グローバルで活躍する日本人は一体どれほどいるのだろうか。

総務省によると、日本の約7割の企業が海外事業に必要な人材が足りていないという調査結果が出されている。海外事業に必要な人材は依然として足りていない状況があるのだ。

この状況は日本企業、強いては日本経済にとって大きな課題を感じる一方で、グローバルでの活躍を目指す人にとってとても有利な状況にある。以前AMPでは「英語と女性のキャリア」がテーマの記事を取り上げた。そこでも、“英語を使える人材にはブルーオーシャンがある”と述べられている。グローバルで活躍できる人は、大きな可能性が秘められているのだ。

しかし、グローバルで活躍するためにはどのような努力が求められるのだろうか。
おそらく多くの人は「グローバルで活躍できる人=英語が話せる人」というイメージが先行しているのではないだろうか。

今回はそんな「グローバルで活躍する人に求められていることは何か」について、ライフイズテック株式会社のグローバル事業部で同社商材のアメリカ進出を目指す傍、イスラエル女子部の代表を務め、すでにグローバルで活躍されている三木アリッサ氏に話を伺っていく。

三木アリッサ
Forbes JAPAN「地球で耀く女性 100 人」最年少で選抜。1992 年生まれ。早大在籍中に、プリザーブドフラワー専門ブランド立ち上げに参画。楽天 No.1に育てる。卒業後外資系メーカーにてその企業初・学卒女性マーケターとして採用。その後ベンチャー数社を経て、前職でのイスラエル専門商社で新規事業開 発マネージャーとしてHealthTech、EdTech、コネクテッドカー製品を担当。また、イスラエル女子部立ち上げ、延べ1000名に「イスラエル × 教育・起業」などテーマに講演。Newspicks「テクノロジーの未来」おすすめピッカー。FNNプライムニュースなどでも執筆。現在のイスラエルで培ったグローバル戦略を元に、ライフイズテック(株)にて米国進出に立ち上げメンバーに。

人生のテーマを叶えるため、グローバルで活躍する道を選んだ

ーー 現在、三木さんはどのように海外で活動をされているのでしょうか?

三木:私は、ライフイズテック株式会社のグローバル事業部に所属し、「テクノロジア魔法学校」のアメリカ進出を目指しています。今年に入ってすでに3回アメリカに行っていて、1月にラスベガスの「CES」、2月にニューヨークの「トイフェア」、3月にテキサスの「サウス・バイ・サウスウエスト」という展示会に出展させていただきました。今後はLAに生活拠点を移して活動をしていきます。

ーー 27歳という若さで日本からアメリカへ拠点を移すってなかなかできない経験ですよね。なぜ、三木さんは海外で活動をしようと思い立ったのでしょうか?

三木:私自身が人生テーマとして掲げている「職人の“活躍社会”創りを通じて、温かい日本を作る」を実現したいからです。

これからの日本社会はAIと対等に生きていく可能性があるため、AIでは補填しきれないクリエイティブな仕事ができるアーティストや職人が活躍が必要ですよね。さらに、日本は少子高齢化で、国内経済圏だけでは立ち行かず、どうやってもシュリンクしていく未来がすぐそこまできています。

その点、日本は世界的に見て独自の「美」の感覚をもっていて、素晴らしい職人やアーティストがいる。職人やアーティストのことを海外の人たちに知ってもらえれば、もっと彼らの活動の幅が広がり、海外からお金を稼げるようになるはず。お金が稼げるようになれば、若手が憧れをもって「職人やアーティストになりたい!」とフォローするはず。

そうなることで、日本経済が活性化して日本が少しでもハッピーになるんじゃないかって活動してます。

ーー とても大きな目標を背負って現在活動しているんですね。

三木:いや、でも日本経済が元気にならない限り、私たち若い世代に活躍のチャンスは回ってこないんですよ!だって、今の日本は先行き不透明感から上の世代はチャンスを離さない。上の世代が満足しないと若い世代にはどうやっても挑戦の幅は狭まる。若者として悔しくないですか?

日本のみんなが一丸となってオールジャパンで戦わない限り、もう日本は元気にならないですよ。
人にはそれぞれ得意なフィールドがあって、私はグローバルと表に立つことが得意なフィールドだから、そのために活動している戦ってる、ただそれだけなんです。

一筋縄ではいかない、グローバルキャリアの苦悩

ーー グローバルで活動していく中で、大変なことや難しいと感じていることはありますか?

三木:大きく2つありますね…。
まず一つ目は、日本人がグローバルの定義を固執しすぎていること。
日本は「グローバル」というとアメリカや中国の真似をしようとしてます。私はこれがそもそも間違っていると思っていて…。アメリカも中国も人が沢山いて土地も沢山あって、自然と人が集まれる仕組みができている。

しかし、日本は島国で、少子高齢化で人もどんどん減っている。その日本がアメリカや中国の真似をして効果が出るのか?前提条件が違うので成功するとは思えないんですよね。そうではなく土地も人も少ないけど、世界からお金を集めている国を真似した方が良いのではと思っています。

例えば、イスラエルはまさに土地も人も少ない国です。四国くらいの土地しかなく、人口も900万人ほど。日本はイスラエルの18倍の土地と14倍の人がいますが、イスラエルは日本の2.3倍スタートアップが資金調達を行なっています。アメリカや中国からバイアウトや投資を受け、イスラエルにお金がどんどん入っています。

USB、Googleのサジェスト機能、Facebookの顔写真のアップロード機能、これら全てがイスラエル発なんですよ。この話を聞いて、イスラエルに興味持ちません?

ーー 興味持ちますね。その事実を全然知りませんでした…。

三木:そうなんです。スポットが当たるのはいつもアメリカや中国だから、アメリカや中国だけをグローバルとして捉えてしまう人が多い。どの国にも、経済を回すためのグローバル戦略があるのに…。

グローバルの定義を狭めてしまっているが故に、私はグローバルの定義からまず説明しなければならなくて、それは大変だと感じますね。

二つ目に、世界で活躍している日本人に誰に相談していいのか、わからない。

様々な国で活躍している日本人はいて、アメリカにも約40数万人の日本人が活躍してます。それなのに、グローバルキャリアの悩みを相談したくても誰に相談したらいいのかぱっとでは分からないんですよ…。相談できる場が不足していると、海外に興味を持っている人や海外で働く夢を持つ人たちをサポートしてあげられない、次世代に繋ぐことができないんです。

ーー 確かに海外で活躍してる人で表に出てくる人たちは少ない気がします。

三木:表に出ることはリスクを伴いますが、同時にグローバルキャリアを歩みたいという夢を持つ人の夢を叶えてあげることができます。

だから、私は表に立って発信することを選んでいます。夢を持つ日本の次世代の人たちのため、すでにグローバルで活躍している人が安心して表に出てこれるような環境を作るために。私が表に立つようになってから、グローバルで活躍している人の話が入ってくるようになって、その話を聞くとみんな苦労してるんですよね。それを聞くたびに「もっと言えよー!」「それが次の世代の幸せに繋がるんだよー!」って思ってます(笑)

グローバルキャリアでの大変だった話や成功した話を発信することで、これからグローバルキャリアを目指す人たちの役に立つんですから! だから、私は発信できる場を作って、発信できる人を徐々に増やしていって、次なるグローバルキャリを目指す人を増やす。それが日本経済が元気になることだと信じています。

英語が話せるだけでグローバルキャリアは通用しない

ーー 発信といえば、つい先日三木さんのTwitterでバズっていたこのツイートに関して、詳しくお話お伺いしたいなと!この呟きの真意について教えてください。

三木:私自身、帰国子女なので一般的な日本人のアベレージよりは英語は喋れます。でも、今の仕事や活動をするまでには、めちゃめちゃ努力してます。

英語がつかえることで「自分の意見を伝えて」「相手の意見を聞く」ことはできます。でも、ビジネスってそれで終わりじゃないですよね。自分の意見と相手の意見を踏まえて、その意見を最終的な形に落とし込むところまでできないといけません。そのためにはそもそも「相手から信頼される」ことが何より大切ですよね。だからアメリカ人が好むトークやメイク・服装、仕草など理解していないと、円滑なコミュニケーションは取れません。

日本人とコミュニケーション取るのだって同じでしょ? 安心してコミュニケーションを取れる状態を作ることが大事ですよね?

ーー 言われてみればそうですね…。相手の立場や性格に合わせてコミュニケーションを取ります。

三木:もちろん英語を勉強することはとってもいいことです。英語教育が大事だという今の風潮は素敵だと思うし、ぜひ英語教育は進めてほしい。でも、グローバルで活躍したい人は「英語が話せる」ことがゴールではない。それで終わりだと思わないでほしい。

実際に色んな方から「帰国子女はいいよな」と言われたので、あの呟きをしたわけです(笑)

グローバルで活躍する人の3つの共通点

ーー 三木さんから見てグローバルで活躍できる人の共通点は何でしょうか?

三木:3つありますね。まず一つ目に、日本が大好きであること。
アメリカにはアメリカの文化があるように、日本には日本の文化があります。2,000年以上の古い歴史があって、独特の美意識がある。普通のアメリカ人と差別化できると思います。これは世界に通用できる強い武器です。だから日本の文化に誇りをまずもってほしいですね。

二つ目に、自分の夢に対しての否定に「うるせぇ!」と跳ね除けられること。
「うるせぇ!」と言うことで、グローバルで活躍している人たちが「おいで」と手を差し伸べてくれます。絶対現れる。私もやりたいことに突き進んでいく中で沢山否定されました。でも、そこで抗いながら突き進んだことで手を差し伸べてくれる人がいて、今の自分がいます。

どうか否定されても自分のやりたいことは突き進んでください。そしたら、「こいつ面白い」って引っ張ってくれる人が絶対にいます。

最後の三つ目に言いたいのは、自分を信じて努力をし続けられること。
なりたい自分や掴みたい未来に対して、自分の全てをどれだけフォーカスできるか、努力して近づけるかが大切です。近道なんてありません。素直にやりたいことに突き進める人はやっぱり強いし、グローバルでも活躍できると思います。

ーー グローバルで活躍するには、常に動き続けなきゃいけない覚悟が重要なんですね。

三木:そうなんです。もしかしたら日本で変化を求めず働き続ける方が楽だと思います。ただ、その生き方は将来的にリスクになる可能性もある、ジリッと貧困になっている日本の現実から目を背けることになりますからね。大変だけど、長期的な視点を持つのは大切だと思いますね。

自身を世界へ突き動かすエネルギー源とは

ーー ライフイズテックのアメリカ進出や、ご自身のミッションに向けて、これからさらにグローバルで活躍していくと思います。今後はどのような取り組みをしていこうと考えていますか?

三木:今年からLAを拠点として活動をスタートします。
まずは「テクノロジア魔法学校」をアメリカでしっかり売ることが、目下のミッションです。

本商材は日本中の有名なクリエイターに携わってもらっています。まずはアメリカしっかり本商材を売ることによって、日本のクリエイターを世界に広める一歩になると考えています。世界に広まることにより、次世代のクリエイターを生み出すことに繋がって、結果日本を元気にできると考えているため、私の人生のミッションにも繋がります。

しっかり売り出すために、アメリカの理解、市場の理解、ペルソナの理解、ビジネスアライアンスの理解、様々な理解を深めていかないといけません。今は知識不足が本当に悔しいし、会社からチャンスを与えてもらっているから焦りもある。それと同時にみんなが応援してくれるから、自分のやるべきことに向けて試行錯誤しながら取り組んでいきます。

また、個人の活動としてアメリカに拠点を置く“起業したい日本人のコミュニティ”を作ろうと考えています。

ーー それは、どのようなコミュニティなのでしょうか?

三木:日本人が海外からどう外貨を稼ぎ日本経済を活発化させるか、これを一緒に考えて戦ってくれる人を増やすためのコミュニティです。

私のようにグローバルで活動している人が、失敗談や成功体験を共有し合える場があることで、今活躍している人たちや次世代で活躍を目指す人たちを成功に導いてあげられると考えています。実際アメリカに住んでいる中国人や韓国人のコミュニティはここがすごいです。私は彼らみたいなコミュニティを作りたい。

まずはLAでそういった拠点を作り、そこからアメリカ、最終的には世界中にスプレッドアウトしたら素敵だと思ってます。

ーー その活動をしていく中で、三木さん自身に返ってくるものって何ですか?

三木:日本経済が活性化しない限り、自分のコアとなっている「職人の“活躍社会”を創りを通じて、温かい日本を作る」というテーマの実現は難しいんですよね。ただ、そのためだけに私は活動をしていて。

遠回りに見えるかもしれないけど、私が活動することで一人でも多くの人が元気になれば、それが私自身のエネルギーになるんです。自分一人が元気なのは一過性のものでしかなくて、元気を長続きさせるためにはやっぱり大切な人たちが元気じゃないといけない。

大切な人が幸せであることは、その大切な人の大切な人が幸せである必要があるし、ということは日本全体が幸せじゃなきゃダメじゃん!って思うんですよね。

ただ、まだ「地球全体が幸せになる」という発想に至ってないので、この発想に到達するにはちゃんとグローバルで活躍しないとダメだなと。そのためにも、何としてでも世界で活躍したいし、日本のみんなを幸せしたいと思ってます。私の挑戦は永遠に終わらなそうなのでワクワクします!(笑)

取材・文/阿部裕華
写真/西村克也