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日本のことならYahoo!検索 AI検索時代に「国産」プラットフォーマーが見据える検索の未来とは

情報がかつてないスピードで流通し、さまざまなコンテンツが日々溢れ続ける現代社会。私たちはその中から必要な情報をどうやって見つけ、理解し、行動につなげていくのか──この問いはますます切実になっている。

そこで助け舟として現れたのが、生成AIだ。

従来の検索は「キーワードを入力し、出てきた膨大なリンクの中から最適な答えを探す」というプロセスが基本だった。しかし生成AIが組み込まれることで、「会話を通じて疑問を投げかけ、要約によって答えを得る」という体験に移行しつつある。

こうした変化に応えるべく、LINEヤフーも2024年から相次いで新サービスを投入。「Yahoo!検索」には生成AIによる回答表示と「AIアシスタント」を追加し、情報過多の時代においてユーザーの取捨選択の手間を減らし、望む回答が得られる設計とした。

本記事では、LINEヤフーの最新の取り組みを手がかりに、ユーザーの検索行動の変化やAI時代における検索体験の進化を探っていく。

【企業概要】
LINEヤフー株式会社
検索、コミュニケーション、ニュース、EC、広告など、多様なインターネットサービスを展開し、人々の生活に密着したデジタルプラットフォームを提供。LINEとYahoo! JAPAN のユーザー基盤を統合し、メッセージングや情報サービス、コマース、決済など幅広い領域で利便性向上を図っている。 さらに、サービス高度化と業務効率化を目的に、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用した技術開発を推進し、より快適で信頼性の高いユーザー体験の実現を目指している。

最終的な行動までAI検索で導く。LINEヤフーが生成AIを本格導入した理由

Yahoo!検索は、インターネット黎明期から、人々の知的好奇心を満たす「入り口」としての役割を担ってきた。しかし、単に「知る」だけでなく、その情報から「アクションにつなげる」までをシームレスに達成したかったと、Yahoo!検索のサービス責任者の赤間 隼太氏は語る。

「従来のキーワード検索では、ユーザーの皆さんが複数の検索から、それぞれの結果を読み解き、商品の購入などの最終的な行動までを自身で判断する必要がありました。このプロセスにおける『手間』こそが、検索体験における未解決の課題だったんです。ただ検索して情報を得られるだけでなく、その裏にある目的や行動まできちんと達成できるように導きたいという思いがありました。これまでは技術的に対応できず『妄想』で止まっていましたが、生成AIが出現したことで妄想を実現できる世界になった。それが、AIアシスタントの開発に取り組み始めた1番の大きなきっかけです」

LINEヤフー株式会社 検索SBUリード 赤間 隼太氏

これまで技術的に対応できず、妄想で止まっていた典型的な例が、複雑な製品選びである。たとえばユーザーが冷蔵庫を買い替える場合、「冷蔵庫 おすすめ」と検索しても、機能、サイズ、価格帯、家族構成など、ユーザーごとに異なる考慮すべき要素が多すぎて、最適解にたどり着くことは困難である。

「その課題に対応するため、AIアシスタントがユーザーに向けて適切な質問を投げかけ、それに答えるというやり取りをするなかで、最適な冷蔵庫にたどり着くという「お買い物AIアシスタント」機能を設置しました。聞かれたことに答えていくだけで最適解がわかり、次のアクションにつながる体験を実現できるようになってきたんです」

参照:LINEヤフーWEBサイトより

つまりAIアシスタントは、情報の提供者ではなく、ユーザーの隣に寄り添い、状況を聞き出しながら最終的なアクションまで伴走するコンシェルジュのような存在として機能している。

AIサービスを迅速かつ継続的に提供する土台として、LINEヤフーは社内で生成AIの活用を義務化している。こうした文化も、アイデアの源泉になっている。

「業務の中でもAIを活用してブレストしたり、アウトプットしたりすることで、ユーザー視点で『こういう風に使いたい』というアイデアが出やすい環境になっていると思います」

検索行動は「対話」へ。悩み相談など「心の伴走者」としての役割も

AIアシスタントの導入は、ユーザーの検索行動に具体的な変化をもたらし始めている。それは、従来の検索とAI検索の優劣ではなく、両者の「併用」と、検索そのものの「対話」化だ。

従来の検索がAI検索に急激に置き換わっているわけではなく、むしろ両者を併用することが主流になりつつあるという。なかでも興味深いのは、従来の検索の利用が「ヘビー」なユーザーほど、AIアシスタントもよく使う傾向にあると、赤間氏は語る。

「情報探索に慣れたユーザーほど、AIの利便性を理解し、使い分けを巧みに行っていると感じます。たとえば、従来の検索では特定のサイトに行きたいなど、目的地が明確にある『ナビゲーションクエリ』として利用し、AIアシスタントでは対話の中で自分の状況をインプットしながら、最適な答えを探すという使われ方が多い印象です。ある程度答えがわかっている状態のときは従来の検索、自分の中でも答えがわからないときにAI検索を使うといった使い分けですね」

この変化のなかで、長年検索サービスを運営してきた立場から見て、最も大きなポイントは「対話」という要素の登場である。

「従来の検索でも、まずは1回キーワードを検索し、検索結果に納得できなければ、もう1回ワードを変えて検索を行うことがありますよね。でもAIアシスタントは『こうではなくてこうなんだけど』という対話を行うことで、より希望に合った回答を出してくれます」

さらに、AIアシスタント特有の使われ方もあるという。

「AIアシスタントに相談や愚痴をこぼすなど、答えを求めないような使われ方もされていますね。たとえば、『今日子どもからこんなこと言われて、母親としてはちょっと悩んだ』といった話を持ち掛けるなど、相談相手としても使われているんです」

これは、検索が単なる「情報収集ツール」という枠を超え、ユーザーの心の伴走者としての役割を担い始めていることを示す。こうした検索行動の広がりを踏まえ、LINEヤフーではできるだけ誰でも簡単に使えることも大事にしている。

「情報格差などをなくすためには、サービスを提供する側が、ユーザーにとってより簡単に使えるものを開発していくことが大事です。特にAIが一方的に情報を提供するのではなく、ユーザーが『何を求めているか』を問いかけながら、情報量を絞って伝える必要があると思っており、AIアシスタントを改善するなかでも意識しています」

自社で提供する多様なサービスから得られた「独自データ」を活用し、差別化を図る

LINEヤフーをはじめ、近年、生成AI関連のサービスをよく見るようになった。こうした激化する市場の中、LINEヤフーのAIサービスにおける強みは、「独自データ」の活用にあるという。

LINEヤフーは、検索、ショッピング、天気、地図などの多様なサービスを展開しており、たとえばYahoo!ショッピングのカタログデータや商品レビューに投稿されたクチコミデータ、Yahoo!マップの施設情報データなどの独自データを保有している。

この独自データを生成AIの回答に活用することで、差別化された情報の提供やユーザー体験の向上につながると話す。

「Yahoo!検索では『おでかけAIアシスタント』を提供しています。たとえば子連れで飲食店を探す際は、食べたいものに加えて『子連れに優しいか』という観点も重要になります。このような場合、おでかけAIアシスタントが弊社の保有する拠点情報やクチコミデータを活用し、『クチコミによると、ここはベビーカーでの入店がしやすく、子連れにもおすすめ』といったモデルケースを提案してくれるんです」

参照:LINEヤフーWEBサイトより

LINEヤフーが持つ独自データ等とAIを組み合わせることで、ユーザーの個別の状況やニーズに合わせたサービスを提供できる。これが、グローバルなAIサービスに対抗する、日本発のプラットフォーマーとしての大きな差別化要因となる。

また、生成AIが検索の主役となる未来において、検索サービスの提供者は情報流通におけるゲートキーパーとしての責任をより強く問われることになる。情報の正確性、公平性、そしてユーザーの安全を守るためのガバナンス体制は、AIサービスを提供するうえでの生命線だ。

そこでLINEヤフーも「責任あるAIへの取り組み」を推進しており、生成AIによる回答表示やAIアシスタントにおいては、ユーザーの不利益に直結する分野への対応が徹底されている。

「基本的にはポリシーを設け、特定のジャンル・領域への問いに対する回答は、制御するようにしています。特に健康医療や金融は、命やお金に関わる領域であり、ユーザーの生命や財産に悪影響を与えるようなことがあってはいけません。そのため、AIが誤った回答を提供しないよう、事前に回答を評価し、不適切なものは表示しないなどといった制御を行っています」

「とにかく日本のことに詳しくなる」国産プラットフォーマーとして描く未来

単なる「調べる行為」ではなく「アクションにつながる行為」へと進化させるべく、検索体験を向上させ続けているLINEヤフー。特にAI検索が普及することで、ユーザーはより受動的に、本質的な課題を解決するための情報提供を受けられるようになると話す。

「従来の検索は、ユーザーの表面的な疑問に答えるものでしたが、AI検索では対話を通じ、ユーザー自身も気づいていなかった真に解決したい課題を掘り起こすことが可能になります。たとえば、天気について調べるとします。従来の検索では、天気を検索して情報を得るだけで完了ですよね。しかし、AI検索であれば、さらに踏み込んだ情報を提供できます。『本当はもっとこんなことを知りたいのではないか』という問いかけを行い、ユーザー側がうなずけば、『では、今日の天気に適した服装はこれです』といった提案ができる。つまり、天気を知ることの裏側にある真のニーズにもとづいて情報を提供できるようになるんです。ユーザーが自らキーワードを入力し、サイトをクリックして探す手間をかけずとも、その人にとって最も価値のある情報が『見つかる』未来は近いと思います」

こうした未来の実現に向け、海外企業が先行するAI検索市場において、LINEヤフーは国産プラットフォーマーとしての強みを活かしていきたいと強調する。

「日本のことならYahoo!検索、という立ち位置を確立していきたいです。そのため、とにかく日本に詳しくなろうとデータを集めています。日本の飲食店を聞くなら、日本のイベントを聞くなら、日本の人物を確認するなら、というように日本ではYahoo!検索が1番便利というサービスを作っていきたいですね。加えて『Yahoo!検索のAIアシスタントなら、ほかよりもすごく簡単に使えるね』とユーザーに思ってもらえる設計を目指していきます」

LINEヤフーの挑戦は、単なる検索技術のアップデートではない。日本のユーザーにとって最も信頼でき、使いやすく、行動を促す伴走者となり、国内の情報流通の未来を担うという、国産プラットフォーマーとしての強い思いを感じた取材だった。

文:吉田 祐基
写真:小笠原 大介

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