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新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第5回に登場するのは、ありしゃんさん。B面では、人気YouTubeチャンネル ヘラヘラ三銃士のリーダーとしてだけでなく、ネイル・アイラッシュサロン Raviy(ラビィ)の経営者としても活躍の幅を広げるありしゃんさんのクリエイターとしての価値観に迫ります。
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盛られていないリアルな情報が決め手になる|ありしゃんのA面
等身大の姿を発信。ありしゃんのSNS運用戦略
―YouTuberになるまでの簡単な経緯を教えてください。
2017年から私個人でYouTubeの動画投稿をはじめ、YouTuberとしての活動を開始しました。翌年から、飲み会で出会ったさおりんとまりなを誘って「ヘラヘラ三銃士」を結成しました。
―ありしゃんさんはYouTubeやInstagram、Xなど複数のSNSのアカウントで発信されていますが、運用する上で大事にされていることはありますか?
新しい意見と批判を履き違えることのないようにすることと、自分の信念をしっかり持つことです。発信活動をしていると、さまざまな方面からいろいろな意見をいただく機会があります。発信を続けていく中で、いろんな意見に飲まれてしまって「何のためにこれをしているんだっけ?」と思うことがたまにありました。
その経験から、いただくコメントの中から「これは意見」「これは批判」ときちんと判別をしてから、コメントの内容を受け入れることを意識するようになりました。コメント欄は見ますが、全てに左右されるのではなく、自分の信念はしっかり持つということも大事だと考えています。
―視聴者からの意見か批判かを見極めるときの基準はありますか?
自分が今やっていることに対して一方的に否定するだけの意見か、それともアドバイスなのかというところです。例えば、自分が着ている服に対して「その服似合ってないよ」は一方的な批判で、「ありしゃんはもっとこういう服のほうが似合うと思うよ」は新しい意見と捉えています。
―そうした発信を続けるために、戦略的に行っていることはありますか?
視聴者へ自分から歩み寄って、新しい意見を求めるようにしています。また、いただいた意見は積極的に取り入れるようにしています。
視聴者からのアドバイスや新しい意見はどんどん取り入れて自分自身をアップデートしていく過程も発信していきたいので、動画の中で「この服似合ってる?」と視聴者に質問を投げかけてみることもあります。
―発信する中で、自分の考えや伝えたいメッセージを視聴者に効果的に伝わるように意識していることはありますか?
自分自身をアップデートするためにも、人生丸ごと黄金期というように、自分達のリアルをコンテンツにしていて、変に背伸びをせずに等身大の自分の姿を発信するように心がけています。私だけでなくヘラヘラ三銃士のメンバーは、どんどん垢抜けていっているんですよね。それは視聴者のみなさんがいろいろアドバイスをくれるからだと思っています。
メンバーのまりなはすごく素直な子で、視聴者から「カラコンがでかすぎ、もっと小さい方が似合うと思う」という意見があればカラコンを小さくし、視聴者の意見を参考にヘアケアも変えて髪がサラサラになりました。視聴者に「かわいくなった」と言われて嬉しくなって、さらに垢抜けていく。そんなメンバーの姿は、いつも私の刺激になっています。
そんな風に新しい意見をもらい、アップデートしていくために、等身大の私たちの姿を届けることはこれからも大切にしていきたいですね。
視聴者と目線を合わせる。ファンとの繋がりを強化する秘訣とは
―視聴者やファンとの繋がりを強めていくために大事にしていることを教えてください。
自分の中でまとまらない思いや意見も口に出し、わからないことをわからないと言ってみるようにすることです。あえて抱えている悩みを口に出し、視聴者にリアルな自分の姿を届けて共感を得ることで、視聴者との繋がりを強化しています。
―そのときのリアルな気持ちを発信するときに気をつけていることはありますか?
自分の中でまとまっていない意見を言葉にするときは、断言しすぎずに余白を作って、今の自分の気持ちに素直でいられるように工夫しています。かっこつけずにありのままの姿を見せることは常に意識しています。
―ファンや視聴者のエンゲージメントを高めるために行っている具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?
視聴者やファンの声を取り入れていることがわかるような発信をしています。例えば、私が手がけているネイルサロンに入った口コミに対して真摯に向き合い、意見なども取り入れ、できる限り改善するようにしています。それをタイムリーにSNSで発信することで、視聴者やファンは「お客さまの声をきちんと取り入れてくれるお店なんだな」といいイメージを持ってくれると思うんです。
ファンや視聴者から寄せられた声を、サービスやサロンに取り入れていることがわかると、人がついてきます。それは、お店もそうですし、私たちのようなクリエイターなどの自分自身を商売道具とする人にも同じことが言えるはずです。
―視聴者やファンなど一般の方と同じ目線になるのが難しいと感じることはありませんか?
あまりないですね。経営しているサロンのスタッフと食事に行くなど、普段から自分よりも若い世代の子たちとの関わりを持っています。サロンで働いてくれているスタッフの中には、もともと私のファンだった子もいるので、常に視聴者と同じ目線を取り入れやすい環境が整っているのかもしれません。
―声を取り入れる以外に視聴者やファンとの繋がりで大切にしていることはありますか?
はい、視聴者と一緒に変わっていくことです。私は「ありしゃん変わったな」と言われるのが嫌なんです。でも、人って変わっていくものですよね。視聴者と一緒に変わっていけば、「変わったな」とか「変わってほしくない」とか思われることなく一緒に歩んでいけます。
なので、ヘラヘラ三銃士は、よっぽどのことがない限りは活動休止を絶対にしないと決めています。期間が空いてしまうと、変わっていく過程を見てもらえないですし、視聴者が私たちの変化についてこられなくなってしまうからです。どんなに状況が悪いときでも、それをすらも発信し続けていきます。
わくわく×ときめきがバズるコンテンツの条件
―SNSで発信する内容はどのような基準で選んでいますか?
自分がワクワクするか、ときめくかどうかです。リアルなもの、ワクワクするもの、ときめくものが合わさったコンテンツはバズる傾向があります。
―その中で、視聴者が見たいネタや募集系の内容はどのように把握しているのですか?
街中で声をかけてくださったファンの方には「どこで私たちを知ったんですか?」と聞くようにしています。一種の調査ですね。そこからTikTokやYouTubeなどのショート動画をきっかけに知ってくれた方が多いことを知りました。
―コンテンツ制作のアイデアを得るためにどのような活動をしていますか?
ここでもやっぱり、インスタライブなどで視聴者のリアルな声を拾って企画に反映するようにしています。ライブ配信中に「何の動画が一番おもしろかったか」を直接質問することもあります。同じ企画を擦ると飽きられるので、また見たいという声が多い動画にアレンジを加えて企画しなおして出すこともあります。
あとは、関わったことがないジャンルの人と関わりを持つようにしています。相手に興味や好奇心を持つことで、いいヒントが得られた経験が何度もあります。
私たちの知らない世界は、視聴者も知らない世界であることが多いので、きっと興味を持ってくれると思います。そういったテーマを企画にするためにとにかくいろんな人と会います。
自分たちのファンであり、熱量が一致する企業とコラボしたい
―コラボレーションしたいブランドや企業はありますか?
型にはまらず私たちの姿勢や温度感に共感してくださる企業とコラボしてみたいです。その条件さえ揃っていれば、私たちからお断りすることはあまりないと思います。
ワクワクできるものであれば、ジャンルは問いません。無名な企業であっても熱量が一致すれば「一緒にバズらせましょう!」と思いますし、大手企業からオファーがあれば「期待に応えなきゃ!」と思います。
―ありしゃんさん自身が企業とのコラボレーションを決める際の基準は何ですか?
自分たちのファンでいてくれて、価値観やスタンスを理解し共感してくれるかどうかです。
これまでも、自分たちがいいなと思うものを発信していたら、それを見つけていただいた企業とコラボに至ったことがありました。それは、その企業さんが私たちのいちファンとして見ていてくださったからだと思うのですごくありがたかったです。
―過去のコラボレーションで特に成功したと感じるプロジェクトはありますか? その成功の秘訣は何だと思いますか?
堂島ロールの「Moncher(モンシェール)」とのコラボクッキーです。モンシェールの担当のかたがもともとヘラヘラ三銃士のファンということもあって、そこからご縁があり「AMILY×メルシーマシェリコラボ チアフルチョコチップ生クッキー」を企画・販売することになりました。
通常ではありえないほど試作をしてくださり、普通は半年ほどかかるところを2カ月ほどの期間でレシピを完成させてくださいました。それって、好きの熱量が高いからできることだと思うんです。おかげで、発売後即完売が続いたり、リピーターが続出したりするほどのバズるクッキーになりました。
多方面へアンテナを張ってネクストトレンドを察知
―今後取り組みたいと考えている新しいプロジェクトにはどのようなものがありますか?
ビジネスとして新しく取り組みたいのは「よもぎ蒸し」です。今はサウナがトレンドで、私自身もハマっています。世の中の流れ的にボディケアやヘルスケアなど健康志向を意識したサービスが、今よりも若い世代に流行り始める予感がしています。
―(そのように)どんどん次のステップへ進んでいくために日頃行っていることはありますか?
日常生活の中で常に多方面へのアンテナを張っています。例えば、ネットフリックスで流行している映画を3本見て、その中にひとつの共通するものがあれば、それが次に流行るんじゃないかなと予測することができます。街中を歩いてみても、よく見かける商品などがあると、次くるんじゃないかと注目してみたりしますね。
―最後に、個人の活動について教えてください。
ネイル・アイラッシュサロン Raviyの経営にも力を入れています。店舗自体は渋谷、新宿に加え、大阪や名古屋、千葉など全国にも展開しており、トレンド最先端の可愛いネイルがRaviyの自慢です。パーツやカラーを豊富に用意し、定期的に新作も取り入れることで、常に最新トレンドであることを意識しています。そういったヘラヘラ三銃士のメンバーは、YouTube活動以外ではそれぞれの顔を持ちながらも、最終的にはすべてヘラヘラ三銃士への活動に還元したいという思いがあります。
頑張っている姿をわざわざYouTubeで見せる必要はないので、経営や商品のプロデュースなどの成果を見せて、ヘラヘラ三銃士の活動にも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
自分自身はもちろん、ファンや視聴者も一緒にわくわくし、変化を楽しめるような発信をするありしゃんさん。常に等身大を届ける姿に、共感を抱く視聴者も多いだろう。圧倒底な熱量を生む発信やコラボの背景には、多方面にアンテナを張り巡らせる彼女のストイックさがうかがえる。発信やビジネスにいつも注目が集まるのは、敏感にネクストトレンドを察知する姿勢があるからかもしれない。
文:岩井なな
写真:小笠原 大介