東京地下鉄(以下、東京メトロ)、公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)、日立製作所(以下、日立)、三菱電機、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、2024年8月から、地下のトンネル内や地上の線路内等に設置された地上設備と列車間での5G通信を実現するための実証試験を開始すると発表した。5Gを活用した列車運行システムの実証試験は国内で初の取り組みとなる。
同実証試験では、パブリック5Gとローカル5G(※1)の両環境を用い、FRMCS(※2)を参照した鉄道用通信基盤のプロトタイプを東京メトロのフィールド内に構築し、電波環境の測定等を行うという。
また、構築した鉄道用通信基盤のプロトタイプを用いて、列車運行システムであるCBTC(※3)システムや各種鉄道システムを想定した5G通信の実用性に関する試験を実施するとのことだ。
同実証試験では、以下の4つの狙いがあるという。
1.専用設備を必要としないパブリック5Gと専用設備を必要とするローカル5Gの両環境を検証し、5G通信の活用による設備投資の低減やメンテナンス等に係る鉄道運営の効率化を図る。
2.最新技術による効率化・省力化と、安全性・安定性の維持・向上の両立を実現するための通信基盤として、重要な鉄道システムへの活用を客観的に評価し、適用範囲を見える化する。
3.5Gを活用した鉄道用通信基盤の先行事例として、欧州諸国を中心にFRMCSプラットフォームの仕様について検討されているという。今回は同プラットフォームとの将来的な互換性も考慮したプロトタイプシステムによる実証試験を行うことで、欧州とは背景や要求が異なる国内の鉄道事業において共通利用できる鉄道用通信基盤の仕様や国際標準化への対応を目指す。
4.同実証実験で試作した鉄道用通信基盤の仕様案を公開し、標準化を目指す。
※1 自治体や企業が主体となり、限られたエリアで柔軟に5G網を構築できる無線通信システム。
※2 Future Railway Mobile Communication Systemの略語。欧州を中心に規格の検討がされている次世代の鉄道向け無線通信基盤。様々な通信手段を集約し、通信状況に応じた柔軟な切り替え制御を実現するシステム。
※3 Communication Based Train Controlの略語。列車の安全・安定運行を制御するために地上と列車間で無線通信技術を利用する列車運行システムの一つ。