ベネッセ教育総合研究所は2019年3月28日、東京大学社会科学研究所と共同で、同じ高校生を3年間追跡した調査(※)の結果を発表した。

調査によると、成績が上昇した高校生は、内発的な学習意欲や将来の目標を持っている(持つようになった)ことに加え、自分の学習を客観的にとらえる「メタ認知」(「メタ認知的方略」)を持っている(持つようになった)ことが明らかになったとしている。

この傾向は、特に難関大学合格者において顕著であり、「メタ認知」の有無が、成績上昇や大学合格など、高い学習成果を上げることに効果的であることが示唆される結果となった。

自分の学習を客観的にとらえながら学習する「メタ認知」が効果的

勉強方法(学習方略)については、高2から高3の成績変化が「ずっと上位」や「上昇」の子どもは、「テストで間違えた問題をやり直す」「何が分かっていないか確かめながら勉強する」などの勉強方法(メタ認知的方略)を活用している比率(「ずっとする」)が高くなっている(「ずっと上位」の子どもは「低下」の子どもに比べて、「上昇」の子どもは「ずっと下位」の子どもに比べて高い、以下同様)。

また、成績が「上昇」した子どもは、これらの勉強方法を活用するようになった(「しない→する」に変化)の比率が高くなっている。

これらの結果から、上位の成績の維持や成績の上昇には、自分の学習を定期的に確かめたり、見直したりなど、自分の学習を客観的にとらえながら学習すること(「メタ認知」)が効果的だと考えられるとしている。

ただし、成績が低下した子どもや、ずっと下位の子どものなかにも、これらの勉強方法を活用している子どもがおり、活用の仕方も重要だと考えられるという。

学習動機は「新しいことを知るのがうれしいから」

また、勉強する理由(学習意欲・学習動機づけ)について、成績が「ずっと上位」や「上昇」の子どもは、「新しいことを知るのがうれしいから」勉強している比率が高く(「ずっとあてはまる」:「ずっと上位」57.0%、「上昇」42.6%)、特に、「上昇」の子どもは、そのように変化した比率が高くなっています(「あてはまらない→あてはまる」に変化17.8%)。

一方、成績が「低下」した子どもは、「先生や親にしかられたくないから」勉強する比率が高いことがわかる(「ずっとあてはまる」+「あてはまらない→あてはまる」に変化49.0%)。

これらの結果より、成績の維持や上昇には、学習に好奇心や関心を持って(内発的な学習意欲)学習することが効果的だと考えられるとしている。

将来の目標の有無については、成績が「上昇」の子どもは、「自分の希望する大学に進みたいから」勉強している比率が高くなっている(「ずっとあてはまる」+「あてはまらない→あてはまる」に変化86.2%)。

また、成績が「ずっと上位」や「上昇」の子どもは、将来の目標が「ずっと不明確」の比率が低く、「将来の目標がはっきりしている」比率が高くなっている(「ずっと明確」+「不明確→明確」に変化:「ずっと上位」59.2%、「上昇」53.8%)。

これらの結果から、同社では成績の維持や上昇には、将来への志向や目標を持って学習することが効果的だと分析している。

偏差値65以上の大学に進学する子どもは「メタ認知的方略」を継続的に活用

最後に、4月から大学(四年制大学・短期大学)に進学する子どもについて、進学予定の大学の偏差値別にこれまでの勉強方法を見ると、偏差値65以上の大学に進学する子どもは、「何が分かっていないか確かめながら勉強する」という勉強方法(メタ認知的方略)を継続的に活用している比率が高く(「ずっとする」88.1%)、「テストで間違えた問題をやり直す」という勉強方法を活用している比率も高いことがわかった「ずっとする」+「しない→する」に変化80.6%)。

※本調査は2019年3月度時点のもの。
ベネッセ教育総合研究所が東京大学社会科学研究所と共同で2015年度から実施している同じ親子を12年間追跡する「親子パネル調査」のうち、2018年3月に高校を卒業した子ども703人の高校3年間の追跡データを用いて、子ども1人ひとりの変化をみたものである。

<参照元>
同じ高校生を3年間追跡「メタ認知」が成績上昇に効果-自分の学習を客観視することが大切-