インテグリカルチャーは2018年12月20日、学校法人東京女子医科大学と共同で、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、宇宙探査イノベーションハブ(探査ハブ)が実施する研究提案プログラムに、TansaXチャレンジ研究として採択されたと発表した。
この研究では東京女子医大先端生命科学研究所・所長の清水達也教授がチームリーダーとなり、『光エネルギーおよび省リソース「藻類・動物細胞共培養リサイクルシステム」による持続的な食糧・タンパク質の生産』をテーマとして、宇宙にて閉鎖系での食肉生産を可能とする細胞農業技術に関する共同研究を実施する。
有人宇宙活動での食料確保のための宇宙農業を目指す
現在、各国にて月面基地構想や火星移住構想などの本格的な検討が進められており、近い将来に長期の有人宇宙活動が必要となる可能性が高まっている。
月面や火星などにおける長期の有人宇宙活動をサステナブルに行うためには、現地での食料確保が不可欠であり、少ないリソースで効率的に食料を生産することのできる技術が求められているという。
インテグリカルチャーによると、宇宙での食料生産技術として、各国では、植物工場や藻類培養を中心に検討が進んでいるが、タンパク源の確保や食の満足度という観点で大きな課題を残している。
そこでこの研究では、宇宙における藻類と動物細胞の共培養による細胞培養効率の大幅な向上と、無重力・低重力下での培養系の確立を目指し、より少ないリソースで効率的にタンパク源や各種栄養素を生産し、さらに食の満足度を満たす宇宙農業の実現を目指すという。
研究の成果によって示される共培養を用いた食肉生産技術は、宇宙だけではなく、世界的な人口増加に伴う「タンパク質危機」が危惧されている地球上でも極めて有用となる。
また、この技術は、近く市場規模200兆円を超えるとされる世界の水産・畜産需要を取り込む技術的足掛かりとなることが期待され、将来的には日本の食糧安全保障環境の改善につながることが期待されるとしている。
インテグリカルチャーの培養システム「カルネット™システム」は、細胞の増殖を促す成分を発する細胞と筋肉細胞等を同時に培養することで、低価格培養液の効能を大幅に引き上げ、純肉の効率的な生産を可能とするシステムだ。
現行の使い捨てのバッチ式と異なり、連続フロー式で細胞培養を行うため、並列化や大型化によるスケールアップが可能だという。
img:PR TIMES