花王テクノケミカル研究所は、さまざまな機能性を備えたパラフィンオイルを植物原料から開発することに成功したと発表した。今回の成果は、石化由来が主流であったパラフィンオイルの原料に植物を利用するという、新たな選択肢を示すものだという。

パラフィンオイルは、炭化水素を主成分とする油で、炭素と水素のみで構成されていることから、化学的に極めて安定した性質を保持する。そのため、医薬品から工業用途に至るまで幅広く使用されており、用途に応じたさまざまな種類が開発されているという。
こうしたパラフィンオイルの多くは、石油精製もしくは石化原料を用いた化学合成により製造されており、植物原料を用いることは、化学構造の制御や精製工程の複雑さから困難とされてきたという。
今回同社は、界面活性剤研究で培った技術を活かして、独自の触媒を開発。この触媒により、パラフィンオイルの炭素鎖の長さや形を自在に制御し、引火点や粘度、流動性のコントロールが可能になったとしている。
さらに、触媒によって変換プロセスも制御可能になったことで、成分のばらつきが大きい植物原料でも、品質の安定化を実現したという。
工業用オイルの一部は火災リスクが高く、非危険物取扱施設では使用が制限されている一方、同社が開発したパラフィンオイルは、引火点が250度以上(※1)と高く、安全性に優れ、データセンターの冷却液などにも応用可能となっている。
また、一般的なオイルは低温下で粘度が増して流動性が低下するのに対し、同社のパラフィンオイルは広い温度範囲にわたって低粘度を維持。この特長は、機械や自動車エンジンの潤滑油や冷却オイルとして用いた場合、ポンプへの負荷を軽減し、燃費やエネルギー効率の低下抑制に寄与するとしている。
加えて、潤滑油として用いた場合、金属表面に強固な油膜を形成し、高い潤滑性能を発揮し、摩擦低減による部品寿命の延長やメンテナンス頻度の低減も期待できるという。

同社は今後、今回開発した環境負荷低減と機能性を両立した次世代のパラフィンオイルについて、データセンター向けの冷却液や潤滑油、プロセスオイルなどへの応用をめざしていくとしている。また、工業用途以外への応用の可能性も探索していくとのことだ。
(※1)花王の研究所にて「クリーブランド開放式引火点測定試験器」で測定。測定サンプルの動粘度30ミリ平方メートル/秒(40度)。
(※2)花王の研究所にて、Ball on Disk、Temp. 40度、Ball Load 50N、SRR 50%、Speed 300ミリメートル/秒の条件下でMTM(Mini-Traction Machine)で測定。
