PwC Japanグループは2019年2月26日、「第22回 世界CEO意識調査」の日本調査結果を発表した。
これは、2019年1月にPwCグローバルが発表した調査から、日本企業のCEO150名の回答に焦点を当て、世界全体や他地域と比較を行い、日本企業が置かれている状況や今後の課題について考察したものだ。
それによると、日本のCEOには、今後12カ月の世界経済および自社の成長に対する自信が低下、警戒感広がる傾向がみられたという。
世界、日本ともに世界経済の今後に対して警戒感が広がる結果に
まず、今後12カ月間で、世界経済の成長が「改善する」と回答した日本のCEOは33%で、昨年の38%より5ポイント下がる結果となった。
一方、「減速する」と回答した日本のCEOは昨年の2%から27%へと大幅に増加したという。
世界全体でも同様の傾向が見られ、「改善する」とした回答は昨年の57%から42%に減少、「減速する」と回答したCEOは昨年の5%から29%まで増えたという。
世界全体、日本ともに「改善する」と回答したCEOの比率が「減速する」を上回っているものの、世界経済の今後に対して警戒感が広がっている結果となったという。
また、今後12カ月間の自社の成長に対し「非常に自信がある」と回答した日本のCEOは、昨年の24%から19%に減少した。世界全体においても、昨年の42%から35%と7ポイント減少し、世界経済の成長見通しと同様に、自社ビジネスの成長についても自信を低下させているという。
自社成長のために重要視する上位3カ国は、中国67%、米国60%、タイ20%と、昨年同様の顔ぶれとなった。しかし、上位2カ国である中国(昨年61%)、米国(同67%)の順位が逆転する結果となった。
世界全体では、米国(今年27%、昨年46%)が1位、中国(今年24%、昨年33%)が2位となったものの、「わからない」という回答が3位(今年15%、昨年8%)になった。
同社では、貿易摩擦や不透明な政策などを背景に、日本をはじめとする世界のCEOは世界経済の成長に対して慎重な見通しを強め、世界における自社の成長戦略についても、保守的な姿勢を強くしているようだとみている。
日本のCEOが計画している成長施策は「本業の成長」や「業務効率の追求」
自社の成長に対する脅威として、日本のCEOは「鍵となる人材の獲得(55%)」、「技術進歩のスピード(51%)」、「貿易摩擦(45%)」を「非常に懸念している」と回答している。人材獲得や技術革新のスピードに対する脅威は、日本の経営者の継続的な悩みだという。今回の調査では、関税引き上げをはじめとした「貿易摩擦」に対しても強い懸念が示されたという。
世界全体では、懸念の対象が、「テロリズム」や「気候変動」といった広範囲で世界的な脅威があげられた前回から大きくシフトし、「過剰な規制」、「政策の不確実性」、「鍵となる人材の確保」、「貿易摩擦」、そして「地政学的不確実性」といったビジネスのやりやすさに対する強い懸念が示された。
アジア地域でも「貿易摩擦」、「鍵となる人材の獲得」、「保護主義」が上位にあがったが、「貿易摩擦」や「保護主義」の影響を回避しようとする動きから恩恵を受ける可能性がある国・地域もあり、これらの脅威の影響はより複雑な様相を呈しているようだとしている。
このようなビジネス環境認識のもと、日本のCEOが計画している成長施策は「本業の成長(85%)」、「業務効率の追求(84%)」が8割を超す回答となり、より堅実な対応を選択しているようだという。
一方、「戦略的提携やJVの立ち上げ(38%)」、「M&A(30%)」といった、国や地域を超えた成長施策は、相対的に低い回答となったが、依然として3割を超える結果となった。
また、世界のCEOの63%、日本のCEOの59%が、「AIが世界に与える影響はインターネットよりも大きい」という考えに同意しているという。
一方、「AIが人の仕事を奪うか」という点については意見が分かれている。世界全体では「同意する」の回答が49%、「同意しない」の回答が51%と拮抗しているなか、中国では「同意する」が88%、日本では「同意しない」が61%と、対照的な結果になった。
また、ビジネスにおけるAIの幅広い活用については、日本をはじめ世界全体として非常に限定的な結果となった(世界全体:9%、米国:5%、日本:4%)。ただし、中国では25%のCEOがAIをビジネス上で幅広く導入・活用していると回答しており、AIのビジネス上での実装は中国が先行しているとPwC Japanはみている。