帝国データバンクは、全国の「旅館・ホテル」業界の市場推移および企業動向(業況、売上高)について調査・分析を実施し、その結果を公表した。

同調査の結果によると、2024年度の国内旅館・ホテル市場が事業者売上高ベースで5.5兆円に達し、過去最高を更新する見通しであるという。これは、コロナ禍で宿泊需要が大幅に落ち込んだ2020年度(約2.9兆円)の約1.8倍に相当し、コロナ禍前の2018年度(約5.2兆円)も上回る規模となるとのことだ。

「旅館・ホテル」市場推移

また、2024年度の業績が判明している約3,400社のうち、33.8%が前年度から増収となった。これは、行動制限の緩和や水際対策の撤廃により、訪日外国人観光客(インバウンド)の需要が回復したことが主な要因であるとしている。

特に、円安を背景に訪日客需要の獲得が好調であり、高級ホテルからビジネスホテルまで幅広い施設で業績が好調だったという。

一方で、前年度からの推移では「増収」割合はコロナ禍以降で初めて低下し、「減収」が2年ぶりに1割を超えた。人手不足で稼働率が低下したケースがみられたほか、従業員確保のための人件費増、エネルギーや食材費、リネンサプライ料金などのコストも上昇し、利益面で課題が残る企業も多かったという。

前年度から「増収」「減収」の割合

都道府県別にみると、2024年度に「増収」となった旅館・ホテルの割合について、和歌山県が56.0%と最も高く、福岡県(50.0%)や長崎県(44.7%)など九州地方で増収割合が高い県が多い結果に。

これは、アジアを中心とした訪日観光客の宿泊需要が旺盛だったことや、大都市部からの出張需要を取り込んだことが要因とされる。

都道府県別「増収」企業割合

2025年度も市場拡大が期待されるが、労働力不足による機会損失が課題だとしている。

同社の調査では、旅館・ホテル業界の人手不足割合が、2025年1月時点で正規・非正規社員ともに5割を超えており、外国人材の登用や受付の自動化といったデジタル化・省人化投資への取り組みが一層求められるとみられる。