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帝国データバンクは、短時間・単発で働く「スポットワーク(スキマバイト)」に関する企業アンケートを実施し、その結果を公表した。
スポットワークは、履歴書や面接が不要で自分の都合に合わせて働ける働き手側の利点と、必要なタイミングで人材を確保できる企業側の利点から、注目を集める新しい働き方。スポットワーク仲介サービスを展開する企業も増加しており、市場は急拡大している。
■企業の4割が活用に意欲も、リスク管理が課題に
アンケートによれば、スポットワークを「既に活用している」企業は8.3%、「活用を検討している」企業は5.3%、「検討はしていないが興味はある」企業は24.5%で、合計すると約4割(38.1%)が「活用に前向き」であることが分かった。一方で、「興味はない」と回答した企業は49.8%に上り、活用には賛否が分かれる結果となった。
活用に前向きな企業からは、「最低賃金の上昇に加え、新規人材の確保も容易ではないため、活用を検討している」(繊維・繊維製品・服飾品小売)や「働き手の空き時間を利用できるので、社会全体の生産性が上がり、良いと考える」(専門サービス)といった声が聞かれたという。
一方で、活用を躊躇する理由としては、「スポットワーカーの活用は人手が足りない隙間の時間を埋められるメリットがあるが、さまざまな人間が入れ替わることで内部的な情報漏洩も考えられ、検討段階にとどまっている」(旅館・ホテル)や「人手不足の解消には有効だと思うが、労働者の質が分からないため、望んだ成果を得られないなどの懸念点がある」(不動産)などが挙げられたとのことだ。
■小売や運輸・倉庫業で活用に前向きな傾向
スポットワークの活用に前向きな割合は業界によって異なる。小売業(50.6%)や運輸・倉庫業(46.8%)は全体平均を上回っており、特に「専門商品小売」(55.2%)では突出して高い割合となった。一方で、情報サービス業(23.7%)や建設業(30.3%)は比較的低い割合にとどまった。これらの業界では、「専門性の高い業務が多く、依頼できる作業が限定される」との声が多かったという。
■企業からの声
「スポットワーカーの活用に前向き」
・季節要因への対応として一時的にスポットワーカーを雇っている(運輸・倉庫)
・スポットワーカーを活用しており、今後も今以上に活用していきたい(広告関連)
・人手不足が解消されると考える(紙類・文具・書籍卸売)
・設計開発業務がメインであり、負荷状況に応じて外部の方にスポットで協力をしてもらっている(専門サービス)
・非常に興味があるが、なかなか必要としている人材に巡り会えない(家具類小売)
・スポットワーカーの活用は時間帯で人員不足が起こる業種では非常に助かると考えるが、長期的にみると正社員数や正社員採用数の減少につながり、悪影響が出てくる恐れがある(医療・福祉・保健衛生)
「スポットワーカーの活用に興味がない」
・単純労働でもやり方の説明や習熟にある程度の時間がかかるため、スポットワーカーを入れても労働力としてマイナスになる気がする(建設)
・アルバイトでも法定研修が必須な職種のため、スポットワーカーの活用は難しい(メンテナンス・警備・検査)
・製造現場・バックオフィスともに熟練が必要なため、スポットワークには向いていないと考える(その他の卸売)
・景気の上下によって人手が欲しい状況もあるが、働き手がどんな人物か分からないうえ、仕事内容的にも利用するには環境が整っていない(農・林・水産)
・技術職を求めているため、スポット的な仕事は定年した人を再雇用し、対応してもらっている(繊維・繊維製品・服飾品製造)
・スポットワークで気軽に働く環境が当たり前になると、良い仕事をする環境作りが疎かになる(飲食料品小売)
・技術や知識、経験が不要で単発でできる仕事は、スポットワーカーの活用で補うのではなく、IT化・機械化を進めるべきだと考える(専門サービス)
・一定期間の経験・教育を有する職種・業種では、効率の悪さや安全性の問題が生じてしまう(出版・印刷)
・スポットワークのプラットフォームは闇バイトの広がりを助長してしまう可能性があると聞く。しっかりチェックして掲載させないような仕組み作りが求められる(その他サービス)
【調査概要】
有効回答数:1,685社
調査期間:2024年11月8日~12日
調査機関:帝国データバンク
調査方法:インターネット調査
<参考>
帝国データバンク『スポットワーク(スキマバイト)に関する企業の意識アンケート』