。近年は、働き方改革や価値観の多様化を背景に、ワークライフバランスを前提としたライフスタイルが主流になりつつある。

コロナ禍をきっかけに加速した在宅勤務やリモートワークも、新しい働き方として定着している。調査では「在宅・リモートワーク派」が42.3%、「通勤派」が57.7%と、やや「通勤派」が多いものの、働き方の価値観は二分化しつつある様子が見て取れる。
こうした変化のなかで、住まいは休息の場や家族団らんの場にとどまらず、“働く環境の一部”として再定義されはじめているのだ。
求められるのは、快適かつ省エネな住環境
続いて、気候変動に伴う住まいのトレンドを見ていく。
住まいを選ぶ際に、「酷暑・猛暑などの極端な気温上昇を考慮する」と回答した人は82.3%にのぼった。

また、日本人の約9割(89.7%)が「夏・冬が長くなった」と感じており、「異常気象の影響で、エアコンの使用時間・使用期間が増えたと感じている」も約9割(89.6%)に達している。
さらに、「異常気象の影響で、外出を控え、自宅で過ごす時間が増えたと感じる」は約7割(71.2%)、「生活費の負担軽減のため、省エネ性能の高い住まいへの関心が高まった」も7割超(70.1%)となった。

働き方の変容による「在宅・リモートワーク派」の増加に加え、気候変動によって在宅時間がさらに増えている実態が浮かび上がった。調査結果からは、より快適かつ省エネな住環境へのニーズが高まっていることが読み取れる。
幸福度を左右する「住まいのサステナビリティ」
大京では、住まいの価値を高めるサステナビリティの要素として、「安全安心・快適な暮らしができる」「地域社会とつながることができる」「環境に配慮されている」の3項目を設定している。調査では、9割以上(93.4%)が「安全安心・快適な暮らしができる」を最も重視すると回答した。

さらに、生活に対する幸福度・充実度・満足感・豊かさについて分析した結果、住まい選びにおいてこの3項目(安全安心・快適/地域社会とのつながり/環境配慮)を重視している人が、最も高い幸福度を示していることが明らかになった。

サステナブルな要素を評価する人ほど幸福感が高い——。住まいの性能や環境配慮は、単なる付加価値ではなく、生活の質そのものを左右する要素になりつつある。
サステナビリティという言葉は、環境意識の高い一部の層のものと捉えられがちだ。しかし本白書の結果は、サステナビリティが日常的な生活実感と結びついていることを示している。省エネ性能や災害への備え、地域とのつながりといった要素は、家で過ごす時間が増えた現代において、現実的な価値として意識されはじめているのではないだろうか。
文:安海 まりこ