セイコーグループ(以下、セイコー)は、「セイコー時間白書2025」を公表した。

セイコーは、6月10日の「時の記念日」にちなみ、生活者に時間についての意識や実態を探る調査を2017年から実施。毎年「セイコー時間白書」として発表している。

2025年問題が到来した今回は、「長寿化による人生100年時代における時間の多様性」、浸透著しい「タイムパフォーマンス(タイパ)とAI活用」について調査。以下一部結果を紹介する。

■2025年問題到来長寿化による人生100年時代の捉え方固定観念で語られがちな老後観や人生の節目への価値観は年代とともに変化

●人生100年時代、老後について「考え始める」40代、「準備を始める」50代

まず、老後に向けた意識や行動について聞くと、10代(75.0%)・20代(63.0%)では「特に考えたことはない」が最も多く、40代になると「具体的な行動はしていないが考え始めている」(41.0%)が4割、50代では「準備を始めている」(19.5%)が約2割と増加。

「既に準備を完了している」は60代で10.0%と高くなるが、それでも10人に1人の割合となっている。

現時点での老後に向けた意識や行

人生100年時代、40代になると老後を意識し、50代で準備を始めるものの、60代で準備完了とまではいかないようだと同社は考察している。

●将来について、20代から悲観的になるものの、60代になると楽観的に復調

将来に対する意識を聞くと、「以前より将来について楽観的になった」と思う人は全体の4割(42.2%)。

年代別に見ると、10代の58.5%が最も高く、20代は5割程度あるものの下がり始め、50代では30.0%にまで低下。しかし、60代になると44.0%と復調し、20代と同程度まで楽観的に感じる人が増えた。

以前より将来について楽観的になった

50代までは将来を悲観することが多いものの、60代になると、「なんとかなるさ、大丈夫!」と思えていることがうかがえる結果に。

●人生の節目と捉えるものは年代とともに変化。10代はこれからさまざまな節目が来ると予感

人生には進学や就職、結婚や仕事など人生の節目と言えるライフイベントがあるが、人生の節目と思うものを聞くと、10代は「進学・卒業」(67.0%)、20代以降50代までは「結婚・離婚」が節目のトップだが、30代は「出産」(51.5%)が2位に。

40代・50代では「定年」「人の死」が増え、60代では「定年」(55.5%)がトップとなった。

また、10代はほぼ全ての項目で節目とする割合が高く、これからさまざまな節目が訪れると考えていることがわかる

年代別・人生の節目

■将来の予測が困難な不確実性が高まる中「自分軸で生きられている」は約6割。若年層は他人の人生も気になる

●自分軸で生きられていると自覚しつつ、他人の人生も気になる若年層自分軸を持ちながらも他人が気にならなくなるのは60代になってから。人生の積み重ねが必要に

自分軸で人生を生きられているかと聞くと、全体の59.0%が「自分軸で生きられている」と回答。

年代別に見ると、10代が70.5%と最も高く、20代、30代と低下し、50代では49.0%と自分軸で生きられていると自覚する人は半数以下に低下。しかし、60代になると58.5%と復調し、自分軸で生きていると実感できる人が増えている[図4]。

自分軸で人生を生きられている

一方、他人の人生が気になるかと聞くと、全体の43.8%が気になると回答。年代別に見ると、10代が64.5%と最も高く、年代が上がるに連れ気になる割合は少なくなる傾向に[図5]。

他人の人生が気になる

●これからのライフイベントは自分らしく!社会規範に縛られたくない

年代とともにさまざまな人生の節目を迎えるが、これらのライフイベントで社会規範に縛られる必要はないと思うかと聞くと、73.7%が「縛られる必要はない」と答回答。年代差もあまりなく、今後は、社会規範に縛られないその人なりのライフイベントの迎え方が増えていくことが予想できる[図6

ライフイベントで社会規範に縛られる必要はない

■10代はこれからの人生の時間を楽しみに捉えている世の中に追いつき成長し続けたい、前向きな世代

●これからの人生への期待が高く、時間の使い方をきちんと考えたい10代それだけに、時間の使い方への悩みも大きい

今後の人生の時間についての意見を調査。まず、今後の人生は楽しみか不安かと聞くと、「楽しみ」と答えたのは全体では47.3%だが、10代は57.5%と10.3ポイント高く、全年代の中で最も高くなった。

また、「今も将来も時間の使い方を考えたい」と答えたのは、全体72.5%に対し10代は78.0%と5.5ポイント高くなっている。

一方で、10代の4人に3人は「将来、人生の時間の使い方に悩みそうだ」(75.5%)と答えており、全年代の中で最も高い[図7]。これからの人生を楽しむために時間をどう使うかしっかり考えたい10代、それ故に使い方に悩みそうだと感じていることがうかがえる。

今後の人生の時間についての意見

●将来に向け「世の中の動きに追いつきたい」「成長し続けたい」という熱い思いも10代が最多

また、これからの将来、自分自身の人生をどう生きたいかと聞くと、10代の前向きな姿勢が明らかに。A:世の中の動きに追いついていたい、B:自分の価値観を大事にしたいを2択で聞くと、10代は「世の中の動きに追いついていたい」(49.0%)と答えた人が全年代の中で最多に。

A:年を経るごとに成長し続けたい、B:ほどほどの成長で十分だの2択も、10代は「年を経るごとに成長し続けたい」が70.5%と群を抜いて高くなっている。

また、「年齢に関係なく、自由に生きていいと思う」と答えた10代は88.0%と、全年代で最も高くなった[図8]

将来に対する意見

■生活者の6割が「タイパを意識して行動」「タイパ重視の考え方は社会に定着した」と感じているタイパ意識が最も高い10代は、「何事もタイパを高め、時間効率を優先したい」も最多

タイムパフォーマンス(タイパ)が時間の使い方の選択基準となり、日常生活でのAI(人工知能)活用も増えているなか、効率化につながるタイパとAI、加速することで時間の価値がどう変化するのかを調査。

まずタイパ意識について聞くと、60.4%が「タイパを意識して行動している」と答え、「タイパを重視する考え方は社会に定着」と答えた人も62.1%とどちらも60%を超え、2024年の調査結果(意識して行動58.0%、社会に定着60.5%)から微増傾向を示した。

年代別で見ると、どちらも10代(行動69.5%、定着70.5%)が高くなっている。

また、「何事もタイパを高め、時間効率を優先して生活したい」と答えた人は全体で54.3%だが、10代は64.5%と最も高い結果に。

タイパ意識

●一方、「じっくり考え」「没頭したい」という意見もあり生産性や効率化だけではない、時間の使い分け傾向も

タイパ優先がスタンダードとなる一方で、「答えがすぐ出ないことでも、自分なりに考えたい」(74.3%)、「じっくりと考え事をするのが好き」(74.0%)、「時間を気にせずに没頭できる」(67.6%)といった、時間的な効率追求とは逆行する意識も見られた。

アンチタイパ意識

生産性を上げ効率化を図るべきこととじっくり時間をかけたいことを区分し、使い分けをする様子がうかがえる。

■AIが身近になった2025年生活者のおよそ3割がAI機能を利用

次にAIの活用について調査を実施。

「AI機能を使って時間効率を高めている」と答えたのは全体の30.3%、「時間効率を高めるためにChatGPTを使ったことがある」は31.1%で、いずれも前年の調査結果(AI機能22.2%、ChatGPT22.4%)より約8ポイント程度増加。

また、「プライベートでAI機能を使っている」と答えたのは全体の31.8%となり、AIが普段の生活でぐっと身近になっていることがうかがえる。

年代別に見ると、「時間効率を高める」(57.0%)、「ChatGPTを使用」(64.5%)、「プライベートでAIを利用」(60.0%)といずれも10代のスコアが高く、AIとの親和性の高さが感じられた。

AI活用

●AI活用TOP3「仕事の相談」「人生相談」「イラスト生成」、10代の半数はコミュニケーションに活用

AI機能を活用した経験があるものを聞くと、「仕事の相談に乗ってもらう」(11.0%)、「人生相談に乗ってもらう」(10.8%)、「イラストやイメージ動画を生成する」(10.7%)が上位に挙げられた。

AI機能を活用した経験があるもの

上記の中からコミュニケーション領域でのAI利用を見ると、全体の利用率24.3%に対し10代は49.0%とほぼ半数が“AIソロトーク”(AIとの個人的な会話)を実践。

項目別に見ると、10代は「優しい言葉をかけてもらう」(30.0%)、「人生相談に乗ってもらう」(27.5%)、「愚痴を聞いてもらう」「慰めてもらう」「恋愛相談に乗ってもらう」(いずれも22.5%)など、スコアがずば抜けて高くなった。

コミュニケーション領域でAI機能を使ったことがあるもの(年代別)

●AI機能により「生産性が上がった」と実感。一方で「自分の存在意義に疑問を感じる」ことも

AIに対する考え方について、自分の日常生活でのAIの浸透について聞くと、全体では「浸透している」46.3%:「浸透してない」53.8%となったが、10代では71.0%が「浸透している」と回答。

生産性については、全体の68.8%はAIの機能のおかげで生産性が「上がった」と答えているが、10代は78.5%、20代は75.5%と8割近くなっている。

また、AIによって自分の存在意義に「疑問を感じる」は全体で43.1%だが、10代は61.5%。AIが身近なだけに疑問を感じることも多いのかもしれないと同社は考察している。

AIに対する考え方

●若い年代は、AI活用で時間の「幸福度」が、タイパで「満足感」が上がる

AIによって自分の時間の幸福度は上がったかと聞くと、全体の58.5%が「上がった」と答え、10代〜30代では60%を超えに。

また、最短で成果や結果を出すタイパにより「無駄なく時間を使えることに幸せ・満足感を感じる」と答えた人は全体では61.1%だが、10代は70.0%と高くなっている。

【左】AIによって時間の幸福度ががった【右】タイパによって幸せ・満足感を感じる

AI機能の効果を活用・実感し、タイパで無駄なく時間を使いこなす若い年代にとって、AI活用は幸福度を、タイパは満足感を上げると認識されているだと同社は考察。

●「人にしかできないことに時間を使う」がAI時代の人間らしい時間の使い方に時間を使うことがより貴重で価値あるものへと昇華

AIの利活用が加速する今の社会において、人間らしい時間とはどのようなものと思うか自由回答をもらったところ、AIにより自分の幸福度が上がると答えた若い年代からは以下のような回答が寄せられたという。

・「誰でも行えることはAIに任せればいい。友達との時間や家族との時間はAIでは代えが利かない」(男性20代)
・「AIに基礎的なものをやってもらって、人が具体的なものへと作り上げる。AIを頼りながらも、絶対に人間にしかできないことがある。人との関わりを大事に自分の経験を高めていく時間」(女性10代)

この結果に同社は、AIにできることはAIに任せて時間の効率化を図り、そこで生まれた貴重な時間を人にしかできないことに有効的に活用する、そのことがAI時代の人間らしい時間の使い方と認識されているようだと考察している。

AI時代の人間らしい時間とは

<参考>
セイコーグルーブ『セイコー時間白書2025