帝国データバンク(以下、TDB)は、2023年1~12月に発生した企業の休廃業・解散動向について調査・分析を行い、結果を公表した。
■2023年の休廃業・解散は5万9105件、前年比10%増。「あきらめ廃業」広がりの兆し
2023年に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む、以下「休廃業」)は5万9105件となった。これは年間で4.03%の企業が市場から退出・消滅した計算になる。
23年初旬まで減少傾向が続いた休廃業は夏以降に急増し、16年以降で最少だった22年(5万3426件)からは10.6%の急増となったほか、4年ぶりに前年を上回っている。
休廃業した企業の雇用(正社員)は少なくとも累計7万8053人に及び、前年(8万2053人)から4000人減少。全ての雇用機会が消失したものではないが、約8万人が転退職を迫られた計算となり、消失した売上高は合計2兆8424億円に上った。
2023年に休廃業した企業のうち、「資産超過型休廃業」は62.3%を占めたほか、休廃業する直前期の決算で当期純損益が「黒字」だった割合は51.9%となり、半数超が黒字休廃業だったものの、その割合は過去最低を更新。
この結果、「資産超過」かつ「黒字」状態での休廃業が判明した企業の割合は全体の16.1%となり、16年以降で最も高かったコロナ禍直後の20年(17.0%)に次いで過去5年間で2番目に高い水準に。
総じて23年の休廃業動向は、特に直近の損益が大幅に悪化した企業が多い点が特徴となっている。
2023年の休廃業動向は、前年から3割超の急増が見込まれる企業倒産(法的整理)とともに増加。
休廃業はこれまで、持続化給付金や雇用調整助成金など「給付」による手厚い資金繰り支援が功を奏し、コロナ禍の厳しい経営環境下でも抑制された水準で推移していたという。
しかし、2023年に入りこれらの支援策は徐々に縮小されたことに加え、電気代などエネルギー価格をはじめとした物価高、人手不足問題やそれに伴う人件費負担の増加など四重・五重の経営問題が押し寄せた。
収益面・財務面で傷ついた中小企業では先送りしてきた「事業継続か否か」の決断を迫られ、さらなる経営悪化に陥る前に、やむなく会社を畳んだ「あきらめ廃業」を余儀なくされた中小企業が多く発生した可能性があると同社は考察している。
■業種別:全業種で増加。パチンコホールは廃業率6%超え、士業の廃業も目立つ
業種別では全業種で前年から増加。最も件数が多い「建設業」(7628件)は、前年から10%増加し、過去5年で最多となっている。
前年からの増加率が最も高いのは「卸売業」の3527件(12.2%増)で、「小売業」(3807件)の11.3%増など5業種で前年比1割超の大幅増加となった。
業種を詳細にみると、前年比で最も増加したのは「税理士事務所」(30件→81件、170.0%増)。従前から税理士の高齢化が課題となっていた中で、競争激化による顧問企業の減少、顧問料の低下など経営環境の悪化、インボイス制度の導入など新たな業務のスタートなども影響したとみられる。
増加率上位の業種のうち、「書店」(33件→53件、60.6%増)は4年ぶりに50件台に到達し、「中古車小売」(110件→166件、50.9%増)は過去5年で最多に。
半導体不足を発端とする新車不足が発生したコロナ禍初期に比べて中古車需要は一服しているほか、23年に入って中古車業界大手で不正が相次いで発覚したことで販売やアフターサービスの整備入庫にも影響が出るなど、中古車業界に対する顧客の目が厳しくなったことも要因と同社はみている。
なお、前年から最も減少したのは「新聞小売」(73件→52件、28.8%減)となった。
なお、2023年の休廃業・解散率では、最も高いのが「パチンコホール」で6.01%となり、前年から急上昇した2022年(4.69%)をさらに上回ったという。
大規模なシステム変更や投資負担を伴う新規則機の導入が重荷となり、廃業を決断した中小ホールも多いと同社は考察。
農作業機器のレンタルや栽培などを手掛ける「穀作サービス」(2.19%→5.36%)のほか、「社労士事務所」(1.28%→5.24%)、「会計事務所」(1.75%→4.97%)など士業事務所でも休廃業・解散率の高さが目立ったとのことだ。
<参考>
帝国データバンク『2023年1~12月に発生した企業の休廃業・解散動向』