クックビズが、「飲食店の禁煙化に関する意識調査」をおこなった。

調査期間は、2018年7月27日~8月6日。日本全国の飲食店を対象に調べ、213の有効回答を得ている。なお、立地内訳は、首都圏89、中京圏19、近畿圏41、地方圏64という割合だ。

調査から判明したポイントは3つ。

  • 受動喫煙防止法案に、飲食店関係者の約5割が「賛成」
  • 禁煙化を実施した飲食店、60%で売上に「特に変化はなかった」
  • 禁煙化未実施の飲食店、55%が「将来的に禁煙化を検討」

受動喫煙防止法案に、飲食店関係者の約5割が賛成


Q.国や自治体が提示している受動喫煙防止法案に賛成ですか?(全体)

日本全国の飲食店を対象に実施した、「飲食店の全面禁煙化に関するアンケート」では、飲食関係者213名が回答している。

国や自治体が提示している”受動喫煙防止法案”について、「賛成」するのは全体の49.3%だった。「反対」は全体の25.4%、「どちらとも言えない」は25.4%という結果となっている。


Q.国や自治体が提示している受動喫煙防止法案に賛成ですか?(エリア別)

エリア別の比較では、賛成派の比率には地域差がみられた。東京都、大阪府では、禁煙化の賛成がともに約半数。一方、愛知県では、約30%にとどまっている。

調査を行ったクックビズでは、地域による喫煙文化の差が結果に影響を与えている、とみているようだ。


Q.国や自治体が提示している受動喫煙防止法案に賛成ですか?(現在の喫煙環境別)

また、禁煙化への考え方は、飲食店によって大きく意見がわかれた。

飲食店の喫煙環境別に、比較してみる。

すでに全席禁煙としている飲食店関係者では、62.5%が禁煙化に賛成。それに対し、全面喫煙可の飲食店関係者では、35.4%のみの賛成となっている。

分煙(エリア分け、時間分け)の飲食店関係者においても、賛成は半数に満たないという状況だ。

飲食店関係者が、全面禁煙化に賛成する理由としては、「従業員やタバコを吸わないお客様の健康への配慮」が多く上がっている。また「食べ物をより美味しく召し上がって頂きたい」という意見をみられたという。

具体的なコメントとしては、以下のようなものがあった。

  • 「受動喫煙や、副流煙による健康被害を少しでも防止できたらと思います。お客様だけでなく、スタッフにも影響があることを痛感しています。頻度は多くないものの、副流煙が原因で退職した従業員も過去にいました」(大阪府/カフェ)
  • 「自分も飲食店内(特にランチタイム)での他人の喫煙や置きたばこによる受動喫煙で、食事が不味く感じられた経験があります」(東京都/寿司)
  • 「日本のお酒を丁寧に紹介するという業態の飲食店を経営していた際に、喫煙者と非喫煙者の間で軋轢がありました。それを避けたくて店内禁煙(店外に灰皿を設置)にしたところ喫煙客が来なくなり、閉店に追い込まれました。そもそも最初から法的に禁煙であればお客様同士でモメる事も無い話ですし、飲食店は喫煙所ではないので、全面禁煙にすべきです」(新潟県/居酒屋)

一方、禁煙化に反対する意見としてもっとも多いのは、「売上減少への懸念」。とくにアルコールを提供する飲食店関係者からは、喫煙客の客離れを心配する声が多く上がったようだ。

反対派の声としては、次のようなものがあったという。

  • 「ファミリーレストランなどお子様も多く利用されるような店舗、時間帯では実施しても良いとは思うが、居酒屋や夜のお店等でも一律禁煙にしてしまうと喫煙者の足が遠のきそうだと思う」(群馬県/居酒屋)
  • 「個人的には喫煙していないので(禁煙化には)賛成ですが、会社経営的に考えると、喫煙が出来ない、もしくは店舗周辺に喫煙区域が無いとお客様の来店が減少する可能性は否定できない」(東京都/給食)
  • 「例外や、喫煙所の設置による補助金申請、従業員がいない場合は良いとか、法の抜け穴、グレーな部分が多い。これでは、禁煙化をまともに実施するお店が損をするのでは?店舗規模や従業員の数関係なく全面禁煙したほうが良い」(愛知県/創作ダイニング)

禁煙化を実施した飲食店、60%で売上に「特に変化はなかった」


Q.お店の喫煙環境が変わったこと(喫煙可から禁煙)による売上への影響がありましたか?(有効回答数125)

調査では、実際に禁煙化を実施した飲食店で、売上はどう変化したか調べている。

お店の喫煙環境が変わった(喫煙可から禁煙)飲食店関係者125名のうち60%が、売上に「特に変化はなかった」と回答。「売上増」は12%、「売上減」は28%、という結果になっている。

禁煙化によって「売上増」となった飲食店関係者は、”客席の回転が早くなったこと”や、”店内の空席率が下がったこと”を売上アップの要因にあげている。

具体的には、次のようなコメントがあった。

  • 喫煙者のお客様は減ったかもしれませんが、煙草が吸えないことにより長居する方は少なくなりました。(東京/アジア・エスニック)
  • 元々喫煙者のお客様は少ない店なので、全面禁煙になったことでどの席でもご利用いただけるようになりました。(東京/ホテル・旅館)

一方、禁煙化によって「売上減」となった飲食店関係者からは、”客足の減少”、”客層の変化による客単価の減少”が売上にインパクトを与えたとコメントしている。ただし、なかには売上の減少は一時的なもので、長期的に見ると特段ネガティブな影響がなかったとの意見も寄せられたようだ。

実際のコメントを挙げる。

  • 非喫煙者はあまり飲酒しない傾向が強い。(飲酒しないことで)客単価が下がり、居酒屋業態にはなかなかツラい部分があると思います。(新潟県/居酒屋)
  • 上司が喫煙者だと(全面禁煙店には)入りにくいという声があり、ビジネス客が減った。ランチの時間帯に家族層が多くなったが、客単価が下がった。(大阪府/焼き鳥)
  • 短期的には売上減となったが、中長期的には他社が全席に踏み切らなかったことで使い分けがされて売上は回復した。客層は男性多めから女性多めへと変わった。(東京都/洋食全般)

また、「売上の変化をそこまで感じていない」飲食店関係者も、次のような”禁煙化による変化”を感じているという。

  • 客層の変化(家族層・女性客の増加)
  • 店内飲食環境の改善
  • クリーニングの時間と経費削減(灰殼などのごみ処理、灰皿や壁紙などの掃除が不要)

禁煙化未実施の飲食店、55%が「将来的に禁煙化を検討」


Q. 現在の喫煙環境が全面喫煙可及び分煙のお店にお聞きします。今後、禁煙化にする予定はありますか。(有効回答数120)

現在「全面喫煙可」もしくは「分煙」で運営している飲食店関係者を対象に、”今後禁煙化にする予定”について聞いた。その結果、「禁煙化の予定がある」と回答したのは全体の55%だった。

禁煙化に否定的な飲食店は、禁煙化のハードルの高さについて、以下のような理由を挙げた。

  • 現在の客層の大半が喫煙客で占められている
  • 分煙スペースの確保ができない
  • 小規模な店舗である喫煙文化が根強いエリアである

既存の業態や店舗スペース、所在エリアによって、禁煙化に対するスタンスの違いが出た。

調査を実施したクックビズでは、「東京オリンピックが開催される2020年4月には、全国の飲食店に向け、受動喫煙防止法の全面施行が予定されている。こうした禁煙化への動きは、どの飲食店にとっても、自店の喫煙環境を見直す良いきっかけになるのではないか」とコメントしている。

img:ValuePress