KDDI、KDDIスマートドローン、日本航空(以下、JAL)、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)、ウェザーニューズ、メディセオの6社(以下、6社)は、東京都西多摩郡檜原村にて、医薬品をドローンで配送するビジネスの社会実装に向けた実証を実施したことを発表した。
同実証は、東京都の「ドローン物流サービスの社会実装促進に係る実証プロジェクト」に基づき、都心部におけるドローン物流サービスの早期社会実装を目指すもの。2022年5月から開始し、3カ年の計画でドローンを活用した医薬品配送ビジネスモデルの業務フローの策定と検証を行ってきたという。
最終年度となる今年度の同実証では、人口密集地である都市部でのサービス実装に向けて、檜原村にてサービス実装時に配送する稀用医薬品の管理体制と、JALが航空機運航の際に操縦者をはじめとする運航に携わる者に対し行うCRM(Crew Resource Management)(※)訓練をドローンの運航に導入し、より高い安全性を確保したオペレーション体制の検証を実施。
同実証を通じて、高い安全性を確保した上での稀用医薬品のドローン配送の検証が完了し、都心部でのドローンによる医薬品配送ビジネスモデルの実現性が高まったとしている。
今後6社は、同実証で得られた検証結果をもとに、都心部でのサービス実装に向けて法制度に適合した機材の検討など、ドローンによる医薬品配送ビジネスモデルの社会実装を目指すとのことだ。
■同実証について
概要
檜原診療所(東京都西多摩郡檜原村三都郷2717番地)と特別養護老人ホーム桧原サナホーム(東京都西多摩郡檜原村3791番地4)を結ぶ、第三者上空を含む飛行ルートを物流用ドローンが自動操縦で稀用医薬品の保存に使われるアンプルを配送し、オペレーションの検証を実施。
詳細
ドローンの運航はレベル3.5飛行とレベル4飛行を実施。レベル3.5飛行では、多数の医薬品を短時間で効率的に配送するために、1人の操縦者に対して2機のドローンを同時に運航する1対2運航での効率性を検証。
レベル4飛行では、都心部でのサービス実証を見据え、操縦者をはじめとする運航に携わる者に対しCRM訓練を導入し、より高い安全性を確保したオペレーションの検証を実施。各運航は、東京都千代田区のKDDIスマートドローンのオフィス内に設置した運航管理室より、遠隔での運航を実施。
実施日時:
(1)10月21日~25日/レベル3.5飛行(1対2運航)
(2)11月5日~7日/レベル4飛行
飛行ルート:
檜原診療所~桧原サナホーム(約2.4km)
使用機体:
【レベル3.5運航】ACSL社製AirTruck
全長(展開時)1.7×1.5メートル
高さ0.44メートル
最高飛行速度10メートル/毎秒
最大航続時間(最大離陸重量時)35分
最大ペイロード5.0キログラム
最大離陸重量(ペイロード含む)24.9キログラム
【レベル4運航】ACSL社製PF2-CAT3
全長(展開時)1.2×1.1メートル
高さ0.60メートル
最高飛行速度 水平10メートル/毎秒
最大航続時間(最大離陸重量時)17.5分
最大ペイロード1.0キログラム
最大離陸重量(ペイロード含む)9.8キログラム
検証項目:
・CRM訓練を導入したオペレーション体制の構築と課題抽出
・1対2運航での医薬品配送における課題抽出
・遠隔オペレーション体制時の課題抽出
検証結果:
構築した手順および体制が問題なく運用でき、安全性の向上および効率的な配送の検証を確認
各社の役割
KDDI:
プロジェクト全体取りまとめ
KDDIスマートドローン:
・スマートドローンプラットフォームの提供
・レベル4飛行における機体運航業務
JAL:
・ドローン物流ビジネスの策定・評価検証
・CRM教育訓練の提供
・ドローン運航におけるリスクシナリオの特定・評価・対策
JR東日本:
都民に向けた社会受容性向上の推進
ウェザーニューズ:
安全運航のための気象データ提供および助言
メディセオ:
ドローンを利用した医薬品配送手順の策定および検証
■ビジネスモデルの検証について
ビジネスモデル概要
医薬品の管理について、通常は各病院にて備蓄されて使用されており、特に使用頻度が少ない稀用医薬品については、使用期限による廃棄ロスが多いという課題があるという。
これを医薬品卸会社の倉庫などにて一元管理することにより、稀用医薬品の在庫数を削減し、廃棄ロス減少を実現して収益性を高めるとしている。また、緊急を要する医薬品配送において、ドローンを活用することにより病院への効率的な供給サービスを構築。
検証内容
効率的な受注から納品まで一気通貫の配送フローの検証。
検証結果
医薬品配送の発注から荷物の受領までのドローンによる配送業務フローのプロセス構築を行い、ロールプレイの実施により精微化し、実装に向けた体制構築。
(※)安全運航のため、利用可能なすべてのリソースを有効かつ効果的に活用し、チームメンバーの力を結集してチームの業務遂行能力を向上させるという考え方