1週間分のプラスチックごみをごみステーションに捨てるとき、いつもその多さに愕然としてしまう。「今週もこんなにプラスチックに包まれた製品を買ってしまったのか……」と。

これは、環境に配慮している人にとってのジレンマではないだろうか。買いものに出かけて、ひとつもプラスチックを持ち帰らない日は、ほとんどないのだから。

そんななか、日本も含め世界で、買いものによって発生するプラスチックごみをゼロにしようと、食料品を「量り売り」で販売するショップが、近年増加している。瓶やタッパーなどの容器を持参し、パスタや調味料、茶葉など必要な分だけ購入するシステムだ。そして今回ご紹介するのは、そんな「量り売り」を電動自転車で届ける、イギリス・ロンドン発のちょっと変わったサービスだ。

量り売りショップは都市中心部に点在していることが多く、郊外に住む人が普段の買いもの先として選択するのは難しい現状がある。ロンドンも例外ではない。また、量り売りをするためにたくさんの容器を持ち歩くのは、買いものだけを目的とした外出ならば特に不便ではないが、仕事帰りなどに気軽に立ち寄るにはハードルが高いだろう。

この問題点に着目したロンドン在住のルイーザ・ロバートソン・マクロード氏は、2022年3月、電動自転車を利用した量り売りの配達サービス「DAUN」を開始した。ナッツ、穀物、パスタやコーヒーなど、届けてほしい食料品とグラム数を「DAUN」のサイトで選択し注文すれば、1〜3日後に自宅まで直接配達してくれるサービスだ。

電動自転車を利用しているので、手元に届くまでに少々時間はかかるが、配達時の環境負荷が少ないのは確かだ。

さらに、商品も高品質で環境負荷の少ないものを販売しており、全て再利用可能な巾着袋に入って届くという。一度使用した巾着袋は回収し、洗浄して再利用することで、包装紙の廃棄物も出さない仕組みになっている。

サービス開始直後は、ルイーザ氏の地元であるラドブローク・グローブのみで配達を行っていたそうだが、すぐにロンドン中から注文が殺到するようになり、今ではロンドン全域に配達しているほど評判は上々だという。

社会のプラスチック離れを支援する団体「A Plastic Planet」の共同設立者であるシアン・サザーランド氏は、Positive.Newsの取材に対し、今こそ買いもの革命のときだと訴える。

「私たちは、プラスチックの容器に入ったものを買って捨てるのが普通だと思っています。廃棄物は普通ではありません。廃棄物を根絶するシステムに早急に移行する必要があります。問題は、キッチンに何種類のリサイクル容器があるかということではありません。なぜごみ箱があるのかということです」

2021年、日本・京都府でも日本初の量り売りショップ「斗々屋」のオープンが一躍話題となり、その後全国に少しずつ広がりをみせているものの、まだ日常使いできるほどの店舗数や認知度はない。しかし、かつて日本でも、お米やお味噌、豆腐などは量り売りで買うのが当たり前だった。筆者自身も、幼少期に祖母と市場に出かけ、持参した米袋にお米を、タッパーには豆腐を入れてもらった記憶が残っている。なぜこんなにも忘れずに記憶しているのかを考えたとき、それはきっと量り売りの経験以上にお店の人との何気ない日常会話があったからだろう。

人間関係の気薄化が叫ばれる昨今、この量り売りの配達サービスが日本国内にも広がれば、ゼロ・ウェイストを目指せるだけでなく、孤独解消ソリューションとしても期待できるかもしれない。そんなロンドンの“スローで豊か”なサービスに、今後も注目だ。

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【参照サイト】DAUN公式サイト
【参照サイト】The pedal-powered ‘zero waste’ grocer taking on London’s supermarkets

(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:もう容器は持ち歩かない。自転車で届く「量り売りデリバリー」ロンドンで広がる