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新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第4回に登場するのは、あきとんとんさん。B面ではYouTubeやTikTokを中心に学びを提供するあきとんとんさんのクリエイターとしての価値観に迫ります。
- 【あきとんとん】
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1996年生まれ、大阪府出身。
高校・大学時代に勉強で苦労した経験を活かし、勉強が苦手な人でも楽しめる動画を日々配信する教育系クリエイター。2024年にはTikTok Awards Japanを受賞。著書には『見るだけで理解が加速する 得点アップ 数学公式図鑑』(KADOKAWA)、『小学校で習う計算が5秒で解ける 算数 ひみつの7つ道具』(かんき出版)。
- YouTube: https://www.youtube.com/@akitonton
- Instagram: https://www.instagram.com/akitonton5
- X: https://twitter.com/akitonton5
- TikTok: https://www.tiktok.com/@akitonton
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「あきとんとん」を学びの新たな選択肢に|あきとんとんのA面
「私、勉強できないから」をちょっとでも変えられたら
ーアカウントを運営する上で最も重要だと考えていることは何ですか?
「ちゃんと教えること」です。教育分野のコンテンツでは、問題だけ出して答えを言わない動画の方がバズりやすい傾向にあります。しかし、それでは視聴者が答えを知ることができず、学びにはつながりませんよね。答えまで一緒にしっかり伝えて、視聴者のためになるコンテンツを作ることを大切にしています。
たとえ数字が伸びにくいからといって妥協するのではなく、それでも見てもらえるような動画を作ればいいと思うんです。そのために、「楽しく勉強してもらうこと」を意識しています。
ー楽しく学んでもらうためにどんなことに取り組んでいますか?
最近気づいたのですが、教えている人が楽しそうだと、見ている人も楽しく学べるんですよね。勉強に限らず、例えばスポーツでも「あの人、すごく楽しそうにプレーしているな」と思ったら、自分もやりたくなることがあります。僕自身、教えることが好きなので自然と楽しそうに見える部分もありますが、「楽しそうに教える」ということは意識して行っています。
ーあきとんとんさんのショート動画では「縦型授業 すたとんとん」というフレーズが印象的ですが、「縦型授業」という言葉は戦略的に使われているのですか?
そうですね。「縦型動画」や「縦型ドラマ」という言葉がよく聞かれるようになってきて、この先「縦型授業」という言葉も誰かが使い出すだろうと思ったので、先取りして僕が名前を付けて使い始めました。YouTubeショートやTikTokのような縦型プラットフォームでは、「ちゃんと学びになる動画がある」ということを知ってもらうためにあえて言うようにしています。
ー動画を通じてどんなメッセージを視聴者に伝えたいと考えて活動していますか?
「勉強って楽しいよ」「やればみんなできるよ」と伝えたいです。大人になると、「私、勉強できないから」「俺、頭悪いから」と言う人が多いですが、そんなことはないんです。その意識を少しでも変えられたら、その人の人生がもうちょっと明るくなるんじゃないかと思うんですよね。
子どもの頃、テストで良い点数を取れただけで「やればできる」と自信を持てた経験がある人も多いはずです。そうした自信を持てる人を少しでも増やせるように、日々コンテンツを発信するよう心がけています。
失敗は成功に繋げる。頑張り続けられる理由
ーインフルエンサー活動を始めた当初に経験した、最も大きな挑戦について教えてください。
そもそも、僕のチャンネルの始まり自体が挑戦だったと思います。投稿を始めた6年ほど前は、勉強が苦手な人に向けて授業を解説する横動画だけを投稿していました。でも、YouTubeの横動画は検索しないと視聴されにくく、勉強が苦手な人や嫌いな人はそもそも検索しないんですよね。「この形だと視聴者との接点が少ない」というアンマッチを感じながらも挑戦的に投稿を続けていましたね。その後、検索しなくても視聴できるショート動画を投稿し始めたことで、勉強が苦手な人にも自然と見てもらえるようになっていきました。
ーインフルエンサー活動の中で失敗はありましたか?
失敗は数え切れないくらいありますが、幸いなことに何かを失うような大きな失敗はありません。失敗をしても無理やり成功に繋げてきたので、あまり失敗だと捉えていないのかもしれません。
ーどうやって失敗を成功に繋げてきたのですか?
例えば、最近はショート動画を毎日2本投稿していて、1本は定番のフォーマット、もう1本は今までと違う新しいフォーマットで試しています。新しいものは伸びないことも多いので、ある意味では失敗と言えるかもしれませんが、伸びなかった理由を分析して次の投稿に活かしています。
ー失敗しても成功に変えようと思えるのはなぜなのでしょうか。
これまで勉強を頑張って結果を出してきた経験があるので、「頑張れば結果は出る」という考えが根本にあるんですよね。それが頑張る原動力になっていると思います。だからこそ、「やればできる」ことをみんなに伝えたいと思っています。
視聴者の声こそ需要。見てもらえる動画を作る秘訣
ー視聴者との繋がりを強化するために特に重要視していることは何ですか?
視聴者さんのリクエストに答えることです。ショート動画の縦型授業「教えて!とんとん!」は、基本的に視聴者さんからのリクエストをもとに作っています。それに加えて、「採用しているよ」というメッセージを定期的に発信することで、 “繋がっている感”を視聴者が感じられるように工夫しています。
ー本当に視聴者の声を採用しているのですね。
そうなんです。僕自身が面白いと思ったことをコンテンツにすることもあるんですが、そういう動画はあんまり伸びなくて。僕が興味のあることって、勉強の内容が発展しすぎていてあんまり需要がないんですよね(笑)。
逆に、視聴者さんから寄せられるテーマは「こんなことに興味があるんだ」と思うような内容でも、動画にすると多くの人が反応してくれるんです。視聴者さんの声こそが需要そのものだと実感しています。
ーエンゲージメントを高めるために行っている具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?
ショート動画は、とにかく「間」をカットしています。言葉の冒頭1文字や最後を切ることもあります。例えば、「あきとんとん」と言っているところを、「あ」をカットして動画上では「きとんとん」でも、テロップがあるから視聴者には通じるんですよ。僕自身、ショート動画を視聴する中で、間が長いと耐えられなくて。視聴者が見続けられる動画を作るために、テンポや間にはこだわっています。
流行りやトレンドは調べない
ーコンテンツのネタを選ぶ際の基準は何ですか?
2つ以上同じようなリクエストが来た場合、それを採用するようにしています。流行っているものは一気にリクエストが集まるので、多い時は1日で同じようなリクエストが20~30個来ることもあります。リクエストが多いということは、それだけ需要がある証拠なので、動画にすればバズる可能性が高いんです。
一方で、1つしかリクエストがなくても僕が思いつかなかったようなことや、センスが良いと思うリクエストも採用しますね。そのほかにも、時期ごとに学校で習う内容を考慮してコンテンツを選んでいます。
ー視聴者の関心やトレンドをどのように把握していますか?
流行やトレンドは、意識的に調べる必要はないと思っています。SNSを見ていると自然に「これが流行っている」と気づきますよね。「アサイーボウルがめっちゃ出てくるな」と思ったら、それが流行りだとわかります。SNSを日頃から見ることを意識して、自然に流れてくる情報をキャッチしています。
ー授業のアイデアはどのように得ていますか?
本を読むことが一番のアイデア源です。読むのは一般的な参考書で、人気のあるものや流行っているもの、本屋さんの参考書コーナーのランキングの上位にあるものなどから選ぶことが多いです。
勉強に関しては、やっぱり本が一番良質なコンテンツだと思います。実際、本に書かれている内容を参考に動画で発信している人も多いですし、自分も本を読むことで何かしらのアイデアを得られますね。
体験の深さが三方よしのタイアップに
ー今後コラボレーションしたい企業やタイアップしたいものはありますか?
ありがたいことに、タイアップしたかったものはほとんど実現できています。例えば、本を出版などです。今は、それをもっと出していきたいという気持ちの方が強いです。
ーどのような企業とのタイアップが多いですか?
教育分野はもちろんですが、ショート動画で雑学も教えているので、「説明する人」としてのタイアップが増えてきました。金融のサービスを分かりやすく説明したり、転職について話したりしています。
案件動画では、インフルエンサーが急に専門的なことを説明することで「案件っぽさ」が目立つことがありますよね。でも、僕みたいに普段から難しいことを説明している人であれば違和感がなくできるので、幅広いジャンルのタイアップをさせていただいています。
ーコラボレーションを選ぶ際の基準は何ですか?
子どもたちが見るコンテンツなので、安心して紹介できる企業かどうかは特に気にします。最近は、僕自身が知っている企業かどうかという点も判断基準にしています。本当に良いサービスであれば必ずしも知っている必要はないのですが、やっぱり知っている企業の方が安心できます。
ー過去のコラボレーションで特に成功したと感じるプロジェクトはありますか?
SmartNewsとのタイアップです。英語の記事を読み漁っていた時期があったのですが、その時に記事を探すのが手間だったんですよね。SmartNewsはその悩みを解決してくれる便利なサービスなのがすごく有益だと感じて、英語の上級者向け勉強法として紹介しました。視聴者さんからも「効果があった」という声をたくさんいただきましたし、動画の再生数もすごく伸びて、視聴者・企業・僕の三方よしのタイアップでしたね。
ーその成功の秘訣は何だと思いますか?
自分の体験に基づいていることが大きかったと思います。体験の深さが違うんですよね。僕が実際にしていた勉強法をもとに、心から便利だと思ったものを紹介したので、その信頼感が視聴者に伝わったのだと思います。それに、僕にも視聴者さんにも新たな発見があったので、みんながwin-winになれるタイアップになったんだと思います。
成長のために、新たなものを取り入れたい
ー今後取り組みたいと考えている新しいプロジェクトにはどのようなものがありますか?
来年から、日本全国の小中学校、高校、大学などを訪れて特別授業や講演会のような話すプロジェクトを始めたいと考えています。
ーその新たなプロジェクトに挑戦したいと考えている理由は何ですか?
このプロジェクトを通じて、僕は田舎に行きたいんですね。田舎は都市部に比べて、芸能人やインフルエンサーに会える機会が圧倒的に少ないじゃないですか。東京などの都市では有名人に会える機会が多く、いろいろな有名人の中で僕は埋もれてしまうと思います。でも、田舎だったら「俺、あきとんとんに会ったことあるよ!」と話してもらえる可能性が高い。そこから「あきとんとんって何してる人?」と興味を持ってもらい、「勉強を教えている人だよ」と認知が広がれば、その子たちの選択肢も広げることができるんじゃないかと思っています。
ー自分自身の成長や革新性を維持するために日常的に行っていることはありますか?
動画を上げ続けることと、流行を取り入れることです。ただ動画を投稿し続けるだけで、同じような内容ばかり教えていては、視聴者さんから「成長していない」と思われてしまいます。常に新しい要素を取り入れていくことが、あきとんとんとしての成長に繋がっていると思います。
あきとんとんさんは、これまでの自身の人生を通じて、学ぶことが誰かの未来をちょっと変えられることを知っているからこそ、インフルエンサーとして活動することに意義を感じているのではないだろうか。視聴者の声からも、ちょっと良くなっているかもしれないと感じているというあきとんとんさん。その「ちょっと」が日本中で広まっていけば、きっと大きな変化になるだろう。これから始まるプロジェクトも含めて、どんどん広まる学びの輪に期待したい。
文:安藤 ショウカ
写真:小笠原 大介