博報堂の社内プロジェクト「博報堂キャリジョ研プラス」は、11月19日の「国際男性デー」を機に、女性に限らず男性も含めた性別にもとづく「らしさ」についての意識を明らかにするため、「ジェンダーバイアスに関する生活者意識調査」(以下、同調査)を実施し、その結果を公表した。

■「男らしさ」「女らしさ」と自分がなりたいイメージ・性格は当てはまらない結果に

同調査で、「男らしさ」と「女らしさ」のイメージや性格について聞くと、「男らしさ」は「強い・タフである」が45.5%、「頼りになる」が45.2%、「勇敢である」が40.4%。「女らしさ」は「優しい」が53.1%、「周囲に気遣いができる」が40.3%、「見た目に気をつかう」が39.8%と、両者の傾向に大きな違いが見られた。

「男らしさ」/「女らしさ」のイメージ・性格

一方で、自分がなりたいイメージ・性格を聞いたところ、男性の場合は「経済力がある」が31.8%、「決断力がある」と「優しい」が28.8%という結果に。女性の場合は「体格・スタイルがいい」が37.4%、「経済力がある」が37.1%、「決断力がある」が34.0%と、男女ともに「男らしさ」「女らしさ」の結果とは異なる項目が上位にあがった。

自分がなりたいイメージ・性格

■若年層ほど「男性は男/女性は女らしくあるべき」と思わない傾向

「男らしさ」「女らしさ」に関する考えを男女それぞれに聞いたところ、「個人的に男/女らしくありたい」(グラフ薄色)と思うのは、年代問わず6割前後であることが明らかになった。

一方、「男性は男/女性は女らしくあるべき」(グラフ濃色)と思う割合は若年層になるほど低くなるという結果に。

「男らしさ」「女らしさ」に関する考え

■3割以上が男/女らしくあるべきという考え方によって嫌な思いや体験をしたことがある

男/女らしくあるべきという考え方によって嫌な思いや体験をしたことがあるか聞いたところ、男女全体で30.6%、男性全体で28.8%、女性全体で32.5%の人が「ある」と回答。特に男女全体の20代は37.4%、30代は36.3%と、男女全体の数値より高い結果に。

男/女らしくあるべきという考え方によって嫌な思いや体験をしたことがあるか

■「男らしさ」「女らしさ」に基づく考え方のせいで「日ごろの所作や言葉遣い」について嫌な経験がある人が最多

「男らしさ」「女らしさ」に基づく考え方や規範、役割のせいで嫌な経験をした場面について聞くと、どの場面においても全体的に女性の方が高い結果となった。

女性で特に割合が高いのは、「日ごろの所作や言葉遣い」が59.8%、「家事・育児」が54.7%、「結婚・家庭」が53.8%という結果に。男性の場合は「日ごろの所作や言葉遣い」が50.3%、「仕事」が50.0%、「恋愛・パートナーシップ」が45.9%。

「男らしさ」「女らしさ」に基づく考え方や規範、役割のせいで嫌な経験をした場面

また、嫌な経験の具体的な内容を自由回答で聞いたところ、主に男性では強くいなければならない・経済力を期待される、女性では家事や育児をしなければならない・愛嬌の良さや見た目の管理をしなければならない、などの回答が多く見られた。

●「男らしさ」「女らしさ」に基づく考え方などのせいで嫌な経験をした場面(自由回答)
<男性>
・体力を期待されること(男性40代・会社員)
・好きな色を好きと言えない(男性20代・学生)
・強がっていなければならなかった(男性50代・会社員)
・男は泣いてはいけない、弱音を吐いてはいけないと言われたこと(男性20代・無職)
・経済力を求められること(男性30代・会社員)

<女性>
・女性は愛想良くあるべし、気遣いが出来るべしという世間の風潮があると思うが、そういうのが苦手なのでガッカリされやすい(女性40代・会社員)
・女性だから介護をすべきという理由で仕事を辞めさせられた(女性40代・会社員)
・ムダ毛に関して、男性は毛が生えていても気にならないが、女性はそうはいかないことが不平等だと思う(女性20代・会社員)
・家庭のことは女性がすべきという風調で、やりたいことを我慢しなければならないことが多い(女性60代・パート/アルバイト)
・男女共学の小学校に通学していた頃、勉強もスポーツも成績優秀だったが、地元の人たちからは女のくせに勉強して何になる、と言われていた(女性30代・専門職)

■「男らしさ」「女らしさ」の役割から「降りたいが降りるのは難しいと感じる」人は約4割

「男らしさ」や「女らしさ」に基づく役割への意識について聞くと、役割から「降りたいが実際に降りるのは難しい」と感じる人が39.1%と、葛藤を抱えている人が約4割を占めることが明らかになった。

「男らしさ」や「女らしさ」に基づく役割への意識

さらに、「難しい」と感じる理由について聞いたところ、「社会や世間の考え方があるから」が35.0%、「身の回りの人の期待や制約があるから」が14.3%、「自分の中に根付いた考え方を捨てきれないから」が5.7%という結果に。

「男らしさ」や「女らしさ」に基づく役割から降りたいが、実際に降りるのは難しいと思う理由

■男性は「父親」、女性は「母親」から自分の性別に関わる「らしさ」を見聞きした人がトップ

自分の性別について、「男/女ならこうすべき」という内容を見聞きした人・ものとの接点を聞くと、男性は「父親」が31.9%、女性は「母親」が32.2%とトップとなった。

次いで、「雰囲気などでなんとなく」が男性16.4%・女性17.2%、「同性の友人」が男性17.2%・女性15.5%、「ドラマ・映画・アニメ・漫画・小説など」が男性15.7%・女性13.4%と、様々な経路で見聞きしていることが伺える。

自分の性別について、「男/女ならこうすべき」という内容を見聞きした人・ものとの接点

■自分の子どもに対しては「男だから」「女だから」と言わないようにしている人が約7割

子どもを持つ人に対して、自分の子どもになるべく「男だから」「女だから」などと言わないようにしているか聞いたところ、「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人は67.4%と約7割にのぼり、次の世代に「らしさ」を押し付けない意識が見られる。

自分の子どもになるべく「男だから」「女だから」などと言わないようにしているか

【調査概要】
調査名:ジェンダーバイアスに関する生活者意識調査
実施期間:9月11日~12日
調査方法:インターネットリサーチ
調査地域:全国
調査対象:
スクリーニング調査・同調査ともに15~69歳男女
(同調査では「男性」「女性」「その他」「答えたくない」という選択肢のうち、前二者を回答した人にのみ聴取)
回答数:
<スクリーニング調査>10,000名
<同調査>1,200名(男女5歳刻みでそれぞれ50名、10代は男女とも100名)
調査主体:博報堂キャリジョ研プラス
調査実施機関:ディーアンドエム

<参考>
博報堂キャリジョ研プラス『博報堂キャリジョ研プラス、「ジェンダーバイアスに関する生活者意識調査」を実施』