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ヤングZ世代とは?投資家になりつつある10代
Z世代とは1996年から2012年生まれを指すが、その中でも10代前半から中盤の層は「ヤングZ世代」または「Z世代ジュニア」とも呼ばれ、より強くデジタルネイティブとしての傾向が見られる。この世代の一部が、いま投資の世界に足を踏み入れている。
投資はもはや大人の世界だけのものではない。スマートフォンと金融アプリ、SNSやAIツールを駆使することで、10代でも本格的な資産運用が可能となった。小遣いやアルバイト代を原資に、学びながら実践する「リアルな投資家」として存在感を放っている。
なぜ今、ヤングZ世代が投資家になるのか――時代背景と価値観
「そんなに若い時から投資する必要があるの?」という疑問は、上の世代から多く聞かれる意見だ。たしかに、若いうちに人生経験を積むことや、遊びや学びにお金を使うことの大切さは否定できない。しかし、ヤングZ世代の投資は、それらを否定するものではない。
彼らにとっての投資は、ただの“お金儲け”ではなく、自分の将来に備えるための“選択肢を広げる行為”だ。例えば、大学進学、起業、海外留学など、将来的に挑戦の幅を広げるため、早いうちから資産形成に向き合っている。
また、少額からでも実践できる環境が整ってきた今、「学びながら増やす」ことは可能だ。彼らは投資を、経験を積むための“もうひとつの教室”と捉えている。
ヤングZ世代が投資に積極的な理由は、単なる技術環境の進化だけではない。彼らは、パンデミック、経済格差、気候危機などのグローバルな不確実性の中で育ってきた世代であり、「将来は約束されていない」という前提を自然と受け入れている。
そのため、早期から自分の将来を自分で設計しようとする傾向が強い。投資はその手段の一つであり、彼らにとっては「早めに学び、早めに備える」行動そのものである。
また、「お金を稼ぐ」ことよりも、「お金をどう使うか」「どう育てるか」に関心が向いているのも特徴だ。これはSDGsやESG、サステナビリティなどの意識が根底にあり、単に増やすための投資ではなく、価値あるものに資金を流す“応援型投資”の感覚も含まれている。
こうした時代背景と価値観のもとで、彼らは投資を「金融技術」ではなく「生きる知恵」として身につけ始めている。
15歳でビットコインを保有――Ryan Sorrell氏の投資哲学

Ryan Sorrell氏はアメリカ出身の15歳。退職ホームでのアルバイト(月収約800ドル)で得た資金をすべてビットコインに投資している。現在の保有総額は約6,000ドル、そのうち3,500ドルは利益として確定しているという。
彼の投資は、勘や感情ではなくロジックに基づいている。ChatGPTを使って市場の動向をリサーチし、将来予測の精度を高めているのだ。毎日1時間以上、ニュースとチャート分析に時間をかける習慣は、もはやプロ投資家さながらである。
14歳から投資し続けるYouTuber――Sophia Castiblanco氏のリアル

コロンビア系アメリカ人のSophia Castiblanco氏は18歳で、14歳の頃からYouTubeの収益(月300ドル程度)を投資に回してきた。現在では月3,000ドルを投資に充て、Vanguardの指数ファンドやTesla、Berkshire Hathawayなどの株式を保有している。
彼女の特徴は、金融リテラシーを自ら学び、さらに周囲に発信している点だ。YouTube上でも「若者が投資を始めるべき理由」などを語り、同世代に刺激を与えている。大学進学後も投資は継続し、自己資金による資産形成に取り組んでいる。
アルバイト収入を投資へ――Perrin Myerson氏の戦略眼

Perrin Myerson氏はアメリカ出身の22歳だが、投資を始めたのは16歳。Taco Bellでのアルバイト収入をRobinhoodに回し、Microsoft、Amazon、Palantirといった大型株へ集中投資してきた。
やがて、彼は自身のスタートアップを立ち上げ、得た利益を再び株式市場へと再投資するサイクルを確立。結果、過去1年で+51%という高リターンを叩き出している。彼は「投資は起業と同じ。見通しとリスク管理がすべて」と語っている。
芝刈り代でApple株へ――Isaiah Jones氏の“分散”力

Isaiah Jones氏はアメリカ在住の16歳で、夏休みに芝刈りやペンキ塗りで稼いだ小遣いを投資に回している。主な投資先はApple、Nvidiaなどのテック株に加え、EthereumやSolanaといった暗号資産も含まれる。
彼のスタイルは「分散投資」。高校の友人たちとの間でも投資が日常的に語られる環境で、リスク管理の考え方も早期に形成されているという。実際に「使っているものに投資する」というシンプルな戦略で、自然に企業分析を習慣化している。
ヤングZ世代vsミレニアル世代──投資マインドの進化
ミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)もまた、かつては「若手投資家」として注目されたが、ヤングZ世代とは明確な違いがある。
ミレニアル世代は、リーマン・ショックや就職氷河期を経て、リスク管理を重視しつつも、主に株式や不動産といった伝統的資産に目を向けていた。一方、ヤングZ世代は、暗号資産やAIツールを日常的に活用し、より柔軟かつ高速な投資判断を下している。
また、情報源も違う。ミレニアル世代はニュースや書籍、専門家の意見を重視したのに対し、ヤングZ世代はSNSやYouTube、さらにはAIを活用し、仲間とのリアルタイムな共有で意思決定する。
「稼ぐ→使う」の循環から、「学ぶ→試す→育てる」へとシフトしている彼らの投資観は、次の時代の基準になるかもしれない。
彼らが“次世代投資家”と呼ばれる理由
彼らに共通するのは、学習と投資を切り離さず、むしろ一体化させている点だ。AIによる収益予測、SNSでの同世代コミュニティ、分散型金融(DeFi)への関心など、従来の投資家とはまったく異なる「デジタル起点の判断軸」がある。
また、株式と暗号資産の両方にリスクを分散し、月数百ドルという小さな原資からでも成長の可能性を見出している。単なる副収入ではなく、「将来の自由をつくるための練習」としての投資が、彼らの中で根付いているのだ。
「金融リテラシーは教科のひとつ」な時代へ
これまで投資は「お金持ちのすること」「大人になってから」というイメージが強かった。しかしヤングZ世代にとっては、投資とはスキルであり、金融リテラシーは生きる力そのものだ。
AIとSNSを武器に、10代で未来の資産を形づくる。学びながら、実践しながら、世界とお金の関係を読み解いていく次世代の投資家たちは、まさにこれからの時代を象徴する存在となるだろう。
文:岡徳之(Livit)