SNSは「私」というブランディングの場|中川紅葉のB面
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新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第15回に登場するのは、中川紅葉さん。B面では、ミスコン出場時からSNSを通じて、モデルやタレントといったキャリアを切り拓いてきた中川さんのクリエイターとしての価値観に迫ります。
- 【中川紅葉】
- 2000年9月1日生まれ、埼玉県出身。
現在、青山学院大学文学部に在籍。
幼少期からフィンスイミングに打ち込み、 小・中学生時代にはアジア選手権で日本アジアジュニアメンバーとして入賞するなど、 全国レベルで活躍した経歴を持つ。また、父親の影響で音楽に魅了されドラムを習得し、バンドメンバーとして活動した経験も持つ。
趣味は読書とカメラ。2019年、大学1年生で参加した 「FRESH CAMPUS CONTEST 2019」でグランプリを獲得したことをきっかけに芸能界入り。 ABEMAの人気恋愛リアリティーショー「花束とオオカミちゃんには騙されない」への出演をはじめ、 現在はファッション誌『Ray』の専属モデルとして活動するほか、ドラマ、舞台、音楽、SNS など幅広い分野で活躍の場を広げている。
- YouTube: https://www.youtube.com/@kureha_nakagawa
- Instagram: https://www.instagram.com/kureha_nakagawa/
- X: https://x.com/kureha_nakagawa
- TikTok: https://www.tiktok.com/@kureha.nakagawa
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いい会社、いい人が作っているものを選びたい|中川紅葉のA面
「私はこうだ」言葉を通じて自分らしさを伝えたい
ーSNSアカウントのユーザー層を教えてください(年齢層、男女比など)。
年齢層は、私と同世代から少し上の25~34歳の方が最も多いです。中でもTikTokは、他のSNSと比べて若年層の割合が高く、以前出演していたABEMAの恋愛リアリティーショーをきっかけに知ってくださった方も多い印象です。ミスコン出身ということもあり、当初はもう少し上の世代の方の割合が高かったのですが、最近は徐々に自分と近い世代の方が増えてきていると感じています。男女比はTikTokは半々くらい、Instagramは男性が女性よりやや多いです。
ーアカウントを運営する上で最も重要だと考えていることは何ですか?
一番は嘘をつかないことですね。必ず後で自分に返ってくるので、これだけはしないようにしています。
あと、媚びを売ったり、女性らしさをウリにしたりするような発信はあまり好きではないので、そういうこともしないようにしていて。私の外見から、清楚で女性らしい人が好きな男性ファンがつきやすいのですが、実際の私はそういうタイプではないので、「私はこうだ」ということをまっすぐに伝えることも意識しています。
でも、それを写真などのSNSの投稿だけで伝えるのがなかなか難しいんですよね。Instagramでライブ配信をすると、「思っていた感じと違った」とフォローを外されることが結構あるんですよ。でも、中身も含めて私を応援してくれる人は男性でも女性でも離れないと思っているので、気にせず発信しています。

ー「私はこうだ」ということを伝えるための具体的な戦略を教えてください。
考えや思いをはっきり言葉にして発信して、意思がある人だと思ってもらえるようにしています。例えば、事実と異なるコメントがあったら「それは違います」と伝えるとか。あと、ラジオで自分の考えを話したり、XやInstagramではなるべく文章を書いたりもしています。
芸能活動では、プライベートや個人的な考えはあまり発信せずに余白を残すべきだという意見もありますが、私はファン向けの有料コンテンツと、SNSのような無料で誰でも見られるものとの差別化さえできていれば、全部さらけ出してもいいと思っているんです。
“温度感”のあるコミュニケーションがSNSの醍醐味
ー視聴者との繋がりを強化するために特に重要視していることは何ですか?
あったことをなるべく早く、鮮度の高い状態で投稿することです。一ヶ月くらい期間をあけて投稿する方もいると思いますが、その日の感情はすぐに忘れちゃいますし、時間が経ってから載せるとフォロワーにもなんとなく温度差が伝わっちゃうと思うんですよね。だから、場所が特定されない範囲で、当日か翌日には投稿するようにしています。
実際、そのほうがファンの方に喜んでもらえることも多いんですよ。先日、北海道に仕事で行った時に投稿したら、「北海道にいるんですね!」とコメントで盛り上がったり、DMでおすすめのお店を送ってくれる方もいたりして。実際にそのお店に行って、その写真をSNSに投稿することもありました。そういうコミュニケーションを取れるのがSNSの醍醐味だと思いますし、人間味を感じてもらうことにもつながると思うんです。
ーエンゲージメントを高めるために行っている具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?
正直、“エンゲージメントを高めるための小技”みたいなものが透けて見えちゃうのが恥ずかしくて、あまりやりたくないんです。本来であればコメントを促したりする方がいいと思うんですけど、「わかる人にはわかる」くらいの距離感でやっています。
例えば、一番最初のコメントに「いいね」をつけたり、ハーフアップの髪型を褒めてくれるコメントが多かったら、その髪型にするようにしたり。DMやコメントには返信しないのですが、いつも見てくれている人にわかるような形でコミュニケーションを取るようにしています。
SNSと楽に付き合うには、自分らしさを忘れないこと
ー投稿するコンテンツのネタを選ぶ際の基準は何ですか?
自分が本当に「載せたい」と思うものかどうかです。
以前はライフスタイルやダイエットなど、フォロワーを増やすための投稿を意識していた時期もありました。でも、だんだん数字を取るためだけの投稿になってしまって…。「ウケがいいから」という理由だけで、ほかに好きな服があっても清楚系の洋服を選ぶようになったりして、自分がなくなっていく感覚があったんですよね。それで、SNSを辞めたいと本気で悩んだ時期もありました。
でも、辞めるくらいなら自分の好きなものだけを載せようと思って、そうするようにしてからすごく楽になったんです。それからは、自分軸で投稿するようにしています。
それに、仕事関係の投稿をすることも多いですし、普段の投稿と毛色の異なる案件が来ることもあります。一つのジャンルに絞って投稿をしていると、そういう仕事を受けにくくもなってしまうので、アカウントを通して「私」というブランディングをしています。

ー視聴者の関心やトレンドをどのように把握し、反映していますか?
いただいたコメントやDMはすべて読んでいますし、Xでもエゴサーチをしています。返信はしませんが、そこで見たファンの声はできる範囲で反映するようにしています。例えば、「こういうコーディネートが見たい」というコメントがあれば、ファンの方がいるイベントでそのコーディネートをすることもあります。
ただ、同時にアンチコメントも直接目にすることになるんですよね。でも、自分で発信した以上、その反応は自分で見た方がいいと思うので、そういうコメントも含めてチェックしています。
ーコンテンツ制作のアイデアを得るためにどのような活動をしていますか?
1日の終わりにTikTokを見て、どういう子が何をして話題になっているかをざっとチェックします。例えば、前までは全身が映ってる投稿がバズってたけど、最近は近距離のものが多いとか、ショートドラマはこういう展開がウケてるのかなとか、そういう傾向を見ています。
XとInstagramでは、芸能人の方々がどうSNSと向き合っているかもチェックしています。それがSNSを動かす上での指標になったり、SNSを続けるモチベーションになったりするんです。
自分自身や企業の熱意がコラボのカギ
ーコラボしたい、タイアップしたいブランドや企業はありますか?
adidasとY-3(ワイスリー)です。
ーその理由を教えてください。
私の大好きなブランドだからです。自分の見た目とギャップがあることも分かっているんですが、本来私が好きなのはこういう系統のブランドなんです。だから、自分の素というか、本当に好きなものが認められたらいいなと思います。
それに、祖母や母も知っているような有名なブランドとのタイアップは、すごく喜んでもらえるんです。だから、そういうブランドと仕事している姿が見せられたら嬉しいですね。
ーコラボ先の企業、サービスを選ぶ際の基準は何ですか?
ご連絡をいただいた際に、どれだけ想いを込めてご相談いただいているかを大切にしています。「ぜひ一緒に取り組みたい」という気持ちが伝わってくるご提案だと、とても嬉しく感じますし、前向きに検討させていただきたいと思います。
だから、問い合わせのメールは全て私も目を通しますし、会社のホームページも見て、どういう想いで声をかけてくださっているのかはしっかり確認します。逆に、私のブランディングとは少し違ったとしても、熱量が高かったらできる限りお受けしたいとも思います。

ー過去のコラボレーションで特に成功したと感じるプロジェクトはありますか?
今年初めてご一緒させていただいた、DIOR(ディオール)とのタイアップです。ハイブランドとのタイアップは初めてで、ファンの方から「すごい!」「買いました」といったお声をたくさんいただきました。
ーその成功の秘訣は何だと思いますか?
私自身がずっと好きで使ってきたブランドで、「このブランドとタイアップできるんだ」という嬉しさもありましたし、誕生日などにもらう特別なもののイメージもあったので、特に思い入れがあったからだと思います。SNSを辞めずに続けてきて良かったと思える機会にもなり、私にとって印象に残るお仕事でした。
自分の活躍の場を決め、広げていきたい
ー今後取り組みたいと考えている新しいジャンルやテーマにはどのようなものがありますか?
これからは演技にも力を入れたいですね。これまでは、「一般企業への就職を考えていたような私がいきなり演技の世界に入っていいのか」となかなか勇気が出なかったんです。今はモデル業が主軸になっていますが、そこに「俳優」という肩書も付け加えられるようになりたいと思っています。
ーそれに挑戦したいと考えている理由は何ですか?
祖母が「大河ドラマや朝ドラに出てほしい」とずっと言っているので、いつかそんな姿を見せたいと思ってるんです。あと、最終オーディションまで行って落ちてしまったドラマが、後々すごく話題になっていたことがあって。それを見ながら「私はこれに落ちちゃったんだな」と悔しい思いをしたこともあり、その壁を越えたいと思っています。
実は、今までいろいろなお仕事をさせていただいてきましたが、自分の中で「この職業をしています」と自信を持って言えるようなものがないとも感じていたんです。でも、2025年はたくさんモデル業をさせていただいて、雑誌の専属も決まり、ようやく「モデルをしている」と言ってもいいのかなと思えてきたので、2026年にはちゃんと胸を張って「私は●●だ」と言えるようになりたいです。

「もっとよく見せたい」「綺麗な部分を見せたい」――。SNSを使っていると、見る人にどう思われるかは、どうしても気になってしまう。そんな中、中川さんはモデルなどで自分が活躍する姿を見せながらも、ありのままの自分らしさを何よりも大切にしている。見る側のユーザーたちの目も肥えている今、うわべだけの魅力ではそれを見抜かれてしまう。中川さん“らしさ”こそ、ファンの心をつかんでいるのではないだろうか。
文:安藤 ショウカ
写真:水戸 孝造
