みずほリサーチ&テクノロジーズは、全国の地域金融機関(地方銀行/第二地方銀行/信用金庫)と従業員を対象に、LGBTQ+に関する取組状況と意識や風土を可視化するアンケート調査を実施し、その結果を公表した。
地域金融機関で就業環境整備や意識・風土の醸成を行うには何が必要なのか検討するため、実態を把握するための以下2種類のアンケート調査を実施。
①地域金融機関におけるSOGI(性的指向・性自認)に関する体制/制度の現状に関するアンケート調査(調査対象:地域金融機関 ※すべての地方銀行62・第二地方銀行37・信用金庫254、計353/有効回答数72(有効回収率20.4%)※72金融機関の内訳は、地方銀行:9.7%、第二地方銀行:4.2%、信用金庫:86.1%)
②地域金融機関におけるSOGI(性的指向・性自認)に関する風土/意識の現状に関するアンケート調査(調査対象:地域金融機関で働く従業員個人/有効回答数2,472)
なお、同調査は、過去の調査等を参照しながら、平森大規氏(法政大学グローバル教養学部助教)、松中権氏(認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表)、村木真紀氏(認定NPO法人虹色ダイバーシティ理事長)をはじめとする有識者の助言を得て調査設計を行ったとのことだ。
■結果サマリー
【アンケート調査1(地域金融機関向け)より】
「LGBT理解増進法」については6割弱、「パワハラ防止法(※5)」については8割以上の地域金融機関が、「対応している」もしくは「対応を検討している」と回答。一方で、地方自治体の施策(同性パートナーシップ制度等)については6割程度が「わからない」と回答した。
住宅ローン等の金融商品において、規定の「配偶者」の定義に同性パートナーを含めるなど、性的マイノリティの人の存在を前提にした商品設計を行っているかどうかについては、3割程度が「対応している」もしくは「行っていないが、検討している(既に話し合いや情報収集を始めている)」「行っていないが、検討する予定がある」と回答。
地域金融機関内で性的マイノリティに関する取組を行っているのは、回答者72行のうち7行のみであったという。取り組むうえでの課題として、「当事者のニーズや社会動向等の情報不足」「参考にしたい他行の状況がわからない」「何から始めてよいかわからない」などが挙げられたとのことだ。
地域金融機関は、性的マイノリティに関する取組において、特に業界団体からの支援を求める割合が高いことが明らかに。
とりわけ、「地域金融機関における性的マイノリティに関する取組に対する情報提供(事例の紹介等)」や「地域金融機関でそのまま適用できる性的マイノリティの存在を前提とした就業規則やお客様対応マニュアルの整備」「地域金融機関における性的マイノリティに関するルールの明確化(ガイドライン等)」「地域金融機関が相互に性的マイノリティに関する取組について情報交換を行えるネットワーク形成」については、7~8割程度が業界団体に対して「支援・取組を期待する」と回答した。
以上のように、取組は十分とはいえないが、「地域金融機関として、性的マイノリティに関する社会環境の課題解決に貢献したい」に対して「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答する金融機関は9割程度と、意識と取組状況に乖離がみられるとしている。
【アンケート2(地域金融機関で働く従業員個人向け)より】
「いまの職場に性的マイノリティは“いないと思う”」と回答した人の割合は7割程度、「身近な人の中に性的マイノリティは“いないと思う”」と回答した人の割合は9割程度とどちらも高く、家族や友人、職場等、あらゆる場所や関係性において、性的マイノリティの当事者の存在が「身近ではない」「いない」と思って過ごしている人が多いことがうかがえるという結果に。
「職場の人から性的マイノリティであると伝えられたときに、その事実や内容を第三者に伝える」ことについて、2割弱が「第三者に伝えても問題ない」もしくは「本人から秘密にしてほしいと言われない限り第三者に伝えても問題ない」と回答し、一定のアウティングのリスクが可視化されたという。
「同性愛やトランスジェンダーをネタにした冗談を言う」「性的関係を強要する」「『男らしさ』や『女らしさ』を要求する」などのハラスメントは、異性愛者・シスジェンダーを参照よりも、性的マイノリティ当事者のほうが多く受けていることがうかがえたとのことだ。
現在地域金融機関で働く性的マイノリティの転職経験者のうち4割は、「性的マイノリティであることで職場で嫌な思いをした」ことが転職の理由だと回答。
7割以上が「地域金融機関は性的マイノリティの人の存在を前提とした対応を行うべき」と回答するなど、「性的マイノリティを取り巻く社会課題を解決する一助になりたい」という従業員の「意識」も垣間見えたとしている。
今後、私たちは本アンケート調査結果と個別金融機関や業界団体へのヒアリング結果、有識者との議論をもとに、レポートの発信や地域金融機関向けの研修資料案の作成などを行い、本テーマに係る取組の必要性を提言してまいります。
【アンケート調査の概要】
a. 地域金融機関におけるSOGI(性的指向・性自認)に関する体制/制度の現状に関するアンケート調査
調査対象:地域金融機関(すべての地方銀行(62)・第二地方銀行(37)・信用金庫(254)計353)
※回答者は経営企画関連部門や人事関連部門
調査方法:郵送による配布・回収
調査期間:2023年10月17日~2024年1月19日
有効回答数:72(有効回収率20.4%)
※72金融機関の内訳は、「地方銀行」9.7%、「第二地方銀行」4.2%、「信用金庫」86.1%
調査項目:
・回答した金融機関の基本属性
・人材の「採用」に関する現状
・法制度や地方自治体施策への認知と対応
・金融商品設計(住宅ローン等)における対応状況
・地域金融機関内の施策について
・個人客や取引先企業への対応について
・行政や業界団体に期待すること
・性的マイノリティの人を取り巻く社会環境に対する意識
b. 地域金融機関におけるSOGI(性的指向・性自認)に関する風土/意識の現状に関するアンケート調査
調査対象:地域金融機関(地方銀行・第二地方銀行・信用金庫を対象とした)で働く従業員(雇用形態は問わない)
調査方法:インターネット調査会社が保有するパネルを活用したアンケート調査
※完全匿名で実施
調査期間:2023年10月16日~10月27日
有効回答数:2,472
調査項目:
・回答者の基本属性
・回答者のSOGI(性的指向・性自認)に係る認識
・地域金融機関で性的マイノリティの人が置かれる状況
・地域金融機関における性的マイノリティに関する取組や風土
・性的マイノリティの人を取り巻く社会環境に対する意識
<参考>
みずほリサーチ&テクノロジーズ『LGBTQ+に関する地域金融機関の取組状況と従業員の意識を可視化するアンケート調査』