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リクルートマネジメントソリューションズは、主に上場企業に勤める女性課長483名、および管理職一歩手前の等級・グレードにある社員437名に対し、「大手企業の女性社員の昇進に関する調査」を実施し、その結果を公表した。
■女性が管理職になりやすい組織となりづらい組織が存在
調査によると、女性課長全体の40.9%が「現在の部署で、女性が部長になったことがある」、55.3%が「現在の部署で、これまでに女性が課長になったことがある」と回答。
同様の設問に対しての男性課長の回答、および厚生労働省の令和5年度の調査によれば、母集団が異なるが企業規模10人以上の企業の部長職比率は7.9%、課長職比率は12.0%にとどまった。
これを踏まえると、すでに女性管理職がいる組織や女性比率が高い組織など、女性が管理職になりやすい組織と、なりづらい組織が存在することが明らかに。

■昇進意欲は限定的だが決して否定的ではない。同僚からの後押し次第で前向きに
女性課長のうち47.7%が「より上位の役職に就きたい(あてはまる・どちらかといえばあてはまる)」と回答。一方で、管理職手前の等級・グレードにある女性(課長手前)の課長職への昇進意欲は、29.0%にとどまった。

「会社から昇進を打診された場合に引き受けるか」という設問については、管理職志向の高い女性課長の88.4%、女性課長手前の76.6%が「引き受ける(あてはまる・どちらかといえばあてはまる)」と回答。
また、「一緒に働く人たちから、より『上位の役職に就いてほしい』と言われたら、やる気になる(あてはまる・どちらかといえばあてはまる)」と答えたのは、女性課長で92.9%、課長手前で86.7%に上った。
「どちらともいえない」という回答も多く、自ら積極的に望むよりは「必要があれば」「状況次第で考える」といったスタンスが主流であることが読み取れる。

Q.私は、一緒に働く人たちから「より上位の役職に就いてほしい」と言われたら、やる気になる。〈5肢選択式/n=442〉
■昇進意欲の背景には「職責への自負」と「上司の支援」が重要
部長昇進を希望する女性課長は、自身の職責に対して高い達成感と自己効力感が高い傾向に。特に、部長と課長の役割に大きな差を感じていない点が注目に値するという。
現在のポジションで培った経験やスキルがそのまま上位職でも通用すると認識しており、役割拡大への心理的ハードルが低い状態にあると同社は分析している。

自己効力感は職場内の人間関係、特に直属の上司との関係性とも密接に関連している。昇進志向が高い層では「上司の支援的行動」「上司の信頼・満足度」といったカテゴリのスコアが高いことが確認されたという。
上司との関係性は単なる業務支援にとどまらず「この人に認められている」「応援されている」といった、情緒的な支えの感覚としても作用しており、昇進への不安解消や安心感の醸成に寄与していることが分かった。

課長の女性を管理職の高低で2グループに分けたときにスコアの差が0.5以上の設問〈5肢選択式/n=235〉

管理職一歩手前の等級・グレードの女性を管理職志向の高低で2グループに分けたときにスコアの差が0.5以上の設問〈5肢選択式/n=207〉
■心理的な壁を越える鍵は「経験の幅」
昇進の意思形成には、これまでに経験してきた業務の「幅」や「質」も重要な要素であることも明らかに。
現在の勤務先で「どのような経験を積んできたか」を聞いた設問に対して、女性課長の方が男性課長よりも多くの項目で「経験あり」と回答した。

Q.現在の勤務先企業・団体で、経験したことのあるものをすべて選択してください。〈5肢選択式/n=920〉
■昇進後の実感には「やりがい」と「負担」の両面が存在
昇進後の心情では、女性課長の67.3%が「課長としてのやりがい」を感じていると回答。一方で、女性課長の33.6%、男性課長の29.5%が「可能であれば、課長の役職から外れて働きたい」と回答した。
また、「課長になる前は課長になることに、不安や心配があった」「課長になって心理的な負担が増した」という声も多く、やりがいと負担が共存する現実が浮き彫りに。これらの傾向は男性課長にも見られたことから、管理職共通の課題であることが分かった。

Q.以下はあなたの考えにどれくらいあてはまるか。〈5肢選択式/n=483、内 女性235、男性248〉
■昇進意欲を高める要因と妨げる要因
昇進意欲を高める要因として最も多かったのは「年収が上がる」だった。「自分が成長できる」や「やりたい仕事ができる」といった項目は、管理職とそうでない人によって異なる結果に。
一方で、意欲を下げる要因は「時間外労働が増える」や「心理的負荷が増す」「転居を伴う異動(転勤)をする可能性が上がる」などが多くあがった。
昇進の意思決定には、ポジティブな要素とネガティブな要素が常に併存しており、それらのバランスが最終的な判断を左右するのではないかと同社は考察している。


【調査概要】
調査名:大手企業の女性社員の部長・課長昇進に関する調査
調査目的:大手企業(主としてプライム企業)の女性の課長および管理職一歩手前の人の昇進に関する実態を把握する
調査時期:2025年3月
調査形式:インターネット調査
回答人数:920名
設問:リッカートまたは単一回答 68問 複数選択式 1問 自由記述 3問
<参考>リクルートマネジメントソリューションズ『大手企業の女性社員の昇進に関する調査』